今週末にはカミさんと長野へ出かける予定なので、五島旅のことは書いちゃわないとね。てことで五島旅行最終回の今回は、4日目と5日目、主として船で奈留(なる)島と久賀(ひさか)島に渡った旅の記録です。
世界遺産構成要素のうち重要な2つの教会、「江上天主堂」と「旧五輪教会堂」は、それぞれ奈留島と久賀島にある。五島列島には約152の島があるそうだが、そのうち五島の名の由来になった大きな島は、北東から南西に、中通島、若松島、奈留島、久賀島、福江島の順に並んでおり、船で福江島から奈留島までは30~45分、久賀島までは20分ほどで行ける。
これらの2教会には是非行っておきたくて、ガイド付きローカルツアーもあるのだが、GW前ってGWに備えて船をドック入りさせてたり、問い合わせても「多分その日じゃ最低催行人数が集まらないでしょうねぇ」とやる気のない返答をされ、結局いくつかあるツアーは全滅ってことで、自分で定期船で渡り、レンタカーを手配して行くことにした。ただし定期船はいずれも1日数便しかないので、島にいる時間は限られる。
また特に「旧五輪教会堂」は、隠れキリシタンの地だけにいわゆる陸の孤島と言われる場所にあり、陸路だと車は入れず最後10分くらい歩いて行かないといけない。船着場はあるので、ツアーで行ければここに直接アプローチできたんだけどね。まぁ仕方ない。ツアーには組み込まれてない場所にも行けたってことで良しとしよう。
てことで4日目の計画旅程は以下の通り。
ホテルから福江港ターミナルまで10分ほど歩いて行き、少し時間があったのでお土産屋さんをいくつか覗いてから船に乗る。奈留港のターミナル内にある奈留レンタカーで借りたのは三菱の電気自動車Miev。けっこう古い車らしく6万キロ以上走っていて、ナビはAndroid AutoどころかBluetoothでの音楽再生にも対応しておらず、シフトノブの奥にGoogle Mapを開いたスマホを置いて出発だ。
最初に行った「奈留島世界遺産ガイダンスセンター」の展示は大した内容ではなく、案内のおじさんがいろいろ解説してくれるのだが知らない情報はほとんどなかったので、ここで20分ほど時間を巻いて、奈留高校の校内にあるユーミンの歌碑を見に行く。
荒井由実時代の2枚目のアルバム「MISSLIM」に収録されている「瞳を閉じて」という曲は、まだユーミンがそれほどメジャーになる前に、奈留高校(当時は五島高校奈留分校)の女子生徒が、特にユーミンを目当てにということではなく、あるラジオ番組の「あなただけのイメージソングを作ります」というコーナーに、校歌を作って欲しいと応募して、それをユーミンが作り贈られた。
この曲はその後正式な校歌にはならなかったが、今でも奈留高校および島の愛唱歌として歌い継がれており、これを記念して1988年にユーミン直筆の歌詞を彫った碑が建てられたってことでね。まぁ一応ユーミンファンとしては観に行っておくかと。アプローチ路が結構な登り坂で、こりゃ生徒さんたち毎日大変だと思いながら校門手前のロータリーのようなところに車を停め、誰かいたら入っていいですかとお声がけしようと思っていたのだが誰にも会わず、校門を入ったらすぐ左に、普通にひっそりと建っていた。
「奈留教会」は葛島というさらに離島の信者たちが、離島での生活に耐えられず移住してきてここに統合されたという経緯を持つ教会で、白亜の立派な建物が、この旅でいちばん天気がよかったこの日の青空に映えて美しかった。
この時点で30分ほど巻いていたが、世界遺産構成資産の2教会は予約が必要で、これを13時に入れてしまった--行ってみたらそんなに厳密に運用されているわけでもないらしかったが--ため、数少ない町中の食堂「みかんや」さんに行ってゆっくりと唐揚げ入りちゃんぽんをいただく。これは美味かったなぁ。映画版「孤独のグルメ」のロケ地だったらしく、松重豊さんの等身大パネルやポスターとかであふれていた。
「江上天主堂」には13時ちょうどごろに着いたが、外観からは歴史を感じさせるクリーム色の木造板張りで素朴な、だけど水色の窓枠がオシャレな建物だ。中に入ると天井のアーチ構造とか、柱に刻まれた細かな模様とか、とても緻密に設計されたものだとわかる。予約が必要な2教会には教会守みたいなおじさんがいて、いろいろと解説してくれるのだが、現在この天主堂に所属する信徒の方は何人いるのかと訊いたら、1人だけとのこと。もうこの辺にはほとんど人が住んでないんだね。
それから「小田河原展望台」というところに向かったが、着いてから旅程を確認してみたら、なんとこの展望台に行く30分がすっぽり抜け落ちて、次の予定が同じ時刻から始まっているじゃないですか(上の計画旅程は時間修正済み)!ワタクシとしたことが、再確認時にも気づかなかった。「江上天主堂」で少し時間を巻いたと思っていたのが、逆に押してしまっている!
