一時天気が悪くなると予報が出ていた2日目の文化の日は、さすが晴れの特異日、基本薄曇りではあったものの、けっこう長い時間陽が差し、紅葉を観るには悪くはない天気になってくれた。
この日はまず、宿の近くのファミマでまたおにぎりと、カミさんが忘れてきて寒いというので厚手の手袋を買って、日塩もみじラインに入り、3kmほどですぐ左折して、「新湯(あらゆ)富士」という独立峰と沼地に囲まれた「大沼公園」という園地に向かう。
途中、もみじラインの入り口近くのヘアピンカーブ脇にある、「大曲のもみじ」と呼ばれる有名な数本のもみじ群は、ここも残念なことに赤が深くなり切ってはいなかったけど、それでもなかなかの美しさで、多くの人が車を停め写真を撮っていた。
大沼公園の駐車場から、まずは南東側の沼地の周りを歩いていく。標高1,000m弱の、「大沼」というシンプルな名のこの沼は、木道が歩きやすく整備されており、駐車場から手前の方にヨシの群落に覆われた部分が、奥の方には幅50m、長さ200mほどの水をたたえた沼地がある。
ところがここでも台風の影響が!奥の沼地に行く木道が一部水没してまだ水が引かず、危険なので立ち入り禁止だと言う。反対岸の少し高さのある遊歩道に回って歩いて行ってみると、確かに対岸、及び沼の手前と奥の間のくびれを渡る--ようになっていたのか最早よくわからない--木道は、完全に水没している。やっぱすごかったんだね、こないだの台風。
遊歩道を途中で引き返してきて道路を渡り、今度は北西側の新湯富士登山だ。下から上までの標高差は200mほどあり、最初は岩ゴツゴツの急坂のつづら折りを、汗だくになりひいひい言って登っていく。頂上は下から見ると丸い1つのピークなのだが、1時間ほど登って、だんだんと緩やかになってきた坂の上は、どこも岩と苔と落ち葉で覆われ、いくつもの小ピークがあり、どこが道なのかどれが頂上なのかよくわからない。
その1つの、多分これが頂上じゃない?っていう赤白ポールが1本だけ立った小ピークに登ったのだが、達成感がないこと甚だしい。後で調べたら「新湯富士山頂」の看板が立っていた場所もあったようだが、まったく発見できず。しかも高い木に覆われて景色はほぼ見えず、あまつさえこの時点で、道は完全に見失ってしまった。
仕方ないのでカミさんと2人でこの頂上小山群の間を歩き回り、カミさんが、あ、これ道じゃない?って見つけてくれた、ちょっとだけ周りより人に踏まれた感のある落ち葉の上を行くと、これが正解。この道を行って、新湯富士を反対側に、来た道より全体に緩やかな坂を降りていく。
途中、珍しく鮮やかに紅葉したヤツデの木--とはいえ近づいてみると、そこそこ汚くなっちゃった葉っぱもあるんだけど--を発見し、その下にレジャーシートを敷いて昼飯にした。
さらに降りて行くと、だんだん硫黄のにおいがしてきて、日塩もみじライン沿いの、何軒か宿の並ぶ「新湯温泉」を上から見下ろす「噴煙展望所」に着く。展望所のすぐ下は、新湯温泉の源泉地である、白と薄黄色の岩肌むき出しの場所から煙を吹いており、なかなかワイルドな光景だ。
それから新湯富士の南側のすそ野を回って、途中今度は「ヨシ沼」という、全面ヨシで覆われた沼の際を通る。広葉樹と植林された針葉樹--ほとんどの木に地面から70cmほどの高さまで荷造り用の白いビニール紐が疎らに巻かれているのだが、何を意味するのかよくわからなかった--が交互に現れる森の中を行き、新湯富士の登山口に戻ってきて、駐車場に到着。
次に向かうのは日塩もみじラインを挟んで西側の、元々はここが塩原温泉の発祥の地だったらしい「元湯温泉」のそばを流れる赤川が、その上流で渓谷となっている「赤川渓谷線歩道」だ。
数件の旅館の手前、赤川を渡る橋のそばにある、今は使っていないらしいゲートボール場の入り口に車を停め、そこから車道を登っていく。途中「上滝」という、小ぶりだが勢いがありきれいな段々の滝を見る展望台に寄って、それから遊歩道、と言うか山道に入っていく。
これが最初、おいおい渓谷沿いの道じゃないのかよ、とツッコミたくなるくらい思い切りの登り。標高差60mほどを一気に登った後、だんだんと渓谷の方へ降りて行く。途中赤川の支流を渡る木橋の上から、かなりの急流であるその支流が、雨量も多かったためか、苔むした岩を縫って、稲妻状に豪快に流れていく様が見えカッコいい。
