相変わらずいい天気だった5日は、一応決めていた行先はあまりぼく自身気乗りがしていなかったところへ、娘が珍しく、宿のロビーに置いてあったパンフを持ってきて「ここに行きたい」と言う。
そう、我が家の旅の計画は、すべてぼくが立てていて、他の3人は見事に何もしない。当日朝まで行き先を知らないなんて当たり前だ。なにしろ地理音痴だから、寸又峡だ身延山と言ったところで、どこだかわからない。静岡県だと言うとああ、あの横に長いやつ、くらいの感覚で、静岡に峡谷があるなんて想像もつかないらしい。連れて行き甲斐ないこと甚だしい。
その代わり行き先や、行き先での企画に文句を言うことはあまりなく、標高差700m以上の山下りだろうと、1時間強かけて景色の良いところに登ろうと、それなりに楽しんでいる模様なので、それはそれでいいんだけどね。息子なんか多分、だってお父さんが企画立てたりしたいから旅行行くんでしょ?くらいは思っているはずだ。基本的に多少面白さがあるとはわかっていても、進んで面倒なことはしない人たちで、自分で立てた企画以外の旅は、記憶に残らないんだよね、なんて簡単に言ってのけやがる。
そんななので、あらまお前、珍しいこともあるもんだね、ってことなんだけども、それがまた、酒井敦美さんと言うアーティストの、「光の切り絵展」っていう、「富士川・切り絵の森美術館」ってとこで行われる展示展で、確かになかなか面白そうだ。
下部ホテルをチェックアウトし--これまたぼくだけはとっくに荷造りして、10時のチェックアウトに間に合うように手続きし、ちょっと遠くに停めた車を玄関前に移動し、自分の荷物を積み、鳥のフンで汚れた車を拭き、再度その展示展のフライヤーに見入っていた、かれこれ20分は経った頃に、やっとエレベーターから3人でわいわい言いながらモタモタと降りてくるみたいな、俺はお前らのシモベか(下部温泉だけに)って状況なんだけども--、車で7分と言うその美術館に向かう。
行ってみると、この美術館は「富士川クラフトパーク」と言う施設の中にあり、この施設がまた、吊り橋やら、プールやら、巨大ビニールトランポリンその他もろもろの遊具が設置された広場やら、花の迷路やら噴水の水場やら、ものすごく広い敷地内に子供の喜びそうなありとあらゆるものが揃った、地元民の憩いの場みたいなところで、前日の芝桜祭りに勝るとも劣らない数の車が、駐車場に停めるのに列をなしている。でもほとんどが山梨ナンバー、ちょっとだけ富士山ナンバー、他はほぼいないってのが、前日とは違う。すっごい奥深くまで誘導されてやっと車を停め、そこから歩いて10分弱の切り絵の森美術館に行く。
酒井敦美さんと言う人は、この「光の切り絵」という手法を世界で唯一やっているらしい。どうやってるのかよくわからないんだけど、普通に表から光が当たったときと、裏からライトを当てた時で絵が切り替わるという、面白い表現の切り絵で、例えば母と娘が縁側に座っている絵が、それから数十年後と思しき老婆と女性の後姿に変わったりとか、天に向かってメッセージを示す女の子の絵が、そのメッセージが「ありがとう」であることがわかる天からの視点に切り替わったりとか、いろんな仕掛けが楽しい。
絵にスポットライトで自分の影を映し、自分が絵の構成要素になる、といった仕掛けもある。この展示展は、車の列に並び、入場料払って観に来た価値があったな。美術館の外に出ると暑くて、今季初のかき氷食べたりした。
この時点でもう12時になっていたが、それから「本栖みち」を登っていく。息子がお父さんの運転じゃ気持ち悪くなると生意気なことを言って、自分でハンドルを握る。本栖みちの頂上、中ノ倉峠をトンネルで抜け、本栖湖が見えたところが中ノ倉展望台で、ここからの富士山の眺望は、今の千円札の裏面の逆さ富士の絵の元になっているという。
ここでしばらく景色を眺め、西湖のほとりのレストランで昼食。ホントは「マ・メゾン」--我々が学生のころからここに西湖店ってのがあり、いろいろと思い出深い場所。今も変わらず営業している--で食べたかったんだけど、ランチタイムの2時を微妙に過ぎてしまいアウトだった。
それから河口湖駅に向かい、6日が仕事だという息子と娘を、16:14分発の臨時列車、快速富士芝桜号新宿行きに乗せる。カミさんとぼくはこれからライブだからね。娘には「強制送還」と言われたけど、この指定席だって取るの結構大変だったんだぞ。本数少ないからね。富士近辺へ行くには自家用車じゃなければバスなんだろうけど、こんな日にバスで帰ったら何時間かかるかわからないのでね。
