政府の電力需給緊急対策本部が、今夏の電力需給対策として東京電力、東北電力の管内全域で電力使用量の削減目標を一律で15%削減にすることを決めた、というニュースが、昨日流れた。
いくつかのニュースサイトを見てみたけど、この「15%」が、"昨年のピーク時の最大消費電力の"15%削減であることを、書いていない記事もけっこうあることにびっくりする。しかも、東電管内のその"昨年のピーク時の最大消費電力"が6,000万KWであったことを書いてある記事はほとんどない。つまり6,000万×(100%-15%)=5,100万KWを、ピーク時間帯と言われる14時前後に達成できればよいと言うことが、ちゃんと認識できている人はどのくらいいるのだろうか。
一方で、この夏の東電の電力供給可能量は、7月末で5,520万Kw、8月末で5,620万KWと言われており、通常の夏であればピーク時の電力消費量は5,500万Kw、なので今年が去年のような猛暑にならなければ、一応電力量は足りていると言うことになる。と言う事実はどうだろう?
無論だからと言って、何もしなくても大丈夫じゃん、ということではない。政府の設定した目標、15%削減と言うこと自体は、ぼくは妥当だと思う。だけどこの目標を達成するために、家庭で、また会社で、具体的にどういう対策を行えばよいのか、真剣に考えてみた人は、どのくらいいるのだろう?
真剣に考えるっていうのは、LED電球にすれば、あるいは冷房温度を1度上げれば、といった、さんざん言われている節電対策のことだけではない。そういうことならみんなそれなりに考えているだろう。
そうじゃなくて、闇雲に節電すると言うことではなく、1日の中でピークの、まさにその時間帯に、15%の削減を実現するという目標を達成するために、具体的にどのような運用をすればよいか、ということだ。営業目標のように、その達成手段をリアルに想定してみましたか?という。
電気と言うのは基本的に貯めておくことができない。電池の技術は進歩してきているとは言え、家庭用燃料電池レベルではかなりの数を集めないと、1,000万Kw単位の蓄電はできないし、そもそもわずか3ヵ月後のこの夏に向けて、燃料電池が一気に普及すると言うことはあり得ない。
つまり作った電気は消費しなければ余るだけだと言うことだ。闇雲に常時15%削減を目指すと言うのは、対策としては間違っていないものの、too muchだと言うことだ。
もちろんみんなが、自分ひとりがんばらなくたって大丈夫でしょ、っていう無責任を積み重ねたらダメだけども、経済活動を停滞あるいは減速させない範囲で、使うべきものは使うってのが正しいはず。そのために、どういう運用をすればよいか、ちゃんと考えてみませんか?
ぼく自身、会社の総務と言う立場で、この問題はまさに最重要課題の1つだ。だけどテナントビルの入居者であり、また工場やデータセンターを持っているわけではない、基本的にオフィスのみのウチのような会社の場合、どうすればよいのか。
冒頭のグラフは、昨年の猛暑時よりも同じかそれ以上の電力消費があったと言われる2007年の、中でもピークだった8月22日の消費実績を表したグラフだ。当日の気温は37度、しかも暑い時間帯が長く続いたようで、14時が一応ピークだけども、10時台から16時台まで、ずっと6,000万Kw前後の状態が続いている。
これを見る限り、今言われている1時間早く出社する"自主サマータイム"が、どれほど効果があるかはかなり疑問だ。ピークの14時台のうちの一部が、1時間早く動いてる会社の場合15時台にあたるところにシフトすると言うことなんだろうけども、15時台だって6,000万Kwを越えていることに変わりはないじゃん?
実はこの2ヶ月、社内の階を行き来する場合はエレベータは使わないとか、照明は昼間は極力消すとか、常時ついているものは間引くとか、そういう対策で、4月は対前年、電力量で言うと40%以上の削減を達成できた。もちろん過ごしやすい季節なので、エアコンを使わなくても大したガマンはしなくていいというのがあるのだけど、エアコンとそれ以外という区分けで消費電力を分析してみると、このエアコン以外の削減を同レベルで実現できれば、昨年8月のエアコンの消費電力実績を上乗せしても、15%削減なんてできるじゃん、という数字になっている。
もちろん昨年夏も、節電のためエアコンは28度まで、等のお願いはしていた。まあでも、南側の窓際とか密室の会議室とかは暑くなるので、場所によっては26度とか25度とか、そういう設定もしていた。それが乗っても大丈夫だということだ。
となると、ガマンせずにエアコンを使って、生産性を上げるほうがよほどいい。そして、ピークを迎える前の例えば11時台に、このまま行くとトレンド的にヤバそうだとなったら、ビル管理側から警告を出してもらって、それを受けて設定温度を29度にするとか、って言う方がいいでしょ?
ところがどこもそうかも知れないけど、こんなシンプルな理屈が、ビル管理のおじさんたちには理解できないんだよね。リアルタイムの監視や警告をしてもあまり意味がないとか、わけのわからんことをほざきやがる。8月1ヶ月終わってみて、ああ、結局達成できてましたね、なのかできてませんでしたねなのか知らんが、そんなことが後からわかっても何の意味もないじゃんねぇ。
つい珍しく仕事に近い話をずらずらと書いてしまった。それだけ深く考えていない方が多いと感じるからだ。
もちろんベースとしての節電対策があるからできる話しで、これってその一歩先のことを言っているのかもしれないけども、だからマスコミとかもそのベースの節電対策ばかりにスポット当てるのかもしれないけど、特に会社の節電を考える時は、その一歩先の運用をどうするかがすっごい大事なんじゃん?
おじさんたち、もうちょっと頭使って、実効のある節電対策にご協力いただけませんか?
コメント