先週の「関ジャム」で、「教科書に袋とじで載せたいオトナの名曲」という特集をやっていて、今年頭にもやったこの企画は今回で2回目だったんだけど、前回同様、音楽プロデューサーの本間昭光さんと松尾潔さんが選曲して、8曲を発表した。
「今の子どもたちにこそ知ってほしい、ちょっと色っぽい大人の“イロイロ”が詰まった名曲をセレクトしその魅力を徹底解剖」ということなんだけども、予告番宣で松尾さんが今井美樹の曲を選ぶということだったので、あ、これはきっと「半袖」だな、と思っていたら案の定だった。
今井美樹についてはこのブログに書いたことはほとんどないと思うんだけど、ボーカリストとしては、MISIAとかSuperflyみたいな声量やインパクトがあるタイプではなく、うちのカミさんに言わせればあまり好きじゃないということになるのだが、声がきれいで音程がよいので、聴いていて心地よく、ぼくは全部を追いかけてはいないけどかなりの枚数のCDと、昔のものはカセットテープを持っている。
この「半袖」が収録されているアルバム「retour(ルトゥール)」は、まだ現在の夫君である布袋さんとガッツリ組む前の1990年に発表されたもので、ぼくの大のお気に入りだ。いずれもシングルカットはされなかったが、CMに使われた「もっと もっと もっと」の他、アニメの主題歌になった「雨にキッスの花束を」とか「幸せになりたい」などの比較的アップテンポな曲が人気があったのだけど、このアルバムはミドル~スローテンポの曲たちがとてもよい。
特に12曲中、冒頭の2曲と、上記「半袖」も含む後半の6曲は、全部ミドル~スローなのだけど、いずれも名曲揃いで、聴いていて大変に癒される。
ちなみに「雨にキッスの花束を」は、作曲があの「愛は勝つ」のKANなのだけど、「愛は勝つ」のシングルは、この「retour」が発売されたわずか3日後に発売されたらしい。って話はどうでもよくて、この曲の岩里祐穂さん作詞の歌詞は、気の強い彼女とずっとつかず離れず付き合っていた彼氏が、雨の日に交差点の真ん中で突然プロポーズする、っていうとてもかわいい内容で。
んでこの曲の中に、「やっと言ったなコイツ、もう離さないから」ってセリフが出てくるんだけど、前の会社でやってたバンドで、ギターのYの結婚披露宴の2次会でこの曲を演奏した時に、このセリフを奥さんに言わせるというサプライズをやったなぁ、ってのが思い出される。
で、話を戻すと、なんで「半袖」だと思ったかって言うと、1回目の時に松尾さんが選んだのが、竹内まりやの名曲「マンハッタン・キス」で、この曲も奥さんがいる人と不倫をしている女性が主人公になっており、今井美樹でその手の内容の曲って言うと、まず「半袖」だったから、ってことでね。
なんで今井美樹で不倫なら「半袖」だとすぐに思いついたかと言うと、最近はサブスクの時代になって、AIが勝手に作ってくれるので自分ではやらなくなった、てかやるとしてもプレイリストを作るだけになったけど、10年ほど前までは、自分でセレクトした名曲ベストCDを時々作ってたのね。
通常はその年のJ-Popの中で自分のお気に入りの曲とか、ホーンセクションがカッコいいものとか、洋楽だとManhattan TransferとかChaka Khanとかミュージシャンごとに作ったりね。んでたまたま、不倫とか浮気とか世間的に許されざる愛系の曲を集めたベストを作ったことがあってね。その時にこの曲を選んでおり。
この手のJ-Popって、意外と名曲が多いのですよ。「マンハッタン・キス」や「半袖」以外にも、EPOの「疑似恋人たちの夜」とか、ユーミンの「真珠のピアス」とか、Chemistryの「You Go Your Way」とか、久保田利伸の「Missing」もそうだし。そういう内容の割にほとんどの曲がメジャーだと言うのも面白い。
