映画のことは何度か書いてきた気がするけど、「お気に入りの」シリーズで映画を取り上げるのって、このブログ始めたばかりの「いま、会いにゆきます」以来約1年半ぶりなんだね。しかも同シリーズで何度も書いてる音楽の話題の中で、Norah Jonesのことって、今調べてみたら過去書いてないんだね。我ながら不思議なことに。
2002年のデビューだからまだわずか6年しか経っていないこの21世紀最初の大天才は、Paul Simon以来久々に、何度聴いてもいくら聴いても癒される、至高のアコースティックミュージックを生み出してくれる。洋楽の若手では多分ぼくにとって唯一、アルバムが出れば絶対買う、とっても大好きなミュージシャンだ。
その彼女が初主演を務めた「My Blueberry Nights」と いう映画のDVDが、2週間ほど前からレンタルされていて、Tカードの特典として、地元のTSUTAYAでは月2回、第2、第4金曜日が、新作も含めて半額レンタルになるので、おととい満を持して借りてきた。
(以下ネタバレです。これから観る方は読み飛ばした方がいいかも)これが...悪くないんだよね。そんな大感動作でも、大スペクタクルでも、おしゃれでもない、地味な恋愛映画なんだけど、なんていうか、久々にアメリカの市井の雰囲気と言うか、ニューヨークの場末のバーとか、メンフィスのナイトクラブとか、カジノでのポーカーとか、車で旅してモーテルに泊まったりとか、サバンナの中の一本道とかが、いかにもアメリカな感覚を久々に思い起こさせてくれて。
メンフィスと言えば、言うまでもなくプレスリーやBBキングを生んだ田舎街だけど、ぼくにとっては、たぶん中学生のころ大好きだったMott The Hoopleというバンド(Mottのことも書いてないね。過去このブログに)が、窮地から救ってくれたDavid Bowieと決別して作った「Mott」という名盤の中の1曲目、"All The Way From Menphis"という曲を思い起こさせる。もちろんぼくはメンフィスには行ったことはない。
というわけでNorahの、グラミー賞を総なめにしたデビューアルバム「Come Away With me」を止めて、LP盤から「Mott」を探してきて何十年振りかでかけてみた。いいなぁ、やっぱし。(このAmazonにあったジャケット写真は、オリジナルのLP版とは違うなぁ。まぁいいか。)
そしてBluesの聖地としてメンフィスを唄いながら、1973年当時、最隆盛だったBritish Rockの代表選手だった彼らをはじめ、ぼくらの世代にとってはなんとなく新しい音楽はイギリスから発信されるみたいなイメージがある。Norah Jonesもなんとなく、そのブルージーなー雰囲気とか、わが道を行く、でも決して奇をてらった訳ではない肩の力の抜けた普通さが、イギリス出身のような錯覚を持っていたんだけど、いやいや彼女は、この映画を観るまでもなく、アメリカそのものだったんじゃないか、ってことに気づいた。
ぼくの持つこのいかにもアメリカな感覚って、かつて観たタイトルも忘れてしまったようなB級映画何本かと、何と言ってもぼくが初めて買った洋楽のアルバム、Simon & Garfunkelの「Bookends」に入っていた、タイトルもそのものズバリ"America"という曲で、目的を見失った若者が、恋人とバスで旅に出るそのうらぶれた、太陽だけがやけに眩しいような世界、それが形作っているんだよな。
そして、ぼくにとってアコースティックで癒される代表選手、Paul SimonとNorah Jonesは、いずれもアメリカ人で、そのいかにもアメリカな世界を持っているからこそ、ぼくの琴線に響いたのかな、とそんなことを感じる。
そういう意味で、ストーリーとしてはまったくシンプルなこの「My Blueberry Nights」という映画は、ぼく自身の感性を自己分析させてくれる、そしてアメリカってそうだったよな、ということを思い出させてくれる、素敵なトリガーになってくれた。
Norahの演技もなかなかよかったよ。やっぱナタリー・ポートマンと並んじゃうと、美貌という点では劣るけど、十分にかわいいし、その普通さがまた、物語に現実感を与えてくれていた。だってどんな映画でもTVドラマでも、とにかく女優がみんなきれいすぎて、それはそれで男子目線では一つの癒しではあるものの、どうにも現実離れしちゃうじゃん?
というわけで、映画に何を求めるかにもよると思うし、うっわー、スゲェ、っていうシーンがあるわけでは全くないけど、観る価値のある映画だと思いますよ。そういう「いい映画」って、海外の、アメリカの作品では久々だったな。うん。なかなかです。
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