先週順延した社会テーマの2つ目は、環境省が10月19日に法制化に向けて素案を示した、プラスチック素材のレジ袋有料化義務付けの件だ。調べてみるとなんかまた、ヨーロッパの趨勢に押されて、大して効果ないことやろうとしてんじゃないの?って話に見えてきたんで、ちょいと書いておくかと。
なんかこういう、「元を断っちまえば捨てようもないだろう」っていう、国民の民度をなめたやり方がカチンと来るんだよね。まぁ確かにこのニュースが出た後、真っ先に反応したのはコンビニ店員たちでね。レジ袋要りますか?なんて言ったら逆ギレする客は多分多数いるし、そもそもスーパーみたいにセルフで袋詰してもらうわけじゃなく、レジ打ちしながら袋に入れていくのが普通なのに、そこんとこどうすんのよ、っていうね。
そういう馬鹿な客が多い限り、そういう発想も出てきても仕方ないのかもしれないし、世界ではプラスチック袋の使用を禁止しているフランス・インド・中国を始め、オランダやインドネシアなど有料化している国は多くある。また国内でも既にチェーンによってはレジ袋有料にしたり、要らないと言えば2円引きとかにしてくれる店は増えてきている。
これらの国々では、実際に40%~80%くらいレジ袋使用量が減ったと言われ、また国内で2005年前後に始まった有料化の動きによって、今ではスーパーで買い物する人は、60%がエコバッグを持っていっているという数字もあるようだ。
そういう動きにつながっていること自体は素晴らしいと思うが、民間企業がそういう姿勢を打ち出して、それに協力するかどうかは消費者の自由、というならまだしも、そういう多くの「言えばわかる」人たちに向けて、国が法律で義務化したりするのって、なんか違う気がするんですよね。そうする前に、ちゃんと広報なり啓蒙なりってことをやるべきだし、そもそもそれが環境汚染防止に対して効果があるということは、科学的に証明できてるの?っていうね。
大体、コンビニやスーパーならレジ袋も多くても3つくらいだからいいけど、ぼくみたいに2週に1度ディスカウントショップに買い出しに行くような場合は、多いときは冒頭の写真のような状況になるわけで、レジ袋は悪なのよと言われると、この量が入るエコバッグを持ってけってこと?と途方に暮れる。
あと日常のゴミ捨てのために、レジ袋をゴミ箱の中に張って、袋ごと捨ててる家庭が多いと思うんだけど、これを無くすべきだと言われてしまうと、それはそれで困らない?多分有料でも欲しいし、もし将来、分解性素材を使った高額なものしか世の中になくなったとしても、やっぱり買うことになるんじゃないの?
コンビニで多くのものを買う人ってのは、そもそもコストセーブ自体にあまりモチベーションが高くない人が多いので、有料でもほとんどの人がレジ袋もらっちゃうから、そんなの法制化しても効果ないんじゃね?という意見も多く、確かにその通りだという気もする。
一方で、レジ袋をあんだけ配りまくっていることで、ゴミが増えているということは、確かに事実ではあるようだ。やや古いデータだけども、京都市が行った調査によると、家庭から出るプラごみのうち、レジ袋の比率は湿重量比(紙・布などに汚れや水分が染みたゴミの状態)で約13%とそこそこ多く、ペットボトルの10%よりも多い。
だがそもそも、レジ袋のようなプラスチックごみは、かつて所沢市でこれを燃やしたことでダイオキシンが発生したというニュースで、なんだか燃やすと即公害に繋がるように思わされているけど、これがまず認識違いだという事実を、ぼくらは最初に知らねばならない。
こちらのサイト--とても役に立つ情報が集まってるので読むと勉強になるよ。以下かなりの情報がここからの受け売りです--によると、そもそもプラスチックって、純粋にそれだけを燃やしてもダイオキシンは発生しないんだって。しかも今は殆どの自治体の焼却施設が、ダイオキシン発生の原因を避けるため、高温で短時間で燃やし、排ガスを冷却するという条件を備えているので、ダイオキシンの発生はほぼ起こらないという。2015年の推定ダイオキシン発生量は、1999年の1/50まで下がっているらしい。
最近の我が朝霞市を含む多くの自治体の配っているゴミ捨てマニュアルでは、「燃えるゴミ」ではなく「燃やすゴミ」という表現が使われており、汚れが落とせないプラスチックごみは、積極的に燃やすように書いてある。それならまず、そういう多くの国民の認識違いを改める啓蒙をすべきなんじゃないの?法制化とかの前にさ。
んで資源ごみとして再生用に分別している汚れのないプラスチックがどうなっているかと言うと、プラ製品を再生するマテリアルリサイクル、化学原料にするケミカルリサイクル、固形燃料などにして焼却して熱エネルギーとして使うサーマルリサイクルという3つのリサイクル方法があって、日本では家庭から出る分別プラスチックも、80%以上が有効利用されているらしい。
