高知・徳島旅行の2日目は、まず車で四国最南端、足摺岬に向かう。ここは思いの外、観光地っぽく開けてはおらず、駐車場横の、この地出身のジョン万次郎の銅像がある広場から、灯台のところまで遊歩道がつけられているが、その周りは椿や南国っぽい緑濃く丸い葉の木に覆われた森で、途中一箇所展望台に登ると視界が開けるのと、灯台の裏側以外は、ほぼ景色は見えない。
ここ土佐清水市は、高知市、と言うか県全般に渡る龍馬推しに加え、このジョン万次郎推しがすごく、街中いたるところに「ジョン万次郎を大河ドラマに」と書いた幟が翻っている。この人は確かに、貧しい漁師の家に生まれ読み書きもままならなかったのに、遭難してアメリカの捕鯨船に拾われ英語を習得、一等航海士の技量も身につけ、帰国して、右寄りの幕府重鎮に疑われながらも、その能力の高さで通訳等に重用されていく、まさに波乱万丈の人生だ。
実際にやったことのスケールで言えば、龍馬より大きいと言えるかもしれないし、彼を養子にし学校に行かせた捕鯨船のホィットフィールド船長という人が偉かったのだと思うけど、あの時代背景で、まったく異なる価値観や文化の中で、柔軟に能力を伸ばしかつ意思を持って帰国する--日本語の読み書きは帰国してから習ったそうだけど--っていうのは、本当にすごい人だよね、とカミさんと話した。津本陽さんの「椿と花水木」、今度借りて読んでみよっと。
次に向かったのは、土佐清水市の中心街から西に向かった竜串という場所。太い竹のように見える「大竹小竹」ってのを始めとする奇岩と、海の美しさを売りにしているが、平日に行った感じだと、途中の元レストハウスが倉庫にされてすっかり寂れている様子とか、完全に時代に取り残された観光地の趣だったな。
それでも近くの「海底館」という海の中が見られる施設には観光バスが来ていたし、「海洋館」の隣には同規模の施設を建築中だったりして、まだ死ぬわけには行かない、ってところか。この「海底館」手前の昭和の香り満点のレストハウスで昼食にする。
それから向かったのは、さらに西に進んだ大月町の、足摺岬と対称に西南側に突き出した岬の先にある、柏島というところだ。ここは、岬と島が海を囲むように連なっている内海が、波も静かで透明度が大変高いことを売りにしていて、ダイビングの名所になっている他、石垣島の川平湾みたいなグラスボートを運行している。
ただ、普通の20人乗れるようなグラスボートは4月中旬からの営業だってことだったので、「黒潮実感センター」というNPO法人が運営している2人乗りの「グラスカヌー」ってのを、予め予約しておいた。天気が悪いと海に出られないってことだったけど、この日の天気なら大丈夫。前日にはセンターのおじさんが、大丈夫だということを知らせにわざわざ電話をくれたりした。
元中学校だった建物を居抜きで使っているこのセンター、この日の客は当然我々だけだったのだけど、その担当のおじさんに加え、見習いだというお姉さんが一緒に付いて来る。聞けばこのお姉さん、我が家の隣の埼玉県新座市の出身で、カミさんとは隣の小学校。こちらで海の仕事をしている方と結婚し、ほぼこの日からこの仕事を覚え始めたってことで、私もカヌーで海に出るの、2度めなんですぅ、と言っていた。防水ヤッケを服の上から上下とも着て、さらにライフジャケットで完全装備する。
グラスカヌーは下面全体が透明になっていて、水が入ってくるのをセーム革で拭きながら下を覗くんだけど、ここの海は本当にきれいで、水深20mくらいの場所でもきれいに海底まで見える。熱帯魚っぽいのはそんなにはいなかったけど、コウナゴの大軍団とか、アオスズメダイとか、クマノミとか、なんとかイシダイとかが、たくさん泳いでいる。
おじさんによると、これでも春は、プランクトンが出てくるので透明度が下がりがちだそうで、今日はその中ではよく見える方です、とのことだった。カメラのモードを間違えて露出オーバーになってしまった--てかそもそもオートで撮ってるので、海中を撮ろうとしてもボートの床にピントが合ってしまう--ので、ギリギリ修正したこんな海上の写真しかないんですけどね。
3時間弱があっという間で、けっこう遠く湾の反対側まで来ちゃったので、最後漕いで戻るのが大変--どうもカミさんはカヌー漕ぎがうまくなくてね。どうしても右に曲がってっちゃうので、しょっちゅう修正が必要--だったけど、これはなかなか楽しかったなぁ。@6,000円の価値は十分にある。
柏島から東へ戻るのではなく、北へ向かって宿毛市経由でバイパスを使って四万十市へ戻る。この日の宿は、前日の四万十川河口近くではなく、4kmほど上流の四万十市中心部の、標高70mほどの城跡の山上にある、「なごみ宿安住庵」というところだ。
四万十市というのは14年前の市町村合併でできた名前で、もともとは中村市といい、地元の人は今でも中村と呼ぶし、駅の名前も中村のままだ。けっこう歴史ある名前なのに、観光上アピールするには四万十ブランドを使った方が有利だってことだんだろうけどねぇ。確かに沈下橋とか屋形船とか観光名所としてはこちらがメインなので、外国人の方とかへのわかりやすさ的には、正しくはあるのだけど。
