Stevie Wonderのこのタイトルの名曲は、'72年に発売されたものだから、当時ぼくはまだ小学生だったことになる。やっぱStievieはすごいなぁ。そのころからずっと一線で活躍し続けてるのって、Rolling Stonesと彼くらいでしょ?
って話を書きたいわけじゃないんだけどね、今日は。前に書いたUFOを"信じる"話とか、中国餃子事件とかに絡んで、いわゆる中世的な迷信ってなくなったようで、当時ほど神仏がらみではないにせよ、現代にも厳然と生き残っていて、特に食だとか環境だとか健康だとかに関わることって、そう言うのが多いよね、って話。
奇しくもまさに「健康」という名前の我々のバンドのシンパでもいてくれて、ご自身の経験からBPD(境界性人格障害)やAC(アダルトチルドレン)につい てを中心に、深い洞察と、往々にして芸術性をさえ帯びた名文を、ご自身のブログに数々アップしていらっしゃるisshyさんが、「DHMOをなぜ禁止しな い?」という、ぼくは知らなかったんだけど科学教育界では割合有名なジョークについて書いておられて。
このジョークについてはここでは詳しく語らないけど、(以下ネタばれになります。すいません)"DHMO"っていうのは、水酸化物の一種で、末期癌患者から採取した癌細胞には多く含まれているとか、酸性雨の主成分だとか、農薬散布時にも大量に使用されるとか、なのになぜ各国政府が使用禁止にしないのか?っていう問いかけをされた人のほぼ全員が、それは禁止すべきであると答えた、と。で、タネを明かすとつまるところ、"DHMO"ってのは一酸化二水素、つまり水ですよ、って話でね(詳しくお知りになりたい方はコチラを参照)。
つまりことほど左様に、デマが生まれ、迷信と化すのは簡単なことなんだよね。
また、環境のためにいいからと、例えば割箸は使わない、ハイブリッドカーに乗るなどがあるけど、割箸ってのは通常、材木を取った残りの端木を材料に使うので、使わなかったからと言って木を切る数が減るわけじゃないとか、ハイブリッドカーの開発、製造、廃棄処分などには多大なエネルギーを使うために環境負荷は大きいとか、逆の指摘をする声もある。
まぁエコバッグを使う、みたいなのは、レジ袋メーカーは打撃を受けるかもしれないけど、あまりマイナス面は多くないように思えますけどね(ぼくの知識不足ならご指摘ください)。
上記のDHMOについて詳細に語ったサイトでは、『塩化ビニールやダイオキシンよりも、車の害の方がよほど大きい。が車は便利だし自身もその便利さを享受していることが多く、自らも加害者となってしまう。そこで、攻撃の容易なダイオキシンなどをバッシングする。ダイオキシンや塩化ビニールへの対処ももちろん重要だが、科学の目を失えば行き着く先は偏狭なカルトである。「人は正義を行っていると確信しているときに、最も邪悪な行動を平然と行うことができる」との警句を常に忘れてはならない(一部要約)』と述べている。
特に食とか健康とかに関わる話になると、昨年の関西テレビの捏造事件も記憶に新しいけど、結構迷信に近いことが平然と行われている。いわゆるフードファディズムというやつだ。
その一つが遺伝子組換食品だ。ぼくはもちろん専門家じゃないので100%確信を持って以下の趣旨を述べるわけじゃないけど、遺伝子組換食品が危険だ、というのは、ほぼ間違いなく迷信のように思える。というのは、遺伝子組換って言うのは、主としてタンパク質の中のアミノ酸の配列を変えることによって、新しい形質を生み出すんだけど、これらが口から食べて人間の体に吸収されるときには、体内でアミノ酸レベルまで分解されて吸収されるので、その並び順がどうかは関係ないはずだよね。
遺伝子組換食品に、品質表示などの規制をかけている国は、世界で日本とイギリスだけのようだ。確かに食品衛生法では、原材料の分別生産流通管理が行われている遺伝子組換え食品の場合、原材料の上位3位以内で、かつ、全重量の5%以上を占める材料が 遺伝子組換材料であればそれを表示すること、分別生産流通管理が行われていなければ、「遺伝子組換え不分別」と表示することが定められている。しかし厚生労働省も農林水産省も、遺伝子組換食品は、もちろんいろんな手を尽くしての上でのことだけど、危険性は小さいという立場だ。
しかも最近は、大豆、トウモロコシをはじめ遺伝子組換が行われている8つの植物のうち、材料にいくつを含むかにもよるけど、すべての原材料を分別生産流通管理することは、ほぼ不可能に近くなってきているらしい。
そのこともあってか、最近は「遺伝子組換でない」という表示をやめるメーカーも多くなってきてるようだ。そもそも食品衛生法で定められているのは上記のとおりなので、「遺伝子組換でない」という表示自体、任意表示、つまり各メーカーが勝手にやっている、いわば宣伝文句だ。だから表示しないことももちろん自由なんだけど、遺伝子組換は危険ではない、と明確に宗旨替えしたならまだ許せるけど、世間がだんだん沈静化して来たので、現実にも難しいし、なし崩し的に表示やめちゃえ、っていうスタンスだとしたら、それもいかがなもんなんだろう。
だいたい、今おいしいおいしいと言って食べているコシヒカリにしろササニシキにしろ、複数品種を交配してできたものだけど、交配と遺伝子組換は、本質的には同じことだ。それがたまたま交配という自然現象かそうでないかの違いだけ。また遺伝子組換食品には安全基準が厳しく設定されていて、数々の試験をクリアしないといけないようになっているけど、自然食品にはそんな基準はない。すべての自然食品が安全だという保証もないことを思うと、果たしてどっちが安全なんでしょう?