そしていよいよこの旅のクライマックス、MISIAの「星空のライヴⅨ」の会場である河口湖ステラシアターに向かう。ここはこの、打ち込みとかを使わない生演奏がコンセプトの「星空のライヴ」の1回目を、15年前に行った会場だそうで、前に「Ⅲ」を観に行った「山中湖シアターひびき」と比べると、どちらもステージ後方に富士山を借景にしてるのは同じでも、こちらはすり鉢状で縦に深い構造になっていて、キャパはより小さい3,000人ほどなので、席は2Fほぼ正面の後ろから2番目だったけど、ステージ上はまぁまぁ見える。
今回の「Ⅸ」は、過去のこのライブの演奏をセレクトした2枚組CDを3月に発売したのを受けて、「限定プレミアムライヴ」と銘打ち、追加公演が決まったようだけど、当初はこの3連休の3日間のみ行う予定だったようだ。今回は録画・録音は一切行ってないらしい。
んで何がプレミアムかと言うと、ってMISIA自身がMCで説明してたんだけど、バンドメンバーが一部復活も含めて結構変わったのと--亡くなった青山純さんの後を受けてドラムを担当していたFuyuさんも含め、リズム隊が変わって、ドラムはTomo Kannoさんという人になっていた--、3日間のセットリストが全部違うということ。
セットリストが違うって言っても、単に曲順が、ってことじゃなく、3日、4日の公演のセットリストもネットに上がってたので見比べてみたけど、一部予定外(と思われる)にアンコールでやった曲を除くと、1ライブ17~20曲が、ラストの「The Glory Day」以外は全部違う曲。1曲だけ出だしの歌詞を間違えてやり直した時に、言い訳だと言いながら、今回60曲もリハをやったって言ってたけど、いやぁ驚異的なことですよそれって。さすがプロ。それで3回ものライブが成立するクォリティの持ち曲数も含めて、とにかくすげぇ。
んでまたその「The Glory Day」って曲が、私、大好物でして。日本のミュージシャンがかつて演奏した中で最高のゴスペルだと思うですよ。You Tubeに上がってるのはだいぶ古いバージョンのようですが、よかったら聞いてみてくださいね。
MISIA本人も盛り上がって、予定外のアンコールを重ねた素敵なライブを堪能した後は、臨時の駐車場になった野球場からも、予想よりは早く15分くらいで脱出でき、ファミレスで飯を食ってから富士吉田市内のビジネスホテル「ホテル富士竜が丘」に向かう。ここは露天だけだけど温泉もあり、朝食付きで@6,250円と言うリーズナブルなお値段。
そしてこのGWの旅の最終日となった昨日は、車で山中湖に向かう。貸自転車を借り、山中湖一周にチャレンジだ。山中湖は、富士五湖の中で一番大きいけど、周回サイクリングコースが整備されており、1周14kmほどで、ゆっくりでも2時間ほどで回れる。起伏が少なく大変走りやすい。
この日は曇っていたけども午前中までは富士山がよく見え、特にあまり開けていない湖の北岸側からは、湖越しに見える富士山が見事だ。マウンテンバイクの細いサドルで、尻が痛くなるのにはまいったけどね。途中、前回MISIAのライブが行われた「山中湖シアターひびき」にも寄ってみたけど、意外に狭く感じて、ステージに上がって最後列の位置に立つカミさんの顔の大きさを確認したりした。やっぱステラシアターよりは遠かったな。
それからラーメンで腹ごしらえし、「花の都公園」というところに行く。チューリップはじめいろんな花がいっぱい咲いていてなかなかきれいで、滝やら遊具やらを備えた場所なんだけど、まぁそんなに際立った何かがあるわけではない。でも午後になって富士山も隠れ小雨も振り出す中、カミさんが、この公園の各所に置かれたクイズに答えていき、全部正解すると9文字の言葉ができるって企画に妙に燃えてしまい、結構時間がかかって、ポピーの種をゲット。
それから「紅富士の湯」という去年リニュアルした立ち寄り温泉に行き、いい感じに温度管理された湯船に浸かって、4時半ごろに帰路につく。さすがに平日は渋滞もほとんどなく、2時間もかからずに自宅そばまで帰ってきて、和食系の宿に泊まった時の常でチーズ系のものが食べたくなり、モダンパスタでピザ食べ放題をオーダーした。
あーあ、帰ってきちゃった。でも今年のGWは、最後の6日の午後以外はおおむねいい天気で、気持ちよかったなぁ。緑と音楽に囲まれた、なかなか素敵な合計5泊7日になりました。
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