今週水曜日に、山下達郎の11年ぶりのアルバム「Softly」が発売された。
ぼくは達郎フリークの1人として当然、Amazonで予約して初回限定版のアコースティックライブを収めたCDとの2枚組をゲットしたのだが、最近毎回書いているが、サブスク全盛のこの時代、CDを買ったこと自体久しぶりだ。
正式発売の前日に届いたこのCD、あまり素人感想を書いても仕方ないが、曲自体は先々週から2週にわたってFM東京「サンデーソングブック」で聴いていたので驚きはなかったんだけど、びっくりしたのはとにかく音がいいこと。
我が家のブースの音響設備は別にそんな高価なものでも何でもないんだけど、久々にCDプレイヤーを使って音を出してみたら、うわっ、なんじゃこの音、と。別にSACDでも何でもなくて、普通に16bit/44.1KHzのいまやちょっと古臭くなってしまったフォーマットなんだけど、なんか音の解像度が高くて、音の広がり感や音圧が心地よくて、全部の音が隅々までよく聴こえる感じ。
MP3に落としたものをPCやスマホから聴いても、同じようにいい音だと感じたから、これはもうフォーマットとかの問題じゃなくて、元の出音の素晴らしさなんだなと。後述するけど今週、達郎は画期的な静止画TV出演となった「関ジャム」を始め、各種ラジオに出まくっていて、その中で言ってたことによれば、レコーディング自体は半年くらいでやったけど、その前に8ヶ月くらいを、いい音を出すための音源やエフェクター、およびそのチューニングの追及に費やしたと。
ここ3年くらいで、いわゆる"Plug In”と呼ばれるPC上のS/W音源やエフェクターが格段に進歩していて、箱モノのエフェクターは今回ほとんど使わなくなったと。特に音の仕上げで大きく物を言うリバーブで、素晴らしいPlug Inができていて--自分と同じところにこだわるプログラマーがいるんだなぁと感心したと言ってたけど--、これをここ二十数年一緒にやってくれているこだわりのオペレーター橋本茂昭氏が、見事にチューニングしてくれたと。
今回のアルバムで生ドラムでレコーディングしたのは3曲しかないんだけど--そのうち2曲は上原"ユカリ"裕さんという、シュガーベイブのメンバーで、78年のアルバム「Go Ahead」とかに参加していた往年の名プレイヤーだと言うのも泣かせるのだが--、その3曲とその他の曲との差をはじめ、他の楽器でもそうなんだけど、打ち込みなのか生なのか、その差が一聴しただけではわからない音作りもすごい。
曲によってアナログがふさわしいのかデジタルがいいのか、そういうところにも徹底的にこだわって作り込んでいる。ぼくのような素人が言うことではないけど、こういう音作りに対するこだわりや真摯さは、プロの皆さんにも勉強になるんじゃないかなぁ。まぁこんなレコーディングの仕方ができるのも、達郎のキャリアならではというところはあるんだろうけど。
で、先週から今週は、その「関ジャム」--永久保存版だねこれ--と、アルバム発売日の22日には丸1日FM東京をジャックした「ワンデースペシャル」の他、21日のニッポン放送「オールナイトニッポンゴールド」、21日の朝の文化放送の高橋優他の番組、12日の朝のTBSラジオの安住紳一郎の番組等に出まくっていた。また今日は、まだ聴いていないがNHK-FMで、「今日は1日山下達郎三昧」という番組が9時間に渡って放送されたようだ。
特にその「ワンデースペシャル」は、生で出たのは(ライブ活動中のため)夜の1番組だけだったけど、5つの番組にゲスト出演し、その他の番組にもコメント出演し、さらに「Softly」収録曲を初め達郎の曲を朝から晩までかけまくると言う「推し」ぶりだった。
これらのゲスト出演した番組--ハマ・オカモトさんってダウンタウン浜ちゃんの長男なのね。知らなかった--は、最近のお気に入りPCソフト「らじれこ」を駆使して全てを聴き、その他AMラジオ局の番組はYou Tubeに上がっているのを聴いたが、今週は後半、個人的に比較的時間に余裕があって助かった。
それらで彼が語っていたエピソードを全部書いていたらキリがないが、なるほどなぁと思ったのは、82年の名盤「For You」が、それまで予算がなくてギリギリの曲数をレコーディングしてそこから選んで毎年アルバムを「出さされて」いたのが、「Ride On Time」のヒットを受けて初めて、17曲レコーディングしてそこから8曲選ぶと言う作り方ができたと。
で、理想的な曲の作り方として、まずドラム(故青山純さん)、ベース(伊藤広規さん)と達郎とでリズムトラックを作って、メロディーは後から考えると言うのを、「For You」では初めて全曲でできたと。なんでそういう作り方をするかと言うと、トラックとメロディーのリズム構造を有機的にしたいからだと。「For You」以降は全部そういう作り方をしていると。
なるほど。以前に『全ての中でベストアルバムと言う意味では、「Ride On Time」の後に、思いっきり世間から期待されてる中で特大の場外ホームランをかっ飛ばした感のある「For You」がやっぱりNo1だと思う』って書いたけども、それは偶然でも何でもなく、必然的な成り行きだったってことね。
リズムトラックから先に作ると言うやり方は、近年のRapとかHipHopとかでは普通にやられていることだけど、今から40年近く前に、既にそういうことをやってたっていうのがすごい。
ぼくもたまにだけども曲を作る時に、リズムパターンを打ち込みながらメロディーを考えていくってのはやるけども、てかそうじゃないとうまく曲として仕上がらないと言う感覚はなんとなくわかるけども、先にリズムトラックを完成させちゃうってのはできないなぁ。だってメロディーより前にコード進行を決めるってことだよね。なるほどなぁ。
明日の「関ジャム」では達郎の静止画ロングインタビューの後編が放送され、ジャニーズ提供楽曲のこととか、奥様竹内まりやのアルバムのプロデュースのこととかを語ってくれるようで、誠に楽しみだ。Kinki Kidsが来月リリースする新曲を、夫婦で両面カップリングで作ったという情報が昨日発表--日テレ「スッキリ」の金曜週替わりの「天の声」になんと竹内まりやが出演!--されており、インタビューもそれに合わせて2回に分けて放送するってところがなかなかあざといが、先週観られなかった方もお観逃しなく。
なんにせよ、自身は別にプレイヤーとして売れようという気はさらさらなく、レコードのプロデューサーをやりたかったのだと言う齢69歳のミュージシャンが、40年前と声域も変わらず、これだけ素晴らしいものを作り、これだけ世間からリスペクトされ、推され、この夏47公演もの全国ライブを行っているということが、本当にすごい。
いい音を作りたい、聴かせたい、という根本的な欲求で、「好きこそものの上手なれ」を見事に体現してしまった達郎さん。後期高齢者になっても、がんばって活動し続けて欲しいなぁ。
さて、今日はこの他、手術開けの孫が、約2ヶ月近くぶりに我が家に来てくれたのだけど、その話は来週に回しますね。いやしかしかわいくて楽しかった。年寄りには楽しみが多いってことが何よりの良薬だよね。
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