プラごみを燃やすことでCO2削減に反するという声があるが、燃料として使う分には、他の燃料がその分燃やされなくなるわけで、最初にプラスチックとして精製する際にそれなりにCO2は出したとしても、それはそのプラスチックが製品として一旦その目的を果たしたのと引き換えだとすれば、単に(燃料としてではなく)焼却処理をするのでなければ、CO2を余計に出していることにはならない。
ただ、最も有効活用しているように見えるマテリアルリサイクルは、そのための手間やコストが相当にかかるということで、例えば不純物が混ざっているためにこれを分別したり洗浄したりするのが大変だし、そもそも日本のほとんどの自治体は、家庭での分別を徹底しており、これを別々に回収するために個別に業者を手配することで、コストアップに繋がっているという。世界では日本と韓国以外では、こんなに徹底した家庭での分別はしていないということで、そういう意味では逆に社会的コストはセーブできているらしい。なるほど、皮肉な話だねぇ。
マテリアルリサイクルの手間がかかるために、欧米を中心にこれらを単に処理場に積んでおいたり、これは日本も含めてだが、かなりのプラスチックごみを中国に輸出していた。そして中国では、あまりにも大量のプラごみを受け入れたために処理しきれなくなり、一部の悪徳業者がこれを川に流し、海洋ごみになったという流れが大きいようだ。中国は現在では輸入を禁止しているが、その分東南アジア各国に流れているらしい。
そして、レジ袋等の薄いプラスチックは、細かくちぎれてマイクロプラスチックってやつになり易く、魚たちに悪影響を及ぼすという情報とともに、クジラの胃からレジ袋が大量に見つかったとか、イルカが窒息死したとか、そういう報道がセンセーショナルに行われた。
これらの報道にヨーロッパの国々が過剰に反応--ヨーロッパってそういうの多いよね。どうも奴らの感情的リアクションは信用ならん--し、率先して禁止とか有料化とかに走ったようだ。さらにヨーロッパ各国の政治家や官僚たちは、どうもプラスチックを燃やすということがリサイクルの美名に反するためか抵抗を感じるようで、相変わらず輸出の禁止措置は取っていない。んでそういう世界の風潮を過剰に忖度する我が日本政府。困ったもんだ。
上記の京都市の「出元」調査に対し、海洋ごみとしての「結果」がどうかというのも、環境省自身が調査した海洋漂着ゴミのモニタリング調査ってのがあって、これを見る限り、レジ袋が含まれると思われる「ポリ袋、菓子袋等の食品包装材」の容積比は、多くの地点で0%、見つかったところは10地点中3箇所だけで、いずれも4%と極少だ。
マイクロプラスチックは、それを摂取した魚を人間が食べても、そのまま排泄されるだけで害はないと言うし、もちろん体積比や重量比で言ったら軽く薄いプラスチックには有利な数字が出るのかも知れないけども、これだけ少量なら、これを減らす努力の優先順位が、果たして高いと言えるのだろうか?
本当に海洋プラごみを減らし、環境への悪影響を避けたいなら、実際に海洋ごみとして多いペットボトルや工業製品に使うプラスチックを減らすことをまず考えるべきだし、ポイ捨てを禁止してドブや川から海に流れないようにし、プラごみの輸出を禁止し、マテリアルリサイクルのコストが下がらないうちは積極的に焼却処理を行い、単に燃やすのではなくその熱をなるべく燃料代わりに使えるようにする、と言った施策のほうが、どう見ても有効のように思われる。
ま、とはいえ我が家は最近はゴミも減ってるし、レジ袋は使う量よりもらう量のほうが多い入超状態になっていることもあり、駅の帰りに業務スーパーとかで牛乳買ったりする時用に、ぼくはエコバッグを持ち歩くことにした。こういうキャンバス地のトートバッグって、ぼくらが学生の頃、教科書とかノートとか入れる普通のカバンとして流行ったよねそう言えば。あの頃のは白地で、アメリカの大学のマークとかが入ってた記憶があるけど。
かさばらないように小さめで、なるべく持ち手が長いのを買ったら、牛乳2パックにトマトジュースくらいを入れて肩に担ぐと、なかなかバランスがよく、レジ袋よりは使い勝手がいい。ま、だからそういう、なるべく協力してあげたい気持ちは、上記のスーパーにエコバッグを持ってく人が多いという事実も含め、我が家に限らず多くの日本国民は持ってると思うんだよね。
これから具体的な法制化の中身を検討するってことだけど、なんかそもそもそういう方向で検討すること自体、お門違いで時間の無駄なんじゃないの?この件、誰が言い出したのか知らないけど、優秀な日本の官僚--最近は就職先として人気が下がってるようですが--の皆さん、頼むからおバカなお偉いさんの言うなりにはならず、そういう国民の気持ちになるべく応えるような内容にしてね。お願いしますよ。
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