ヤバい!とこの展望台はさっと登って写真を撮ってさっと降り、次の「舅ヶ島千畳敷」も駐車場から半分走って行ってぐるっと眺め、これでずいぶんと時間を巻いて、「城岳展望台」までのうねうね道を軽の電気自動車にあらんかぎりのパワーで登って行って、展望台の駐車場に着いた時点で船が出る時刻を1時間早く誤認していたことに気づいた。なーんだ、こんなに慌てる必要なかったじゃんか。
てことで展望台までの常緑樹に囲まれた木漏れ日の階段をゆっくり登って、展望台から周りを眺めてみたら、これがまた素晴らしい絶景でね。奈留島って細い半島がいくつもくっついたような形で、海が入り組んだ様子も美しいし、福江島の方向には小さな島がたくさん見えるし(冒頭の写真ね)、しかも天気がサイコーだし。
この景色をじっくり堪能できる時間ができたから却ってよかった、ってことにして、展望台を降りターミナルに戻り、車を返して帰りは行きの高速船とは違うフェリーで居眠りしながら福江島に帰って来た。朝お土産屋さんで目をつけておいたバラモン凧のマグネットを娘と嫁へのお土産に買い、ホテルに戻る。気づいたらおでこがだいぶ日焼けしていた。
既に長くなってますが5日目も書いちゃいますね。5日目の最終日は久賀島と福江の街中を巡るプラン。
・12:55福江港ターミナル(GOTOCHARI電動レンタル)
・13:05>>13:10常灯鼻(福江築城の際防波堤と灯台のため築かれた)
・15:52>>15:57福江港ターミナル(チャリ返す)
・16:05・・16:20コンネホテル(荷物取ってタクシー呼んでもらう)
船が出る時間が早いので、少し早起きして荷物を片付け、フロントに預けてチェックアウトして、昼に船内で食べるおにぎりを買おうと思ったら、ホテル最寄りのローソンはおにぎりが全部売り切れ。仕方なくサンドイッチとかを買ってターミナルに行き、久賀島行きの船に乗る。
久賀島の船着場は桟橋が1本あるだけで、建物らしきものは何もない。まぁ人口で言うと福江島が37,000人ほど、奈留島が2,600人ほどに対し、久賀島は380人ほど(2005年時点)だけだそうなんで、そうなるのかな。ここにはレンタカー屋のお兄さんが車で迎えに来てくれている。
10分ほど走って、町ってほどでもない家が何軒か寄り集まったようなところにレンタカー屋兼タクシー屋があり、ここで借りるのは1人乗りでドアもないトヨタのCOMSという超小型電動車だ。これにはもはやナビもないので、ダッシュボードの窪みにスマホを立て、予定時間を巻いて出発だ。
しかしこの車は、車というよりカートだね。同じスピードでも普通の車の3倍くらいのスリルがある。これでまず向かった「牢屋の搾(さこ)殉教記念聖堂」は、明治政府の迫害により12畳の広さに約200名の信者が8ヶ月間押し込められた事件があったその場所に、1984年に建てられた聖堂だが、今は感染症対策とかで中には入れない。周りにいくつか立っている碑にお祈りをする。
それからこれは普通の車じゃ無理なんじゃね?と思われるような細い一部デコボコの道を延々と走り、ちょっとした広場に車を停め、そこからは坂道を下り海際の防波堤の上を歩き、「旧五輪教会堂」に行く。ここまで結構時間を巻いて来れたので、予約時間の10:30ちょうどくらいには到着できた。