40分ほどで一応のゴールである「元湯吊り橋」に着き、たもとの木製ベンチに座って朝ファミマで買ったバームクーヘンのおやつにする。それから川の反対側の平坦な道を、元湯温泉の方に戻って行ったのだけど・・・ここでまたトラブルが。後で調べたらこの道は以前から通行止めになっていたらしく、入り口に木製の幅1mほどの柵が立ててあったんだけど、まあいいや、行ってみよう、と進んでいったら・・・
途中、細い支流に橋が架かっていたのかな?そこが完全に崩壊して、渡れなくなっているじゃないですか。その直前に道を横切る蛇を踏んずけた--慌てて足を上げたので多分彼はそれほどダメージは食らってないと思うんだけど、そのまま斜面を滑り落ちていった--から嫌な予感はしたんだよね。
だけどその支流を20mほど遡り、岩を跳んで渡って、反対側によじ登ったら、何とか続けて歩いていくことができた。この時点で雲がやや厚く薄暗くなってきており、この先また崩壊があって戻んなきゃなんなくなったら悲惨だね、と言いながら進んで行ったが、なんとかそのまま元湯温泉に。ただここでも、最初にあった斜面の上に建つ大きな宿の敷地に、下の道まで抜けられるかと思って迷い込んでしまい、急坂を登って戻ったりする羽目になったんだけどね。
3日目になった翌朝、2日連続で宿の外の別棟にある露天風呂で朝風呂に浸かり戻ってきたら、直前まで細かな雨が降っていたらしいのが上がって晴れて、宿の前に大きな虹がかかった。写真ではわかりにくいが、ほんの100mほど向こうの畑の中から立ち上がっていて、そこまで行けば虹の足元を捉えられそうだ。
カードリーダーの故障とかで現金でチェックアウトして、まず向かったのは、1日目に行ったが夕方になってしまって帰ってきた、宿のそばの「箱の森プレイパーク」だ。駐車場から少し南に歩いたところに、「紅葉の森」(だったかな?)と書かれた場所があり、行ってみたかったのでね。
10分ほど歩いて着いたそこは、確かにもみじの木がたくさん植わっているんだけど、ここも一面紅葉しているのではなく、ところどころきれいな木がある感じ。この日は晴れてはいるが雲が多く、時おり当たる陽差しを待って写真を撮ったが、一番赤くなった枝には、この時間帯は高い針葉樹の陰になって陽が当たらないようで、しばらく粘ったが諦めた。
それから園内を少し散歩し、簡単なアスレチックというか体力測定的な遊具で、いかに自分の垂直飛びやらバランスその他の能力が低下したかを思い知った後、車に乗って塩原を後にする。国道400号は、箒川の下流に向かっていく我々の方も少し混んだが、逆方向は長蛇の大渋滞。地元の他は水戸とかつくばとかのナンバーが多く、やっぱ当日の天気見て気まぐれの日帰りで訪れる人が多いんだね。
那須と塩原の間にある板室温泉の方向へ1時間ほど走って、「手打ちそば山水庵」というところでそばを食べたが、ここは全部屋個室のみの贅沢な設備で、また外には古民家を移築したりした広い園地があって、たくさんもみじその他が植わっており、意外に目の保養になった。
それから板室温泉の先にある「沼ッ原湿原」というところまで車で一本道を登っていく。駐車場から、手前に作られた大きな調整池の脇を通って、15分ほど歩くと着く標高1,200mほどのここは、ぐるっと回っても30分ほどの、それほど大きくはない湿原だ。昭和天皇がここをお気に入りだったそうで、木道がきれいに整備されているが、多くはカラマツの森になっており、湿原っぽい場所は、サッカー場1面分ほどか。
標高が高いだけにカラマツはほぼ枯れており、木道はその落ち葉で埋まっている。赤い葉をつけた木が1本だけあったが、湿原に生える草も黄褐色をしており、全体には冬枯れの寂しい感じ。だが湿原の長辺の方向である北側に見える、大倉山を中心とした3連山の威容が、高地っぽい雰囲気を醸し出してくれる。ここは花の咲く時期に来てもきれいだろうなぁ。
帰り道、一本道のつづら折りを少し下りた辺りにきれいに紅葉した木があり、この周りの雰囲気がいかにも紅葉狩りドライブな感じで素晴らしかったんで、写真載せときますね(冒頭の写真です)。
帰りはいつもの通り、今回は那須塩原インターそばの千本松牧場の中にある立ち寄り温泉に寄る。やや小さく古い建物ではあるものの、値段もリーズナブルだし温度調整も気持ちいいのだけど、露天に出ると牛糞の臭いがするのがちょっと残念だったかな。
帰りの東北道はかなり長い渋滞だったが、完全に止まってしまうような激しいものではなく、出るのが少し遅くなった分予定よりはやや遅れたが、20時過ぎには地元に戻ってきて、ファミレスでメシにし、家に帰り着いた。鮮やかな紅色にはなかなか出会えなかったけども、森と水流と秋の深まりを感じられた旅でした。
コメント