昨日は3月の中旬にチケットが取れたって書いたPat Methenyのライブを観に、Bluenote東京に行ってきた。
ずっと観たかったんだよね。この人のライブは。学生の頃、多分高校の1コ先輩のギタリストIくん--たまたま今週火曜日に、彼や、一時「健康」を手伝ってくれていた小学校以来の友人ABちゃんとかと組んでいたディスコバンド「Legal High」の同窓会が、三十数年ぶりに行われて、その時に数年ぶりに会った--に教わって、「First Circle」という名盤にハマり、その後何十回聴いただろうこのアルバムは。
当時からギターシンセサイザーを思いっきり駆使した彼のサウンドは、世界の音楽シーンの中で孤高の、際立った存在感を示していた。その斬新さは衰えることがなく、息子が高校で、ブラバン--つってもいわゆる行進曲だけではなくPopsやJazz系の曲もやっていた--でSAXを吹いていたとき、やはり先輩から聴いてみろと言われてハマり、親子2代にわたってリスペクトしていた数少ないミュージシャンだ。
その後ずっとフォローし続けていた訳ではないんだけど、一昨年にはアルバム「Kin」をリリースし、これがまた往年のサウンドを彷彿とさせる気持ちいい音でねぇ。例えば夕方か夜もしくは明け方、前後に他の車がいない高原のスカイラインを、しかも周囲に雪が積り、かつチラついているような中、そこそこのスピードで飛ばしているみたいな、特殊な状況ではあるけれども、そういう時にカーステで聴く音楽となると、もうMethenyしかないでしょう、って人なんです。わかりにくいか。スミマセン。
んで、そのIくん--何度か書いてるけど、我々のいた都立青山高校軽音楽サークルは、今は知らんが当時、先輩をくん付けで呼ぶ、ジャニーズ事務所みたいなとこだった--かABちゃんか、どっちか忘れたけど、彼らが学生か社会人になりたての頃に、Methenyのライブに行って、すごく良かったと言ってたのを聞いて以来ずーっと、大げさに言えば一度は観ないと死ねないと思っていたのね。
彼は最近も、けっこうな頻度で来日はしてくれていて、行こうと思えば行けたんだけど、でも隅田トリフォニーホールとか、割と大きな--と言ってもキャパ1,800人くらいだけど--ハコでやることが多く、行くならもう少し小さいところで観たかった。そしたら数年前の正月に、Bluenote東京で彼のライブが行われたことを知り、そうか、Bluenoteでやることもあるんだと。BlunoteならDMが来てたはずなのに、しまった、見落としてたなぁと悔しい思いをしていた。
Bluenoteはキャパが少ないだけに、1日2ステージになり、1回あたりの時間は短いし、お値段もなかなかになっちゃうんだけど、やっぱあの近さによる、演者の表情、体使いや指使いが伝わるライブ感、緊張感や一体感は、代えがたいものがあるよね。Billboad Live東京みたいに、縦に深くないのもいい。音もずっといいと思う。
んで、今度はDMを見落とさず、発売開始の土曜日朝に珍しく起きて、10時ぴったりに申込ボタンを押し、土曜日夜のセカンドステージをゲットしたと。失敗したのは、今年2月からかな?席の案内ルールが変わって、事前に電話連絡した順に整理番号を発番し、その順番で案内をしてくれるようになったのね。で、ぼくはマジメにコンビニに行ってお金払ってチケットをゲットしてから電話して、98番と言う、ないも同じの番号になっちゃって。しまった、予約取れてすぐ電話すりゃよかったよ。
Bluenoteは久しぶりだなぁ。2010年のぼくの誕生日に、Stanley Clarke TRIO with Hiromiを観に行って以来だ。ほぼ19時ちょうどに着いてチェックイン。地元で社交ダンス教室に行っていて少し遅れてきたカミさんを玄関外まで迎えに行く。
