このブログを始めて間もなく、「お気に入りの...」ってカテゴリを作って、ぼくの聴いてきた音楽遍歴を中心に書いていく、なんて言っといて、結局数回でうやむやになってしまったんだけど、そう言えば山下達郎のことをまとめて書いてなかったな、と思いましてね。
というのは、1ヶ月ほど前にふと、当時達郎と付き合っていた吉田美奈子のバラードの名曲、「時よ」を聴きたくなってね。これって達郎の最初のライブアルバム、今はなき六本木Pit Innでのライブを収録した「It's A Poppin' Time」に入ってるんだけど、そう言えばこのアルバム、カセットテープでしか持ってないな、ってことでAmazonで探してみたら、あれ?達郎ってもう1枚、「Joy」っていう2枚組のライブアルバム出してるんだ、ってうかつにも初めて知ってね。
おっとこれ聴いてないじゃん、ってことで両方発注。ここ1ヶ月、ランニングのお供は、ずっとこの2枚(CDでいうと4枚)のアルバムになっている。
達郎ファンはぼくの同世代では多いと思うけど、彼についてはぼくも、多分このブログで少なくとも5回分費やして書けることがあるくらいの、そこそこの達郎フリークだ。
一番最初の出会いは、多分高校2年の時、新聞部--にはぼくは所属してなかったんだけど、軽音楽サークルの隣の部室が新聞部で、不良サークル同士、両方に入っている人も多く、その部室は新聞を作ってない時には練習待ちの控室みたいになっていた--の女性の先輩に、「ナイフが光る ナイフが光る」「息もつかせず 奴を殺せる」とかって言う変わった歌詞の曲があるってのを聞いてね。
ちょっと興味をそそられて、多分当時の最新のアルバムだった「Moonglow」を買って、ハマりましてね。このアルバムには、当時ちょっとだけヒットした「Let's Kiss The Sun」が入っていて、この曲は後に社会人になってから、前の会社でやっていたバンドのメンバーの結婚式で、そのバンドのボーカルOが余興で歌ってあげたいというので、キーボードのIがピアノの生演奏を重ねるために、他のトラックをすべて耳コピして打ち込むという--ぼく自身は披露宴に出なかったのに--、初めての経験をした。
当時はPCではなく、KorgT3のシーケンサー機能を使って打ち込んだから、けっこう大変だったはず。しかもこの曲、アルバムでもドンカマ(テンポを一定に保つクリック音のことね)を使わずに一発録りしたのか、テンポがだんだん速くなるんで、それも含めてシミュレーションしたりした。T3のシーケンサーを使うってことは、当然楽器そのものも提供しなきゃならないので、わざわざ椿山荘まで、楽器貸与のためだけに行った記憶がある。
他にも「Funky Flushin'」という曲は、当時ブーランとかと組んでいた同学年バンド"たこ八珍"でコピーした。この曲はイントロがけっこうトリッキー--冒頭の16分音符3音がアウフタクトになっているのだけど、普通に聴くと1拍目が1拍前に聴こえる--で、合わすのに苦労したのを憶えている。
んでこの「Moonglow」は、「Ride On Time」(次のアルバム名も同じ)で達郎が大ブレークする前の、彼の4枚目のスタジオレコーディングアルバムなんだけども、そこまでに出していたのは3枚のアルバムと上記のライブアルバム「It's A Poppin' Time」。順番的には「It's A・・」はだいぶ後だったかもしれないけど、まずはその初期のアルバムたちを聴いていった。
当時はレコードレンタルショップが全盛の時代で、金のない高校時代のこと、1枚目の「Circus Town」と2枚目の「Spacy」はたぶんレンタルで借りてカセットに録音し、そして3枚目の「Go Ahead!」はレコードを買った。
この「Go Ahead!」はまーあポップなよくできたアルバムで、収録曲「Let's Dance Baby」が彼の初のシングルカット曲だったそうだけども、それよりなにより、B面頭の「Bomber」から「潮騒」「Paper Doll」と続く3曲、中でも後ろの2曲は、今だにぼくは達郎のすべての楽曲の中でベスト5に入る名曲だと思う。
でもこの初期3枚の中では、達郎がまだ売れてもいない低予算の中、趣味の一人作業で好きに作ったっぽい「Spacy」が、ぼくは今でも一番好きだ。全ての中でベストアルバムと言う意味では、「Ride On Time」の後に、思いっきり世間から期待されてる中で特大の場外ホームランをかっ飛ばした感のある「For You」がやっぱりNo1だと思うものの、もしかしたらこのアルバムはそれに次ぐかも知れないと思う。
