煙草を辞めないのはなぜ、と言われることがある。辞めようと思っていない人にとって、この「辞めることが当然」という前提での問いには、首をかしげざるを得ない。ぼくに言わせれば、辞めるのはなぜ?である。
煙草を吸わない人より、吸う人の方が健康を害する危険性があるということは、そりゃそうだろう。でも許せないのは、このパッケージ下に書いてある「○○になる確率が2倍になります」という言い草だ。
煙草に限らず、この相対表現ってやつに、一般人はずいぶんとだまくらかされてるように思う。え?2倍なの?4倍なの?と右往左往させられている。だけどちょっと待てよ、その4倍になった結果、絶対値はいくつになったわけ?
煙草のパッケージを見ると、詳しくは厚生労働省ホームページへ、と書いてある。よし、見てやろうじゃないの、と開いてみると...
驚くなかれ、ここにも絶対値は書いてない。あくまで相対的な数字しか書いてない。4倍になってるっていうのは事実なんでしょう。それは認めるし、危険性が増しているというのも事実なんだろうね。でも10%が40%になるなら多少は考えるけど、0.1%が0.4%になったからといってなんなんでしょう?
書いてないってことは、どう考えても10%が40%に、みたいな深刻な数字ではあり得ないってことだよね。それを書いちゃうと説得力が薄れるくらいのレベルの数字だってことだよね。それを「○○を悪化させる危険性を高めます」っていうおどろおどろしい、あいまいな表現で表すってのは、一種の脅迫であることに違いない。
特にこの手の表現に弱いのは--こういう男女差についてはまたいずれ取り上げたいと思いますが--、男性より女性の方が多い気がする。「○○の×倍、有効成分が配合されてるんですって!」みたいなさ。そもそもその「有効成分」ってどのくらい効くの?それが何倍入ってると、どうだったのがどうなるの?100サンプルのうち何サンプルに実際に効果が表れたの?
新聞記事にはさすがに少ないみたいだけど、広告にはよくあるよね。この手の相対表現。ぼくは相対表現しか書いてないものって、事実であることは認めても、絶対に信用しないことにしている。なにかをごまかしているとしか考えられない。自信があるならちゃんと絶対値で言えっつーの。
健康食品やスキンケア製品には、薬事法とか景品表示法とか、広告表現にいろんな規制が
かかっている。最近仕事でこれらに触れることがあるんだけど、「さらさら血液なんとか」とか、「ウェストスリムかんとか」みたいな実際の効果を想像させる商品名はすべて禁止されて、そのためにメーカーは対応に追われた。
それはそれでいいんだけど、事実である限り、相対表現には規制がかけられていないようだ。また、医薬部外品とか特定保健用食品とか、それぞれのクラスごとに規制が異なっていて、たとえば増毛剤なんてのは、TVコマーシャルを見ていても、「効果には個人差があります」という金科玉条のもと、あからさまに髪の量が2倍3倍に増えるかのような表現が普通に行われている。だからさ、実際にそうなった人は、100サンプル中何人だったわけ?
なんか取り締まるポイントがずれてるんじゃないの?本質的なところを押さえきらないで、形だけとは言わないけど、時として余計な対応を迫り、そのための専門コンサルタントがひっぱりだこみたいな状況って、やっぱおかしいよねぇ?
みんなもその妙な説得力に騙されちゃダメだよ。相対表現やサンプル数のない表現は、どっかにウソがまじっている!相対表現って言うのは、定量的であることを隠れ蓑にしたあいまい表現に過ぎないのだからね。
てことで、初めてのナイトドライブのF1を観ながらの主張でした。
別にこのことを「煙草を辞めない」言い訳にするつもりはありません--というか言い訳する必要もありません--ので誤解なきよう。
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