待ち時間にタイアップでアンケート集めてた車のMINIのクジ引いたら、なんとないことに、Bluenoteのペア招待状が当たってしまった!この手のものには半世紀+10%の人生でついぞ当たったことなかったのに。まぁ日付が限定されてるから、誰の日かはまだ調べてないけど、あまり売れ行きが良くないライブなんだろうけどね。なんか記念とか言ってスタッフのおねーちゃんに写真撮られた。
そんなこんなで案内されたのは、やっぱほとんど最後で、もうほぼ空いてる席がない感じだったんだけど、たまたま、アリーナ側とのパーティションの、ステージに向かって右後ろの角のすぐ外が向かい合わせで2席空いてて、体を横に向ければ結構いい感じで見えるとこに座れた。
今回のライブは、Methenyが新しく探してきたメンバーで行う初めてのものだそうで、オーストラリア育ちの中国系マレーシア人、ベースのLinda Oh、UKジャズの伝説的奏者に師事し、Bill Brufordとかと共演した英国生まれのピアニストGwilym Simcock、そしてメキシコ人のドラマーAntonio Sanchez、この合計4人で構成されている。
Antonio Sanchezという人は、映画「バードマン」のスコアでグラミー賞受賞も果たした、アレンジャーとしても名のある才人なんだけど、なんと彼は、以前、体操のメキシコ代表選手だったらしい。「天は二物を与えず」って格言があるけど、あれだけはあからさまに嘘だよね。
いやしかしこのライブは良かったなぁ。なんかいろんな「波」が心地いい感じ。1つはダイナミクスの波。大きな音と小さな音が順番に、絶妙に繰り返される。この人たちはみんな、小さいけど「いい」音をとてもよく知ってるなぁ。こんなに、小さないろんな音が聴こえてくるライブって、なかなかないんじゃないだろうか。
それからリズムの波。昔から変わらない、1拍目の8分裏、2拍目の16分裏、3拍目の頭と8分+16分裏、4拍目の8分裏にアクセントのある16Beat、3連で構成された24Beat、それとスローバラード--だけどタイムはしっかりしてる--の、ほぼ3パターンなんだけど、なんかエレクトリックビートの4つ踏みのバスドラの縦ノリなんぞより、ずっと自然に体が揺れてくるんだよね。
このAntonio Sanchezって人は、かなり低い、腹から腰の位置にシンバルやら太鼓やら全部並べて、なんか左手のレギュラーのグリップ位置とか、右手の親指の添え方とか、ドラムの教則本的には反則だらけなのに、そんなもんをブッ飛ばす曲芸的なプレイをしてくれる。左手のクローズドリムショットとレギュラーの握り直しのスムーズさとか、右手のトリプル、フォースの速さとか、すげーわ。この辺は体操選手の体技なのかなぁ。
メセニーはほとんどセミアコ、2曲フルアコ、1曲ずつだけ、オープニングの変わり12弦とのダブルネックと、SGのような形をしたエレクトリックギターで、そのSG様のにはギターシンセが内蔵されていたようだったけど、基本は多少のエフェクトはあるものの、かなりギター本来に近い感じの音でプレイしてる。だけどそれでも彼が弾くと、目をつぶって聴いても彼だってわかる音とフレーズなんだよね。すごいなぁ。
MCはほとんどなく、しゃべったのはバンドメンバーの紹介を、序盤とアンコールの時とやった2回だけ。巨体でもじゃもじゃ頭の威容の割には、しゃべると甲高い声なのが印象的でした。
昼の部はどのくらいやったのか知らないけども、この夜の部は終わったのが10時ごろだったから、ほぼ2時間やってくれたんだね。いやいや、30年越しの思いが叶った上に、いつまでも聴いていたいとホントに思った、期待を裏切らない素敵なライブでした。
最後にGW遊びすぎの余波でこれもすっかり枯れたりぼーぼーになった玄関先の花たちを、今日全部植え替えたので、その写真も載せておきますね。
GWからの懸案がこれでほぼクリアされた上、イベント続きの最後を、見事に飾ってくれた昨日のライブでした。
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