5月以来のご無沙汰になってしまったこのシリーズ。いやね、パワーかかるんですよこれ。ドラムの細かいことなんて知ってる人はいないだろうから、一生懸命説明しようとするとね。
今日のテーマはスネアのヘッド(皮のことね)。別に「スネアの」って限定する必要もないんだけど、ヘッドの話するとなると必然的にチューニングの仕方の話になってしまうところを、そんな技術的な話にすると、恐らく同業者の方に見られたら恥ずかしい内容になってしまうので、そういう方向ではなく、今回は思い出話的なところに振ろうかなってことで、「スネアの」って書いてみました。
とは言え多少はヘッドのことも書かないと訳がわからないので、少し解説しますとですね。
ドラムのヘッドって言うのは、シェルから外した状態だとこんな形なんだけど、材質は(多分)ポリエチレンで、エッジ部分に輪がついていて、ここをフープで押さえて、そのフープを、14インチまでのタムは6本の、フロアタムは8本、スネアは10本の四角ネジを締めることによって、シェルと並行に押さえつけることで、音のピッチを調整する。
ドラムヘッドは、今でもYAMAHAとかも作ってるようだけど、事実上アメリカのREMOというメーカーの独占市場だ。ヘッドには、まずクリアタイプとコートしたタイプがあって、濁り(っていうのかな)の多さ少なさが違う。材質にも何種類かあるし、厚さがいろいろあり、またセンターにフィルムを張ってミュートしたタイプや、フィルムを張り合わせて間にオイルを入れたタイプがあって、音の明るさとか、サスティーン(残響)の長さとか、重さとかが、それぞれに異なる。
厚さの違いは当然耐久性に関わってくる。薄い方が基本的に多少は安いけど、大体1,500円から2,500円前後で、薄いからって半額になるわけではないから、貧乏かつライブ頻度の高い学生のころは、そのために薄いのは避けたりしていた。
ヘッドのチューニングについてはさっき書いたとおりあまり深くは書く気はないけど、基本的には極力均等に四角ネジを締めることと、余計な倍音を抑えるため にエッジ付近をガムテープなどでミュートすることで音が決まって来る。均等に締めるだけでなく、対角線上の1対だけを少し緩めに締めると立ち上がりの後サ スティーン部分でピッチを少し下げたりできるし、ミュートもエッジのどこに貼るか、テープをベタ貼りするのかキッチンペーパーなどを挟むかなどによって、 音が変わる。
ぼくの場合は--多分こういう人は多いはずなので割合オーソドックスだと思うんだけど--タムはピンストライプという、そのオイルが入って比較的柔らかく重い音がするやつのクリアタイプを使い、スネアはコーティングタイプのものを使っている。
ミュートは対象が何インチかによって長さはいろいろだけど、基本的に布製のガムテープの両端だけ粘着力を残して、センター部分はキッチンペーパーを4つ折りくらいにして挟む。タムにはミュートをしない人もいるけど、ぼくはタムもちょっとだけミュートする。
スネアの場合は、基本的にサスティーンの短い音を出すし、エッジ付近から出るピッチの異なる倍音をカットした方がヌケがよいので、ほとんどのドラマーが何らかのミュートをしていると思う。でもこれも、やりすぎると倍音がカットされすぎるため、レコーディングの時は後でイコライザとかで音色をいじる余地が少なくなってしまうので、じかに聴くとバシャバシャの汚い音で録ったほうが、後で良い結果が得られたりする。
って、結局解説が長くなっちまいましたが、思い出話って言うのはね...
ぼくは今2つのウッドの深胴タイプと金属(銅)のピッコロタイプの2つのスネアを使い分けていて、ライブの時や、レコーディングでもハイピッチでヌケがよい音が欲しい場合は後者を、ピッチが低くて重い音が欲しい場合は前者を使っている。ホントはライブでも両方使いたいんだけど、そのためにマイクを2本立ててもらうなんて、プロでもないのに申し訳なくてできない。
で、その前者のウッド深胴スネアの方は、学生のころから使ってる愛機でね。ぼくが学生の頃は、「健康」ももちろん活動していたけど、とにかくディスコビートの全盛時代。スキー場の宿のサービスも人気No1が宿の即席ディスコだったりして、その生バンドをやってくれって呼ばれて、タダで泊めてもらってスキーを楽しんだこともある。
なのでとにかく、ズシ、ズシ、っていう感じのスネアの音が一番カッコよかったんですよ。で、当時なかなかその音が出せなくてですね。厚めのヘッドを使った方がいいんだろうなぁって思って、普通はスネアには使わないピンストライプや、ピンストライプにさらにセンターフィルムがついたやつ(上の写真のヘッドがそうです)とかを使ってみたんだけど、どうにもこの音が出ない。
もちろんレコーディングされた音は、イコライジングされてるから、生音でそれに近い音なんて、やっぱ出せないのかなぁ、と、学生のころ諦めたきり早25年、去年、ついにかなり満足できる音を出せてしまったのですよ。プロデューサーのみのりんに「すげー音だな」と言わしめた音が。
多分25年前には売ってなかったと思うんだけど、このピンストライプのコーティングタイプのやつで。いやー、嬉しかったなぁ、実は密かに。もうほとんどフロアタムに近いようなズシズシ音が出てくれちゃったのですよ。
その時の音が、「健康」CDの『ぼくは年男』の後半、小太郎が熱唱するところのバックに入っている音です。ディスコミュージックではこんなにリバーブはかけないけどね。お持ちの方は聴いてみてくださいませ。お持ちでない方はぜひ買ってねー。
って最後は宣伝ですんまそん。
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