A面頭の「Love Space」がメロディー的には最もキャッチーなんだけども、A面後半の「素敵な午後は」から「Dancer」までの3曲がいい--「Candy」のAメロっつーかサビ頭の、Cmaj7→F#aug-5(って名前になるんだと思う多分。普通絶対使わない超レアコード)っていうコード進行も、「Dancer」の最後のHornのリフもめっちゃカッコいい--し、B面の「アンブレラ」から「きぬずれ」の、4曲続く内省的というか自分の世界の奥に閉じこもった感じ(しかもいずれもじわっと来る曲なのよ)から、上で"変な歌詞"って書いた「Solid Slider」のJazzyかつSolidなリズムに一気に行く展開が素晴らしい。
「Solid Slider」はSnareが4拍目を16分の1食って、BassのSlap音が16分の1遅れて入るパターンがめちゃめちゃカッコいいんだけど、このポンタさんのドラムを聴いて以来、ぼくは多分ドラムスティックを村上"ポンタ"秀一モデルにして、それから今に至るまで使い続けている。だけどあの16分の1食いは、ぼくレベルではいくら練習してもノリを出すことができないんだよね。あれぞプロの技(ちなみに「Spacy」収録のスタジオ版のドラムは上原裕さん、「It's A Poppin' Time」ではこの曲も含めてポンタさんですね)。
ライブアルバム2枚のうち78年に発売された「It's A Poppin' Time」のドラムはポンタさん、そして11年後の89年に発売された「Joy」の方は、「Ride On Time」以降、達郎が初めて組んだ専属バンドのメンバーとして入った今は亡き青山"アレックス"純さん、ベースは伊藤広規さん。達郎自身が、「今度のドラムとベースがなかなかよくて」とラジオ番組で語ったアレックスの、まだ太ってなかった頃の若々しい演奏が聴けるのが嬉しい。
「Joy」は今回初めて聴いたけど、1つのライブの演奏を収録したのではなく、いろんな会場で演ったものを繋ぎ合わせて、ライブとして構成されていたかのように並べている。達郎らしく、過去のライブの中から納得できる演奏をこだわって集めたんだろう。アマチュアのぼくごときでも、気持ちはすごくわかる。
このアルバムでは、達郎中期の名曲「The War Song」と「蒼氓」を、アレンジを変えてソロパートなんかを増やし、10分以上の大作として演奏している。吉田美奈子を振って(かどうか正確には知りませんが)結婚した、竹内まりやの名曲「プラスティック・ラヴ」をカバーしているのも面白い。
ちなみに吉田美奈子が達郎と別れた直後に作ったと言われるアルバム「Monochrome」の1曲目、「Tornado」という曲は、暗さでは日本楽曲史上かなりの上位を争うと思われる重たい曲で、冒頭に普通のラジカセとかでは再生できないような多分50Hzくらいの低音ノイズが2秒くらい入っていたりする。これがもう、カセットテープ時代では録音できるダイナミックレンジぎりぎりの超低音だったため、友人(誰だか忘れちゃったけど)と、そんな音入ってないよ、いや入ってるよ、と言い争ったのを憶えている。中島みゆきの「うらみ・ます」のように直球じゃないだけに怖い。
うーん、こんな調子で書いてると、ブログ5回分くらいじゃ終わらないな。タイトルに「(初期)」って入れとこう。初期だけでも、まだ書き切れてない--「Circus Town」のことは全く書いてないし、「Let's Dance Baby」の2番の頭の「心臓に指鉄砲」のところでライブでみんなが鳴らすクラッカーの話も、これはもう少し後のことだけどその頃のぼくらをはじめかなり多くの学生バンドがいかに達郎に影響を受けたか、って話も書いていない--のだけど、既に長くなってるのでこの辺でやめときますね。
同世代にはこの話題、共感して頂ける方も多いのかな?また気が向いたらいずれ書くかも知れません。
来週はまた20度を超える日があるそうで、気温の変化が激しくなっております。花粉とともに、体調にはお気を付けくださいね。
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