ユーミンがやたらテレビに出ている。8日に発売になったアルバム「そうしてもう一度夢を見るだろう」のプロモーションのためだが、かつてユーミンはテレビ嫌いで有名で、滅多に出なかった人なので、Music Lovers、オールナイトニッポンTV、ぼくらの音楽と、この2週間で3度も見かけると、なんだか時代が変わった感がする。
中学の時、ユーミンが「優しさに包まれたなら」や「卒業写真」で一気にスターダムにのし上がったころは、フォーク時代の終わりにその流れをくんで出てきたように感じられたその音楽は、Rocker魂にはあまりに軟弱で、とてもおおっぴらに好きとは言えなかったのだけど、大学に入ってさる女子に勧められて聞いた「昨晩お会いしましょう」は、けっこう衝撃だった。
彼女は当時全盛だったディスコミュージックばかりを専門にやっていたコピーバンドのボーカルを務めるバンド仲間で、今は2児の母だけど、当時は女優になるのが夢で、小さなプロダクションに所属するような、かなり自由な感覚を持った人だったんだけど、そんな彼女が好んで聴いているというのを知って、ああ、ユーミンが好きだって言っちゃっていいんだ、っていうのがまた新鮮だったのを覚えている。
今回のアルバムで35枚目(!!!)という彼女、もちろん今回も発売日に買ってきた。本人が最高傑作だと言っているだけあって、ポップで、だけど斬新なメロディーで、まさに彼女の真骨頂と言える。ユーミンって、すごく"ありがち"なメロディーが多いように感じる人が多いかもしれないし、歌唱力はイマイチだと思ってる人が多いだろうけど、いざコピーしてみると、実はとても難しい曲が多い。学生の頃何曲かコピーしたけど、ボーカルが音をあげていたのを思い出す。カラオケで歌おうとしてみた人はわかるかも。
それとこのアルバム、やや低音を抑え気味にしてすごくヌケのよい音をしている。特に2曲目の「まずはどこへ行こう」という曲のシャッフルのノリがもう抜群。DrumはVinnie Colaiutaか。なるほど。さもありなん、だな。こういうシャッフルやりたいなぁ。ここまではとてもできないだろうけど。
でも、やっぱし彼女が一番輝いていたのは、多感な時期に聴いたからかもしれないけど、'80年代に出したアルバムたちだと思う。荒井由実時代に若き天才ぶりを発揮して一気に何曲もヒットを飛ばし、さて一段落して、そこから息の長いミュージシャンとして活躍し続けられるかを問われる時期、多くのアーティストが越えられない壁の時代だ。彼女はその難しい時期に、実にすばらしい仕事をした。
独特の雰囲気を持った「時のないホテル」、"恋人はサンタクロース"の「Surf And Snow」を経て出た名盤「昨晩お会いしましょう」、そして最もソフィスティケイトされインパクトのあったこれも名盤「PERAL PIERCE」、それから学生の頃コピーしたらミドルテンポのノリを出すのが実は超難しかった"心のまま"が入った「Reincarnation」、それに続いて出たこれまた名盤、"ダンデライオン"が入り宇宙的な雰囲気を持った「Voyager」、さらに名曲"ノーサイド"を擁する「No Side」、そしてぼくが実は最も好きな「DA・DI・DA」。
このころからユーミンは、毎年11月の末ごろ、つまりぼくの誕生日の前後にアルバムを出していて、この「DA・DI・DA」はWikipediaで見て気づいたんだけど、'85年の11月30日に出ている。この日はカミさんとぼくにとってちゃんと付き合うことになった記念日じゃないか。そうだっけ?当時も出てすぐ買ったはずだから、あの時車の中で聴いてたのかな。すっかり忘れてたな。だからすごく心に灼きついているのかもなぁ。
ユーミンには有名な曲以外にも、キラリと光る名曲が多く、このアルバムはヒット曲はないけどそういう名曲の集まりだ。特に「2人のストリート」と、「メトロポリスの片隅で」という曲の、ビジュアルが鮮明に浮かぶ歌詞が印象的。後者の"コピーマシンのように 流れて落ちる日々もいつしか..."のくだりなんか、過去聴いた日本語の歌詞フレーズの中でBest5に入る、天才的言葉紡ぎだと思う。
昨日の「ぼくらの音楽」で、音楽はダウンロードする時代になったけど、私はやっぱりアルバムアーティストであり続けたい、と言っていた彼女。説得力あるなぁ、彼女に言われると。ぼくのような年寄りには、とても共感できる。
よし、このころのアルバムからそういう曲を拾ってベスト盤作るか。ところがぼくがずっとCDを買い続けてるのは「DA・DI・DA」からで、「No Side」以前は音源がカセットテープなんだな。うーむ。CDまとめて大人買いするかな。TSUTAYAに置いてあるかな?
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