このお盆休みは、大雨災害をついて、山形北部から秋田、青森へ日本海側を抜ける旅にやってきている。今は秋田北部にいて、ここまではほぼ交通規制等に引っ掛かることなく来れたんだけど、明日青森にスムーズに行けるのかは定かでない状況。ただ天気自体は今日の午後から快晴、明日までこれが続く模様で、これまでも傘を差すことになったのは1回だけ。近ごろ全体的には天気に恵まれない旅が多いのだけど、まぁまぁ日常の慎ましやかな行いを神様が見てくれてるってことかな。
11日は我が家の旅でもかつてないことに、朝4:45分に起きて、ちゃきちゃきと準備し、予定より10分早く5:25分の東上線に乗って、北朝霞~武蔵浦和と乗り換え、6:37分大宮発の山形新幹線、つばさ121号に乗った。この時間だと大宮駅のショップはコンビニくらいしか開いておらず、帰省ピーク日となったこの日は、レジに長蛇の列ができていたが、カミさんが並んで万世のカツサンドを買った。
山形新幹線って、東北新幹線と福島で別れた後は、在来線を走るし停車駅も多いので、普通の特急より遅いのね。日本の鉄道は基本的に「狭軌」と呼ばれる狭い幅の線路で、新幹線だけ「標準軌」のはずなのだけど、ここら辺の在来線は部分的に「標準軌」に合わせているようだ。とにかくよく停まる上に単線なので、新幹線のくせに行き違いのために待ったりする。福島まで1時間ほどで行くのに、そこから山形県内を抜けて北東部の新庄まで行くのにさらに2時間以上かかる。まぁその時間でトイレに籠ったりできたからいいんだけどね。
新庄駅のトヨタレンタカーで、1000ccクラスってことで「Roomy」という1ボックスの車を借り、まずは最上川ライン下りの船に乗るために、古口港船番所に向かう。この船が10:50発だったために超早朝の新幹線に乗ることになったのだけど、コロナ前までは定期便として運航していた11:50の便が、結局お盆ピークということで直前に調べたら復活していたので、なんだ、ならこんな早起きしなくてもよかったのに、ってことになったのだが、とりあえず9:55に着いた新庄駅から20分強かかるこの船番所まで、レンタカーの手続きをさっとして急いで行ったら出港10分前くらいに着くことができた。
最上川は先週、中上流域の氾濫があったが、この下流域は水量は多めで濁ってはいるものの、過去の最大水位からは今回は程遠いところまでしか達しなかったってことで、2日ほど運休しただけだった。この日もこの、宣伝文句によれば「プロが選ぶ全国の水上観光船1位」の簡易屋形船は、定時に30人ほどの客を乗せて出港した。
船頭さん1人と調子よい案内のおじさんが解説しつつ、3回ほど急流があるほかは基本的には安定した水流を1時間ほど下っていくのだけど、途中その急流とか、川から見えるいくつかの見事な滝とかがちょっとエキサイティングなほかは、案内のおじさんが地元の舟唄を歌ったり、まぁ普通の観光船だ。
到着した港から、バスで出発地点まで戻り、そばを食べて、次に向かったのは「幻想の森」だ。吉永小百合さんがJR「大人の休日倶楽部」かなんかのキャンペーンでTVCMをやって以来、森マニアとしては行ってみたいとずっと思っており、今回の旅の第2目的となっていたここは、国道から見落としても不思議はない看板1枚だけ掲示された細道を入り、轍深いダートを20分ほど走ると、車5台分ほどの小さな広場に着く。
途中行き違った車は1台しかなく、広場にも我々の車以外停まっておらず、お盆ピークでもこんなに注目度が低いんだと思いながら、ウッドチップが敷き詰められた歩きやすい遊歩道に入っていくと、植林ではない天然杉が中心で、ブナなど広葉樹も混ざった美しい森に囲まれる。
屋久杉を観てきた身としては、杉の大きさや太さ自体はそれほど驚かないが、根元から4本に分かれたり、複雑に曲がったりしている様子はなかなか見事だ。この森の外側には植林された杉林があり、この森自体は20分ほどで1週できるくらいの広さしかないが、心配していた天気が持って薄日もさしてくる中、見た目の美しさだけでなく香りも爽やかで、ここは来た甲斐があったな。
