何でもそうだけど、主として目的とすることに要する時間って実は大したことなくて、そこまでしなくていいのに、っていう「際(きわ)」の処理に、モノにもよるけど7割ほどの時間がかかっている。
例えば床屋さん。頭頂部近くの髪を刈るのは、人差し指と中指の間に挟んだ髪を、鋏で同じ長さに切りそろえていくのだけど、それにかかる時間は、わずか5分くらいだ。一方、襟足とか耳の周りとか、髪の先をバリカンで刈ったりとかもみ上げを剃ったりとか、洗髪の時間は除いたとしても、多くの時間を「際」にかけている。美容院でもそうだよね。
ドラムと言う楽器も、「際」楽器の最たるものだ。ギターとかキーボードだと、たいていの曲にソロがあって、ボーカルのバッキングとかより、そのソロで目立つことがメインだ。だけどドラムは、とにかくリズムキープがメインだ。まれにソロがあることもあるけど、多くの楽曲では何より増してAメロにしろサビにしろ、リズムを保ってノリを出すこと、それができないと存在意義のない、そういう意味ではメイン時間の長い、サボれない楽器だ。
そんな中でも、どう叩くか考える時、あるいは練習するにしろ、一番時間をかけるのがオカズだ。AメロからBメロに、Bメロからサビに行く最後の小節で、ダカドコタカトン、って入るやつね。そのカッコよさはもちろんドラマーの目立てる数少ないポイントなんだけども、やっぱりこれは「際」だ。あくまでもメインはリズムキープ。オカズではなく、通常のパターンだ。
会社でレターを作成する時だって、床屋さんの時間配分よりは「際」時間は少ないとは言え、同様だ。メインの文章や図面を作る時間と同じくらいを、見た目の体裁を整えたりとか、言い回しを工夫したりとか、これはメインなのか際なのかって言うのは微妙だけど、あまり各論のわかっていない役員の皆さんにわかるように順序だてて語っていくことに、かけている。
WordでもExcelでも、そのスキルが活きるのは、メインよりもそういう「際」だ。PCソフトのスキルがいくら高くても、メインを語る内容が乏しければ何の意味もない。PCスキルの高い人が、必ずしも会社でキーマンになれない、またその逆も真なのは、そういうわけだ。読み書き能力がいくら高くても、それだけでは偉くはなれない。
そして「際」にこだわる人は、多くの場合小市民だ。細かなことを口うるさく言う人は、もちろん中にはそういう社長とか役員もいるけれども、どうしても人間が小さく見える。「際」なんかにこだわらず、自分の進む道は自分で切り開く、細かいことは子分にまかせて、強引に物事を進めていける人。そういう人が大物であり、リスクもあるかもしれないけど大きな何かをゲットできる。一代で身代を築くような人は、ほとんどがそうじゃないかと思う。
だけどそれでも、どうでもよいとは言わないけど、あくまでも添え物であるそういう「際」に、ぼくはこだわっちゃうなぁ。小市民結構、小物上等だ。そういうこだわりに、必ずしも時間をかけようと思っているわけじゃないのだけど、だからテンプレートを工夫したりマクロ組んだりするんだけど、そういう工夫をしようという性向がそもそも小市民的だよね。
「際」をいかに美しく仕上げるか。「際」を整える時間を含めても、他の人がメインを作るのと大差ない時間で収めるか。それがぼくの美学なのよね。つまんない美学だけども。もうそれで48年も生きてきてしまったのだから仕方ない。もういいの。ぼくはプロの小市民になるのだ。ハッハッハ。
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さて今日は、ぼくに似て、カミさんよりはずっと小物に生まれついてしまった娘が、部屋を白で統一したい、小学校の時以来使ってきた木の色のデスクを買い換えて欲しい、というので、ドラムの練習時間を2時間ほど犠牲にして、ニトリへ買い物に行った。
机と椅子、ローラーつきのチェストと、買い替えのきっかけになった、今回バキッと折れてしまった作り付けのスタンド--こいつはニトリにあったのがタッチスイッチがどうにもうまく動作しないので、向かいにあるコジマで買ったんだけど--を、すべて白一色でそろえて買って、〆て約23,000円。まぁ安いもんですわ。ニトリオリジナルの、多分東南アジア製なのでね。
と言う訳で来週はこの組立てと設置、今の古いデスクの処分に汗を流さないといかん。娘本人は学園祭で不在だと言う。仕方ない。やってやるか。
そういう、父親に全部やらせて平然とできるところは、とは言え大物の要素ありだな、ヤツは。
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