ここは今は使っていないので中の写真も撮れたが、同じ島の後で行った「浜脇教会」の、明治時代に造られた旧建物を移築したもので、歴史の重みを感じる教会だった。ここでも教会守のおじさん--活舌が悪く半分くらいしか聞き取れなかったが--に、この隣に建てられている現五輪教会の信徒は何人いるのか訊いてみたら、11人って言ったかな?久賀島の150mほど沖にある、蕨小島という面積わずか0.03平方キロの日本最小の有人島にお住いのご一家が、ミサがあると船でここに通って来られるんだそうで。
計画ではここからもう戻るしかないはずだったが、少し時間に余裕があったので、この教会堂に来る途中に分かれ道のあった「折紙展望台」というところに登ってみる。この日は前日ほどの好天ではなく基本曇りでちょっと霞んでいたものの、前日行った奈留島方面の景色が美しかった。
12時前にレンタカー屋に戻り、ここから車で船着場まで行く間に、途中にある「浜脇教会」に寄ってくれた。今の建物は白亜に緑の尖塔の素敵なもので、内部も--撮影禁止とは書いてなかったので写真も撮っちゃったが--天井が高く会衆席の数も多く、とても立派な造りだった。
船を待つ間に朝買って来たサンドイッチを食べ、船に乗って福江島に戻る。今度はここで電動チャリをレンタルし、福江の街中の名所を観て回る。これはあんまり細かく書かないが、築城からわずか9年で解体された福江城(石田城)関連の場所と、戦国時代に活躍した中国商人(倭寇)の王直に関わる場所などを観て周り、今も古い石垣や建物が残っている「武家屋敷通り」に行く。
計画とは反対に先に見た「武家屋敷通りふるさと館」はまぁ大したことはなかったが、幕末に建てられた「松園邸」を外観はそのままに改修して作られた「山本二三美術館」は、めちゃくちゃよかったな。
山本二三氏という人は残念ながら一昨年に亡くなったが、五島市出身で、「未来少年コナン」、「時をかける少女」や、ジブリの「天空の城ラピュタ」、「もののけ姫」などの美術監督を務めた方で、アニメの背景画、特に雲の表現が素晴らしく、宮崎駿、高畑勲、細田守、新海誠など錚々たるアニメ監督たちに頼りにされたという。
この美術館はそれらの映画の背景画や、ライフワークとして五島のいろんな風景を描いたオリジナル絵画「五島百景」などを展示しており、5つほどの普通の和室を利用しているだけなので大した量ではないが、すっかり観入ってしまった。ここではカミさんに背景画のクリアファイルを2つと、五島百景の卓上カレンダーを買った。
それから今は五島高校になっている福江城(石田城)跡地の前を通って、当時の面影を唯一残しているが、今はほぼ休日にしか公開していない「五島氏庭園隠殿屋敷」に行ってみたら、植木屋さんが入っていて庭園の戸が開いており中を覗けてしまったので、ちょっとだけこれを拝見する。さらに少し時間があったので、城跡の周りをぐるっと回ってみたりしてから、ターミナルに戻ってチャリを返す。
そしてホテルまで戻って荷物を取出し、タクシーを呼んでもらって五島福江空港まで行き、トランジットの長崎空港で飯を食って、11時ごろに家に帰って来た。大変長くなってスミマセン。いやいや、疲れたけど素晴らしい歴史と風景に触れられた、素敵な旅でした。
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