それから車で1時間ほど走り、修験道のメッカ出羽三山の1つ羽黒山へ。このころには気温も上がって蒸し暑い中、まずはふもとの駐車場に車を停め、国宝五重塔を観に行く。この道が最後には羽黒山頂に繋がっていると聞いていたので、てっきり登りの山道なのかと思ったら、この五重塔まではほぼずーっと下りの石段が続く。
20分ほどで到着した五重塔は、日本で6基しか残ってないという南北朝時代以前に建てられた木造の塔の中でも、芸術的価値が高い優美さで有名だといい、確かに細かい造作が全体的に見事に調和していて、素人目にも素晴らしいものに見える。しかも来年から2年かけて桧皮葺の修復のため一般公開を辞めるそうで、いいタイミングで来たなぁ。
ここから戻りの登りで汗だくになり、展示館のようなところで涼んだ後、今度は車に乗って羽黒山山頂に向かう。ここには月山、羽黒山、湯殿山の3つの神社を合わせた三神合祭殿があり、駐車場からは歩いて5分ほど--下から登ると2,446段の階段があるらしい--で行ける。これまた見事な藁ぶきの巨大な建物で、一部修復工事をしていたが、その立姿だけで神々しい。ここには二礼二拍一礼でお参りをする。
そして羽黒山を降り、そのすぐ横にある「休暇村庄内羽黒」がこの日の宿だ。それまで普通の風呂だったのが、4年ほど前にたまたま掘り当てたという温泉がよい。コロナ過敏のカミさんも結局、夕方着いた直後比較的空いていたので温泉に浸かってきた、建物自体はちょっと古くなりかけているが、しゃぶしゃぶにしてもらったメシは量が多すぎるが味は悪くはないし、まぁ70点くらいは着けられる宿じゃないかな?この近辺には修験者の宿坊以外は普通の宿はここしかないしね。
2日目は朝9時に宿を出て、今回の旅の第1の目的、そもそもこの地域に来ようと思った理由になった、月山弥陀ヶ原湿原に向かう。前日から天気が危ぶまれたが、予報では1mmの小雨。だが朝起きたら雨は降っていない。舗装はされているが途中からかなり細く、行き違いが困難な道を、うねうねと月山の8合目、標高約1,400mまで登っていく。
もともと月山には以前から興味があって、蔵王に行った時とか何度か足を運んでみようとも思っていたのがうまく旅程を組めず、その後もつらつら情報を集めているうちに、月山の北麓に「弥陀ヶ原湿原」という高層湿地があり、あまり有名ではないが、とても気持ちよさそうな場所だと知ってね。
ここ何年か、尾瀬に行き栂池自然園に行き霧ヶ峰の八島湿原に行き、森に続いて高層湿原マニアにも足を踏み入れつつある我々夫婦は、なにも山登ラーではないので、月山に登頂しようってのはちょっと違うよね、でもそういう穴場の湿原があるならぜひ行ってみたいよね、ってことで。
着いてみると濃霧に覆われていたが、とりあえず湿原の入口から右回りに歩きはじめる。途中雨が落ちてきて防水ヤッケを着たりしながら、一番奥の月山登山道と交差するあたりまで来ると、なんと、急に霧が晴れ、月山の山頂は雲がかかったままだが、それ以外は下界の景色も含め遠くまで見渡せ、時々陽が射すような天候になった。いやいや、ありがたや。
この湿原は、木道をぐるりと1週歩いても1時間ちょっとで回れるくらいで、それほど規模は大きくないのだが、美しい池塘が多く、ここと尾瀬にしかないというオゼコウホネや、この季節だとキンコウカなどの高山植物が豊富で、全体に灌木など中程度以上の高さの植物が少ないので、大変見通しがよく気持ちいい。
ここは来てよかったなぁ。ゆっくりと木道の枝道まで歩いて1時間半ほどで戻ってきたが、戻るころにはまた霧がかかって小雨が降り出していたので、ほんとにタイミングもよかった。
それから山を降り、途中月山高原牧場というところのヒマワリ畑に寄ったりしながら、酒田の街で昼飯にしたのだが、ここでこの旅はじめての豪雨に見舞われた。目星をつけていた食べログ高得点のラーメン屋は2軒とも長蛇の列が--雨にもかかわらず--できており、どんだけ食に対するモチベーションが高いんだろうと感心しつつ、これらは結局諦めて急遽調べた「洋風郷土料理レストラン巳之助」というところで食べたのだが、もう長くなってるので、これ以降の話は後日書きますね。
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