2日目は朝5時半に起きて5Fの宿泊者用レストランでバイキングの朝食を食べ、6:40分ごろ、オプショナルツアーのワゴンにピックアップしてもらった。この日は、今回の旅行全体を頼んだ代理店とは別に、VELTRAというオプショナルツアー専門サイトで申し込んでおいたツアーへの参加だ。なぜこっちを選んだかというと、単純にこっちの方が安かったからだ。
近所のいくつかのホテルを回って、日本人ばかり、大学生と思しき女子2人組、同男子2人組、社会人と思しき女子3人組、それからリタイア後、60代と思われるご夫婦と我々で、計11名の参加だ。12名乗りのワゴンだったから、これは主催者側にすればかなり効率よい儲けになるはずだ。
ワゴンがまず向かうのは、バンコクの西南西、直線距離で80kmほど行った所にある、ダムヌンサドアク水上マーケットで、ここまでの間も、結構怖い運転なのだけど、怖かろうがなんだろうが眠いものは眠いので、シートベルトを締めて1時間半ほどの工程のほとんどを寝て行く。
水上マーケットというのは、要は運河が発達した地域で、昔から住民たちが船に乗って物資の交換をしていた場所で、到着するとまずはその水上生活者の家々の間を、後ろにエンジンを積んだ--TOYOTAと書いた車のエンジンを積んでいる船もあった--2列8人乗りほどの細長いボートで巡って行く。
最後に着くのが、水上に土産物を中心としたお店やさんがいっぱい並んだ場所。手漕ぎボートで進んで、欲しいものがあれば、主におばさんの売り子たちと、価格交渉してものを買うという、その間アイスクリーム売りのボートが近づいてきたりする、まぁ言ってしまえば観光客向けのお土産販促だ。
バンコク近辺の水上マーケットは、有名なのが3つほどあるらしいのだけど、このダムヌンサドアクは、その中でももっとも外国人の観光に特化したところのようで、吹っかけてくるのもなかなかにいいお値段だし、生ものや水ものは食あたりが怖くて手は出せないし、手漕ぎボートの船着場にあった大きな店でお土産の物色もしてみたけど、結局カミさんがシルクのスカーフを値切って300バーツ(約1,000円弱)で買っただけだった(それでも後で息子に高いと言われた)。
でもガイドの、片言の日本語を話すおばさんが配ってくれた、八朔のようなかんきつ類とミニバナナ、あとなんだかわからないけどぶどうの一種みたいな果物は、すごくおいしかった。
それから一度バンコクに戻って、あるホテルのレストランでバイキングの食事を取り、今度はバンコクの北へ50kmほど行ったところにある、アユタヤの遺跡群に向かう。ま、この両方を1日で観るってのは、工程的にかなり無理があるので、代理店もデフォルトではツアーのラインナップに加えておらず、個別に訊いてみたら高くなっちゃったんだろうけど、我々の場合は3日目は息子に市内を案内してもらうことになってたからね。遠目を一気に回っておかないとね。
アユタヤってのは、日本で言うと室町時代初期から江戸時代中期くらいまで栄えた、タイの歴代4つの王朝の中でもっとも長く君臨した王朝があり、後期には日本人町ができ、山田長政が重臣として活躍したといわれる場所で、この地に残った歴代王のお墓やお寺は、世界遺産の名にふさわしくなかなか重厚なたたずまいを持つ。
日本は木造建築の国だから、遺跡となると多くは、土台や礎石だけが残っていて後から上ものを復元しました、ってとこが多いんだけど、ここの遺跡群は、なんつーか遺跡らしい遺跡というか、石積みの建造物が半分崩れかかっていたり、とはいえ重要な建造物は極力当時のまま--ビルマ軍の侵攻で崩され、再建したものもあるようだけど--保存されていたりして、歴史の重みを感じられる。
ここでは4つのお寺を回ったのだけど、中でもワット・プラシーサンペット--ワットってのはお寺、って意味--の、アユタヤが最も栄えた時代の3王のお墓は、大変に見ごたえがある。
しかし昼過ぎの時間帯にさしかかって、とにかく暑い。気温は33度から35度くらいって感じなんだけど、日差しがものすごいんだよね。そりゃそうだ、バンコクは北緯約13度、春分近いこの時期だと太陽はほぼ赤道の真上にあるから、北緯約35度の東京で言うと北回帰線(約23度)に太陽がある夏至の日差しと同じってことになる。日焼け止め塗っといてよかった~。
考えてみれば、ぼくがかつて行ったことがある場所の中で、緯度で言うとハワイよりも香港よりも中国の広州よりも南、グアムとほぼ同じだから、南半球には行ったことがないぼくにとっては、最南端タイ(オヤジギャグじゃないからね)記録ってことになる。そりゃ暑いわなぁ。一緒にツアーで回った皆さんも、遺跡をざっと見ると、早々にエアコンの効いたワゴン車に引き上げていた。