医薬品なら臨床試験とかが義務付けられていて、その効能には保証があるんだろうけど、健康食品なんて、結構怪しいじゃん?今をときめく"ヒアルロン酸"だって、塗付したり注射したりならわかるけど、高分子化合物なので、口から摂っても消化の際に分解されてしまう上に、それが血管中を通って患部に行き、効くという可能性はほぼない、という意見もあるようだ。もしそれが本当だとしたら、ヒアルロン酸配合食品は、その効能を謳うことは詐欺(広告では「効果には個人差があります」で逃げてるけどねぇ)であるうえ、精製がそれなりに難しいヒアルロン酸の無駄使いに他ならないことになる。
こういう迷信が世上に膾炙するメカニズムは、社会学の分野かもしれないけど、例えば遺伝子組換でいうと、クローン人間だとかなんだとか、まったく同じ遺伝子形質を持った他人がいることの気持ち悪さみたいな根源的な拒否感があって、増幅されてしまうんでしょう。それから、例えば遺伝子組換によって害虫に強い形質を持った植物なら、人間にも悪くないわけはないという信じ込み。そんなことはないらしいんだけどね(これについてはコチラに詳しく解説が)。あとはやっぱマスコミが無責任に煽るのがよくないんだろうね。
だけど遺伝子組換技術をこんな迷信で無効にしてしまうことこそ、例えばその害虫に強い形質となった大豆とか、そういうものを拒否することで、農薬の使用抑制に逆行してるわけで、科学の進歩や経済的有効性を犠牲にするのみならず、環境問題や食の安全そのものにも逆行していることに、思いを至らせるべきだよね。
もっとも、もともとぼくの実家は父親が化学会社でまさにそのヒアルロン酸の生産に関わっていたりとか、兄は生化学科(バイオテクノロジー)の出身で今は某食品メー カーに勤めており、ひと様よりは割合、遺伝子がらみのことに子供のころから触れてきていたので、この辺のところにそれなりの免疫があるから、そういう原初的迷信を疑う気質があるのかも しれないけどね。
まぁ遺伝子組換を安全だと言い切ることは法規制ではできないんだろうけど、少なくとも健康食品とかアンチエイジング化粧品みたいなものについては、きちっと法制度を整えた方がいいと思うけどなぁ。
とにかく迷信的なのはなるべくやめませんか。今はNetで調べれば相当な情報が簡単に手に入るわけでね。「雷が鳴るとへそを取られる」みたいなのに等しい、いや、個人的にはそう言うのって嫌いではないけど、それはそれとして、実際的な行動レベルの中では、なるべく科学的にもの考えようよ。
今回は"Superstition"ってタイトルでこれ書いたけど、なんかシリーズ化してるなこの手のネタ。勤勉で教育水準が高いといわれる日本人だけど、こういうの見てるとホントかよ、って思っちゃうんだよね。我慢ならなくて。なのでこれからも書いて行くんだろうな、迷信がらみについては。
迷信とはちょっと違うかもしれないけど、ハロー効果というか、自分のダンナやカミさん、恋人のある特質を捉えて、「男の人って」とか「女ってやつぁ」ってなっちゃうみたいなこともね。おかしいよねぇ、あれも。いずれ書こう。
てことで長くなってすいませんでした。
isshyです。馳せ参じました。
もんのすごいうなずきながら読みました。
床に打ちつけたアゴが痛い(嘘)
遺伝子組み換え。そうそう!
消化されちゃうのに何ゆってんだって私も思ってた(笑)
ただ花粉が飛んで遺伝子組み換えでない
隣の畑もいつのまにか受粉しちゃうかもだから、
管理が難しいなぁ~とは思ったけれど。
割り箸も、ヒアルロン酸も。いえてるいえてる!
あと、例えば太陽電池のパネルとかも。
生産から廃棄のライフサイクルで考えたら損特ワカラン。
人って、中途半端に科学っぽい論説に弱いと思うんだ。
あと、中途半端な統計とかね。
だから、よぉく目を凝らして情報を吟味したいです。
「人は正義を行っていると確信しているときに、
最も邪悪な行動を平然と行うことができる」
本当ですよね。肝に銘じたいと思います。
投稿情報: isshy | 2008/06/30 23:03
isshyさま
突然お邪魔して、すいませんでした。
DHMO、なるほどなぁ、っていたく感銘を受けて、それにインスパイアされて
書いてったら、isshyばりの超長文になってしまいました。
今日の夕刊に、従来の1/5のコストで作れるシリコン製でない太陽電池が、
この秋、各メーカーから発売されるという記事が出てましたね。
こういう科学の進歩は、大歓迎ですよね。経済原則を満足すること、
これも立派な科学の進歩であり、立派な「正義」の1つ。
「なんでシリコン太陽電池を皆もっと設置しないんだ!」って怒ってみても、
無理なものは無理だし、そこには何も進歩は起こらない。
何が本当の「正義」か、常に視野広く観ることができる人でありたいものですな。
投稿情報: Tacovo | 2008/07/01 01:29