でもややこしいのは、四万十川の上流--と言っても四万十川って筆記体のn字型に曲がっているので、高知市から来ると通り道になるほど海の近くなのだけど--には高岡郡四万十町っていうのが、この四万十市の1年後にやはり町村合併でできていて、隣り合っているということだ。四万十市にも四万十町って場所があるから、さらにややこしい。四万十ブランド強し、なんだろうけども、困ったもんだねぇ。
この中村城址のある為松山は、頂上付近が為松公園という名前で桜の名所になっており、この日は宿に着いてまず、歩いて数分の夕日のあたるこの公園を見に行った。今回の旅は、南国だけにもう終わっているだろうと思っていた桜がどこへ行っても満開かそれに近く、しかもこの公園は花見でどんちゃん騒ぎとかはしてないので、ライトアップと言っても提灯がぶら下がっているだけではあるものの、静かにきれいでよかったな。
「なごみ宿安住庵」は、今回の旅の宿では一番安かったところで、温泉は運び湯で営業しているようだけど、和室は3間続きで広く、加湿空気清浄機も置いてあって、ウォシュレットも全館完備、夕食は時間の制約がやや厳しかったのと、前夜の牛の代わりに鶏だったりしたけど味は悪くなくて、コストパフォーマンスはよかったな。部屋からの景色もいいし。
3日目は今回の旅のメイン、チャリで四万十川巡りの日だ。日本最後の清流と言われ、四万十市中心部から2kmも遡れば、そこから上流は護岸工事なんかされていないこの川は、昔から来たかった場所の1つであり、特に7年前に放送されたドラマ「遅咲きのヒマワリ」--生田斗真と真木よう子のヤツ--の舞台になってからは、いつか絶対行ってやると思っていた。
まず山を降りて中村駅のロータリーがあるのと反対側にある駐車場に車を停め、跨線橋を渡って、観光案内所で3段変速のママチャリを借りる。そこから四万十川にかかる赤鉄橋(四万十川橋)を渡り、右に折れて堤防を走っていく。途中、「桜づつみ公園」というところではこれまた多数の桜が満開になっている。
少し細い山道のような連続カーブに沿って走っていくと、最も下流の沈下橋、「佐田沈下橋」に出る。青い橋脚のこの橋は、最下流だけに長さは最も長いらしく、これを渡っていくと、水の流れが美しい。
佐田沈下橋を渡って、そのたもとから出港する、予約しておいた「さこや」の屋形船に乗る。我々と、下の子が幼稚園年中くらいの4人家族と、ドイツ人と思しき我々と同年代に見えるカップルの計8名の客だったが、船頭さんがのべつまくなしに解説してくれるのも、外国の方にはわからないだろうなぁ。誰か訳して、と言われ、時々その家族連れのお母さんやウチのカミさんが、単語だけだけどフォローしてあげていた。
1つ上流の、「遅咲きのヒマワリ」でも度々登場した「三里沈下橋」のちょっと先まで行って、約50分で元の場所に戻り、今度は川の左岸--川岸の左右は下流に向かって言うんだって。知ってた?--を、川に付いたり離れたりしながら下っていき、室町時代にこの辺のお殿様だった一条氏を祀った一條神社にお参りして、中村駅に戻る。
それから車をすぐそばの土産ものセンター「サンリバー四万十」に移動し、飯を食ってお土産を買う。次の宿、高知県中北部にある仁淀川町の「中津渓谷 ゆの森」までは比較的距離があり、また四万十川沿いを遡って行きたかったので、この日は14時過ぎには車に乗って出発する。そしてここで事件その1がぁ!
道系の事件が今回2つあったんだけど、その1はバカな話で、四万十川に沿って上流へと思ってたのに、本来行くべき国道441号じゃなくて、間違えてその1つ東の439号を行っちまった!すぐに気づけばよかったんだけど、四万十川の支流の内川川ってのが流れてたので、あれ?これ四万十川か?って思いながら進んで行っちまったら、なんだかとんでもない細いワインディング峠道になっちゃって、なんだよー、これじゃただの遠回りの、しかも運転が大変ってヤツじゃないかぁ、と。
この439号は、この日は途中で出会った四万十川上流--だけどそのあたりにはもうあまり見るものがない--で川に沿って右折して、高速経由で行ったんだけど、まっすぐ峠道を進むと、この日に泊まった「中津渓谷 ゆの森」のすぐそばを通っている。なので4日目はまたこの道を、徳島の方向へ走ることになる、今回大変縁の深い国道になった。ちなみにこの道は、たびたび峠を越えるごとに、上記のような様相となるため、四国きっての「酷道」として知られ、バイク雑誌では「ヨサク」の名で頻繁に紹介されているらしい。
カヌーとかは中流にしか出てないし、川をまたぐ鯉のぼりも、護岸工事のない美しい川の流れも、全然見れなかったじゃないか!くっそー。今回のレンタカー、マツダDemio DEのナビは、ぼくが乗ってる同じマツダAxelaのナビよりも廉価版なのか性能がよろしくなくて、地図がすごくわかりにくかったんだよね。しまった、スマホのGoogle Mapのナビで走ればよかった。まぁこういうアクシデントも旅の醍醐味ですけどね。
てことですっげー長くなっててスミマセン。残り2日分はがんばって明日アップする予定です。
※最近このブログの読み込みに時間がかかるようになっていたのは、Amazonの広告表示用の埋め込みコードが古くなっていたことが原因と判明しましたので、修正しました。これまでご迷惑をおかけし、すみませんでした。
コメント