今年の夏はぼくは長いお休みをもらったのだけど、スケジュール調整の結果、旅は14日から2泊と言うことになった。ホントはもう1泊遅ければ、お盆料金を避けられたのだけど、仕事大好きのカミさんが、水曜からは働くと言うのでね。新社会人の娘はもう最初から来られないとわかっていたのだけど、息子は1週間前に行けるということになって、今回は娘が中学校の入試を控えた夏、塾の合宿で参加できなかった11年前以来の、息子と3人と言うメンバー構成だ。
行き先は、夏場は基本高地なのだけど、あまり深くは考えず、久々に白馬近辺にするか、そう言えば栂池自然園ってずっと前に行って以来でよく覚えてないし、また行くのもいいな、というので、往年に比べればだいぶさびれた感じになった栂池スキー場のゲレンデ沿いの、じゃらんで口コミ平均4.7点という高得点だった、ベルグハウスという宿を取った。
白馬は、伊豆や富士、スキーで言うと家族で行くようになってからホームグラウンドにしていた尾瀬岩鞍なんかに比べると、もちろん少し縁遠くはあるけども、学生の頃からこの近辺には何度か来ている。
最初かどうかは忘れたけど、一番長く滞在したのは、当時「五竜とおみ」という名前だった白馬五竜スキー場で、バンドサークル「音感」の同期連中と、医大生だと偽って1週間ほど泊まりで、スキーセンター--とは名ばかりの掘立小屋--の保健室で、たまーにケガして来るスキー客にバンドエイドとかを貼ってやり、交代で滑りまくるという、バイト代は汚い従業員部屋への宿泊代だけだったけども、スキーの練習には最適なバイトをした時だ。
その後学生から社会人初期にかけて、八方尾根、岩岳、栂池に各1回ずつくらいは来たのかな。子供が生まれてからは、スキーには来てないけど、夏にカミさんの両親の実家があった福井に行くときに、長野道がまだ全通してない当時は通り道にもなる位置でもあったので、何度か途中に寄った。
最後に寄ったのは多分、息子が中2で自分の人生の先行きに悩み、悶々としていた時期で、八方尾根のリフトの頂上から八方池と言う絶景の池まで、説教し続けケツを叩きながら登ったのを覚えている。奴の人生で、今となっては本人も恥入る、最も情けない一頃で、まぁあの時のヘタレさ加減から、よく立ち直って生意気に掃除機の設計エンジニアなんかやってるなぁと、今にして思うとなかなかに感慨深い。
今回は仕事を切り上げて、前日のうちに帰ってきた息子だったのに、深夜までオリンピックを観てたもんだから、結局出発も遅れ、さらに息子の靴だのキャップだのを買いにロヂャースに寄ったりしたので、予定より1時間半ほど遅く10時ごろに関越に乗った。14日にはもう帰省ラッシュは終わっているはずだったのに、それでも寄居辺りまで結構な混雑で、上信越道を長野インターで降り、いわゆるオリンピック道路を走って、夏場はゴンドラの上で高山植物園を営業している、懐かしの白馬五竜に着いたのは、1時半ごろだった。
スキー場はスキー自体も商売としては厳しくなってることもあって、こうして夏向けに植物園とかゆり園とか作って、少しでもゴンドラとかの設備投資を回収しようと必死だよね。この白馬五竜も、割合最近だと思うんだけど、スキーセンターとかをリニュアルしたときに、この植物園をオープンしたらしい。ゴンドラを登ると結構な景色で、8月だからここの売りらしいコマクサもニッコウキスゲも終わってたけど、シモツケソウのピンクの花はまだ少し残っていて、なかなかに可憐だ。
でも懐かしの、と言いながら、当時スキー練習しまくったそのゲレンデがどこだったか、結構特徴的なすり鉢型のレイアウトだったと思うんだけど、わかんなかったんだよね。もう25年前の話だからなぁ。
今回の宿ベルグハウスは、元古いスキーロッジだったのを、内装を中心に2年ほど前に改装してキングサイズベッドを備えた和洋室中心にし、食事を和洋折衷のフルコースにし、運搬式だけど温泉にし、星や早朝のアルプスの絶景を観るツアーを毎晩運行し、というような経営努力を重ねて、各旅行サイトの口コミ高得点を獲得した宿だ。