ガイドのおばさんがぼやいてたけど、最近は若い子がなかなか観光ガイドになりたがらないんだって。外に出て案内しなきゃいけないのでこうして暑いし、朝も早いし、ってことでね。彼女の娘さんも含めて、みんな楽なオフィスワークに就きたがるらしい。確かにほかのツアーのガイドを見ても、みんな割にいい歳な感じだったな。
ちなみにこのおばさん、日本が大好きで何度も行っており、三十いくつかの都府県を制覇したという、下手な日本人よりはよっぽどなんじゃね?って人なんだけど、有名な、根の間から仏像が顔を出している木のあるワット・マハタートでは、いい場所を占拠して何十枚も写真を撮りまくっている中国人のおばさんに、ホントにあいつらは我がままでずうずうしくて気に入らん、日本人の奥ゆかしさが私は好きだ、と言っていた。
確かにタイ人の皆さんは平均的に、あまり自己主張が強くなく、おとなしめで、真面目に自分の仕事をちゃんとする感じの人が多く、日本人とはある意味近いんじゃないかと思ったね。あちこちのお寺で見られた、敬虔な仏教徒としての姿は、平均的な日本人の無宗教とはだいぶ違うなぁとも感じたけども。
ちなみにこの根の間の仏像は、何でこんなことになったかというと、タイでは仏像の頭部に金や宝石を仕込んで故人を送る習慣があるため、侵略者や泥棒が、まず頭部を切り取って行く--そのため頭だけがない仏像があちこちにある--のだけど、そうして中身を取って頭部を捨てたところに後から木が生えて、くるみこんだ感じになっちゃったんだろうと言われてるそうで。
アユタヤでは最後に象に乗る。象の背中って厚い皮がフニュッってしてて、なんか靴で踏むのが申し訳ない感じなのね。あんなでかくて重そうなベンチを乗せて--どうやって固定してあるのかこれがけっこうグラグラ揺れるんだけど--、黙々と働く象さんたちの労働環境が、そんなことで急にはよくなりはしないとは思うけど、象使いのお兄さんに勧められたブレスレットも、よく観光地である写真を撮られて売りつけられるヤツも、みんな言い値で買ってあげた。
バンコクのホテルに戻ってきたのが6時過ぎ。汗をかいたのでシャワーを浴び、ホテルに隣接した「ターミナル21」というショッピングモールの5Fにあるフードコートで腹ごしらえをする。タイの食べ物は、大体ココナッツか、パクチーをはじめ香草のにおいがし、辛いものが多くて、ぼくは辛いのはまだしも、あとの2つはあまり得意ではない--カミさんは辛いのもだめ--ので、いい味なんだろうとはわかっても、残念ながらあまり好みではない。
だけどその中でもカオマンガイという、鶏ダシで炊いたタイ米に、鶏の蒸した切り身が乗ったやつは、ここで食べたけどなかなか美味だったな。このフードコートは、とにかく1品30バーツからせいぜい40バーツ(100~130円くらい)というリーズナブルなお値段で、2人で3品も食べれば我々には十分な量だから、これは安上がりだ。ファーストフードの割に味も悪くないし、地元の人も含めてかなり混雑していたけど、それもうなづける。
そして夜8時からは、ホテルの裏、歩いて5分ほどのところにある「ヘルスランド」という有名なマッサージ店で、タイ古式マッサージだ。こっちに来てみて、現地の方の英語がかなり聞き取りにくい--先方も日本人の英語は聞き取りにくいらしいけど--ことがわかったので、空港に迎えに来たガイドさんに予約しといてもらっといてよかったー。地上を歩いていくと、やはり街は暗くゴミゴミし、ドブ川の臭いがして、少し怖い。
2つの布団が敷かれた個室に案内され、入ってきたぼくの担当が、巨乳--はいいんだけど全体に大変ふくよかでいらっしゃるおばちゃんマッサージ師。正味のマッサージ時間は多分1時間50分くらいで、その間、足から手、腰、背中、首ととても丁寧にやってくれるんだけども、ま、確かに日本で旅館やホテルで頼むマッサージのやたら痛いのよりは、独特な動きもあって気持ちいいのよ。
だけどこのおばちゃん、すっごい怪力でしてですね。特にふくらはぎにしつこく行われる攻撃は、痛いッちゅーの!意外にもみ返しはあまり来なかったけども、これだとやっぱ、ぼくの積年の肩・首こり及び腰痛は、一掃というわけには行かないな。そりゃそうか。まぁこの「ヘルスランド」のような高級店でも、2時間近くで550バーツ(約1,700円くらい)と安いし、おばさんたちも一生懸命だったから、チップははずみましたけどね。
てことでまた1日分だけでかなり長くなっちまいました。前回ちょっと予告した「事件」の話はまたお預けでスミマセン。この連休中に3回目を書いて、それで完結編となる予定ですので、もうちょっとお待ちください。
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