中でもこの「半袖」は、作詞は「雨にキッスの・・・」と同じ岩里祐穂さん、作曲はKARYOBINの上田知華さん、編曲はCharや高中のバンドでキーボードを弾いていた佐藤準さん、この佐藤準さんのストリングスアレンジが絶妙に美しい曲でね。
歌詞の内容は、不倫相手の家を訪ねて行き、相手の子供や、奥さんの幸せそうな様子を見てしまい、すごく苦しかったんだけど、でも私はこの愛を続ける勇気を捨てない、ってもので、初夏の匂いの駅とか、木立が揺れる長い坂道とか、情景描写も美しく、もの語りの順序とか、言葉の繋ぎのうまさ、無駄のなさなど、本当に見事な作品だ。この内容で曲がメジャーなのもよい。Codaだけ一部マイナーなんだけど、そこのオーケストラアレンジがまたいいのよ。
今井美樹の不倫がテーマの曲としては、他にも「夢の夜」--これも上記ベストに入れたミドルテンポメジャーの名曲--とかいくつかあるんだけど、なんでこの「半袖」だと思ったかと言うと、以前ある女子にこの曲を聴かせたら、これは過去の自分に照らしてあまりにも身につまされ、聴くのが辛いと言われたことがあって。彼女は大変に感受性が強い人だったから、ってこともあったけど、なるほど、こういう経験をしている女子って思いの外いるのね、だから響くのね、って思ったことがあって、とても印象的だったからなのね。
ちなみに上記の不倫テーマのベストCD、名付けて「Best Affairs」を作った最初のきっかけになったのは、実は竹内まりやの「OH NO,OH YES!」という曲で、シングルカットもされてない--元は中森明菜に提供された曲で、「元気を出して」をシングルカットした時にB面に採用された--し、関ジャムの竹内まりや特集でも好きな曲ベスト20にかすりもしないのだけど、個人的には大好きな曲で。
この曲は彼女の活動休止復帰後2作目、他のシンガー等への提供楽曲ばかりを集めたほぼ全曲セルフカバーのアルバム「Request」に入っており、「けんかをやめて」とか「元気を出して」とかの有名曲が並んだA面の2曲目に入っていた。電ドラとシンセのサブメロディーと、達郎のカッチカチの音のギターカッティングが印象的な名アレンジだ。
「マンハッタン・キス」とかいくつかの曲はすぐに思いついたんだけど、最終的に11曲を選んだこのベストCDの曲をピックアップするのは、結構大変だったことを憶えている。なにせ、歌詞って曲にも寄るけどそんなに真面目には捕捉してなかったからね。「Missing」だって、そう言えばこれってそういうことなんじゃん?って感じだったし。
なんとなく内容を憶えているものはまだしも、「半袖」も含めて多くの曲は、アルバムを片っ端から聴くなり歌詞サイトを見るなりして、ああ、これってそういう曲だったんだ、って感じで拾って行った。そういう風に歌詞をキーにして曲を拾ってみよう、って思ったのも、その女子に影響されてのことだったかもしれない。
まぁなんつーか、音楽ってのはそういう、いろんな思い出がぶら下がったものだよね。単にあることに一定期間かかずらわってた時期に、カーステでヘビロテしてたとかだけのものも含めて。「オトナの名曲」で今井美樹と聞いただけで、長尺ブログ1本書けちゃうほどのね。
映像を伴うものでは、情報量が多すぎるからか、周辺情報が欠落して、ああ、このドラマって○年だって言うから、娘が中学校入った頃だっけ?みたいになるけど、音楽は大抵、その時期にやってたことや自分の感じ方や雰囲気なんかを一緒に連れてくる。聴覚だけが必要だから、何か他のことをやったりもできるってことかな。いや、人間の脳の仕組みが、聴覚だけは特別だという気もする。
でもさらにそれだけじゃない音楽の力ってあるよね。メロディーやリズムやコードや歌詞がより合わさって起こる相乗効果が。いやいや、すごいことですよね。それって。
このころの今井美樹は良いですね。でもうちの奥さんも今井美樹は嫌いと言います。声が嫌だって、
投稿情報: タコ兄 | 2020/05/24 01:18