実際に泊まってみると、外壁は以前のままだったり、ウォシュレットにはしてあるけど便器は昔のままの小さくて古いタイプだったり、風呂の内壁はけっこう安っぽいプラスチックの板張りだったり、つっこみどころはそこそこあるんだけど、お盆料金でも宿泊客はほぼ満杯で、オーナーのそのツアーの時の星の説明だったり、接客レベルの高さだったりが、なかなかすがすがしい。
宿泊プランも多様で、栂池自然園向けには、ゴンドラ料金とか入園料とか、お弁当も用意してくれて割引になるプランなんかがあったりする。2日目にはこのプランを利用して、栂池自然園に行ってきた。
この自然園は、白馬五竜の人口植物園とかとは違って、スキー場が先だったのかこっちが先だったのかは知らないけど、冬場はゲレンデになる場所の流用とかって言うのではなく、標高2,000m前後の高地にあり、中部山岳国立公園第1種特別地域に指定されて、学術的にも価値のある日本有数の高層湿原だ。自然を壊さないように、きちっとメンテナンスもされている木道が、合計5.5kmにわたって整備されている。
1日目の夜から雲が多く出てきて、宿の「星空観察スターウォッチングツアー」ではほとんど星を観ることができなかったのだけど、この日もゴンドラの下は降ってなかったのが、ゴンドラからロープウェイに乗り継ぐあたりで降りだし、自然園の入り口付近まで行くと、かなり本降りになってきてしまった。
防水スーツを着、途中降りが激しくなると傘もさして、木道を歩いていく。池塘や浮島は美しいが、本来なら観えるはずの北アルプス白馬三山の威容はほぼ見えない。時折深い霧にも囲まれる。木道は歩きやすいが、ところどころ木道が途切れ山道になる場所ではけっこう高低があり、なかなか息が切れる。
一番奥の展望湿原からの帰り道には雨はほぼ上がったけど、自然園入口の山荘まで戻ってみると、防水スーツもその下の長袖シャツも肩からびしょ濡れで、高地だけに気温も低いから冷えてきて、トイレで着替えたりした。下りのゴンドラで降りてきて4時前に宿に帰り着くと、すぐに温泉に浸かって暖まる。
3日目は、カミさんと2人ならやめておこうかと言ってたんだけど、息子が来ることになって急遽予約した、最近はやりの樹上フィールドアスレチック、「コルチナアドベンチャーランド」に行く。ぼくは樹上のアスレチックは初めてだったんだけど、1周1時間ちょっとくらいのこのコースは、かなり体も使うし、なかなかスリリングで面白い。
途中4回地上に降りるジップライナー--ローラーでロープにぶら下がって地面に降りるやつ--では、体が回転するのを制御できず、息子とカミさんはウッドチップを盛り上げた着地点に背中から落ちて、シートがかなり汚れることになった。
それから車で白馬のメインの国道148号線を挟んで反対側に40分ほど走ったところにある、日本百名山雨飾山の登山口にある神秘の池、「鎌池」に向かう。ここは周りをブナを初めとする広葉樹林に囲まれて 、秋は紅葉の名所と言われる静かな場所だが、この季節も緑が美しく、林の中のハイキング道を1周約2km、40分で回れる。
池のそばにある「ブナ林亭」という小屋でそばを食べ、周回コースを歩いていくと、この日は天気予報とは裏腹に、この3日間で--北アルプスは相変わらずほとんどが雲に隠れているものの(この3日目朝の宿からの写真が、ギリギリ最も見えた瞬間)--一番のピーカンの青空、強烈な日差し、そして広葉樹林と、 「陽の当たる葉の裏写真家」の血が騒ぐこの旅初のシチュエーションに、シャッターを切りまくる。
帰りは白馬八方尾根スキー場まで戻り、「みみずくの湯」という立ち寄り温泉に浸かって、ちょっとした渋滞にははまったものの、8時過ぎには所沢インターに着いて、息子がいると行く回転寿司を食べて帰ってきた。
2日目の雨がちょっと残念だったけども、やっぱ夏は高原の緑が嬉しいね。今年も心の洗濯ができました。
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