さて、久々に特にイベントごとのない週末だ。なのでこれまた久々になってしまった「ドラムのしくみ」シリーズの3回目、タムについて書いてみようと思う。
タムってのは、ドラムセットを観客位置側から見ると、バスドラの上に並んでいる、通常は右から左に次第に大きくなる太鼓のことで、多くの場合バスドラの上部に刺したスタンドに取り付けるものをタムタム、一番左のフロアに直接3本足で設置する一番大きいものをフロアタムという。
大きさはたいてい、タムタムが12インチと13インチ、フロアタムは16インチという取り合わせが普通で、ぼくのようにハイタムを使う人は10インチのものを使うケースが多い。最近はタムの数を絞る人も多く、フロアタムとタムタム1つだけ、というセットもよく見かける。
タムを構成するものでもっとも大事なのは、もちろん本体部分のシェルで、スネアの場合は金属のシェルもあるけど、タムはほぼ100%木でできている。材質はメープル(カエデ)、バーチ(カバノキ)、オーク(ナラ)などがあり、メープルを使う場合が一番多い。メープルの場合、丸くて暖かみのある音がすると言われているけれど、叩き比べるってことは店頭では難しいので、直接時間をかけて確認したことはない。
このシェルに、ヘッド(皮)を固定するためのフープ(リムとも言う)という輪っか状の金属と、この金属をシェルに固定するためのラグと呼ばれる金属、そして本体をスタンドなどに固定するための金属であるロッドクランプ、およそこれだけの単純な構成だ。
こんな単純な構成なのに、20年も経つと意外なところで進化する。
まず1つ目の進化はフープだ。フープは以前には、金属を叩いて延ばして成型したものが一般的だったのだけど、昔もありはしたんだけどスネアにしか使われていなかったダイカストフープというタイプが、最近の高級機種では一般化している。
これは、大きな金属の塊から目的の形に切り出して作るもので、当然剛性が高くなる。四角ボルトでラグに固定する際、ラグはたいてい6個(フロアタムなど大口径のものは8個)しかなく、そこだけを締めると、ラグのある部分とない部分で締め方にムラができることになるんだけど、剛性が高いってことは、このムラが少なくなるってことで、そのためヘッドの震動がシェルに伝わる時に均一に伝わるため、鳴りがよくなることになる。この効果はけっこう素人が聴き比べてもわかるくらい大きい。
ちなみにスネアのフープが先にダイカスト化したのは、スネアの場合スティックの一端をヘッドにつけて、サイドスティックでフープを「カッ」「カッ」って叩く奏法があるじゃないですか。バラードのAメロとかでよく使われる。あれが、ダイカストフープでやると歴然といい音になるので、ってことだと推測される。ぼくも昔、スネアだけは当時別売りだったダイカストフープを、14,000円だか出して買った記憶がある。
2つ目の進化はラグだ。以前のラグはシェルに固定されていて、固定された上部にあるネジ穴に、4角ボルトをねじ込むタイプだった。それが今は、シェルには最低限の大きさの突起だけがついていて、そこに4角ボルト側と一体化したラグを引っ掛ける形になっている。
これは、1つにはシェルを押さえる面積を少なくし、またシェルにネジ穴を開ける箇所を少なくすることで、鳴りのよさを狙っているんだけど、その違いは素人にはほとんどわからない。それより、これは利便性に大きくモノを言う進化なのです。というのは、ヘッドを交換する時に、以前は6本の四角ボルトを完全に緩めて抜き、フープをはずさないとできなかったのが、少し緩めれば、フープと6組の四角ボルト、ラグがつながったままの状態で取り外すことができるため、とても楽になった訳ですよ。
そして3つ目の進化はロッドクランプだ。以前のクランプは本体に4隅をネジ止めし、センターに開いた穴--つまり必然的にシェルにも穴を開けて--そこにスタンドから伸びたロッドを通してネジで固定する形だった。
これが今は、クランプをシェルから浮かした形で2本のネジで固定し、本体には穴を開けることなく、少し短くしたロッドを締めて固定する。シェルへの接触面積が減ったのと、穴がなくなったことで、鳴りがよくなるはずということだ。もっともこの差も、ちゃんと聞き比べたわけじゃないけど、ほとんどわからないと思うけどね。ていうのと、タムの安定性とのトレードオフなので、異論もあるはず。まあでも実際使ってみると、安定性という意味ではそれほど問題ないと思いますが。
ということでほとんどハードの違いではあるけど、少しずつでも進化してるんだよね。ただしこれらの微妙な違いによる差よりも、チューニングの腕の方が、出音には大きく影響することは言うまでもない。チューニングっていうのはもちろん、表裏のヘッドを、それぞれ6本ずつの四角ボルトで締めることで、均等に締めるだけでも結構難しいのに、表側と裏側の関係とか、一部のボルトを緩くすることでアタックと残響の音程に変化を出したりとか、すごく奥が深い。
でもそれを語るのはぼくごときではあまりにおこがましく、同業者が読むと思うと恥ずかしくてとても無理なので、書かないことにします。
関係ないけど、うちの息子は昨日から今日にかけて、大学の年中行事で、埼玉北部の本庄から東京までの学校の施設を距離にして100Km、侍のかっこうをして渡り歩いているらしい。いやいや、若いって懐かしいね。うらやましい。寒かったから風邪ひいてないといいけど。
おお、それは「本庄早稲田100キロハイク」つーやつだな。俺の院生時代ぐらいに始まったんだよ、たしか。
それはともあれ、最新のクランプは、なんだかチト頼りない感じ?シェルに穴を開けないクランプは、かなり早い時期からTAMAだけは採用していたと思うが。(社会派ドラマーより)
投稿情報: みのりん | 2008/05/12 08:52
あ、ぼくらが現役のころにはまだなかった行事なのか。なるほど。
息子は昨日の夕方東村山にいると連絡があったきりだが、無事なのだろうか...?
あ、そうなの。TAMAは採用してたんだ。知らなかった。そうね。でも確か、駒沢NOAHの2FのスタジオのPearlのドラムセットもそうだった気がするけど、一応安定しては使えていたけどね。
投稿情報: Tacovo | 2008/05/12 11:22
タム類のダイカストフープって音に集約感あって好きです。特に狭い部屋とかだとうるさすぎなくっていいですね。
別売りのダイカストフープって高すぎません?って私も昔買いました。(笑)
投稿情報: 博士 | 2008/05/15 01:08
集約感!ですか。難しい言葉を使いますね。変な周波数の音が出ないってことかな?音の濁りがなくなるみたいな?とするとなんとなくわかります。
別売り、高かったです。今はどうか知らないけど。っていうか今はほとんどみんな元々ダイカストフープだから、別売りなんて買うことないのかな?
投稿情報: Tacovo | 2008/05/15 01:26