この日は午後1時半頃からおばあちゃんの家で、仏壇を閉じるための供養があり、それから菩提寺である「専照寺」に移動して、13回忌の法要を行うってことで、午前中は時間があったため、カミさんとどこに行くか相談する。
カミさんは最近、朝早くに目が覚めてしまうため、ラジオや各種サイトの朗読をよく聴いているのだけど、今年は大河ドラマの放送もあり、ここんとこ「源氏物語」の現代語訳にハマっていて、紫式部が若い時に、越前国司として赴任した親父さんと一緒に1年ちょっと来ていたことを記念して造られた「紫式部公園」に行きたいという。
国府の実際の役所がどこにあったかは正確には定かでないようだが、場所が武生(たけふ・今は越前市の一部)だったことは確かで、「紫式部公園」はこの武生の、駅からタクシーで10分ほどの場所にある。武生までは福井から旧北陸本線、今は第三セクターの「ハピライン福井」が運行している電車で30分弱で行けるのだが、この路線は2両か3両編成の鈍行だけが30分に1本くらい走るローカル線になってしまっている。
北陸新幹線が敦賀まで伸びたため、今は米原から来ようとするといったん敦賀に出て、この「ハピライン福井」かまた新幹線に乗り換えるしかなくなり、福井から関西方面へのアクセスは格段に不便になった。義弟夫婦はつきみ野に住んでおり、最寄りの新幹線駅は新横浜なのだが、それでも東京駅に出て北陸新幹線の方が早く、そのルートで来たという。
朝8時半ごろの「ハピライン福井」で武生駅に行き、タクシーに乗って9時ちょっと過ぎに「紫式部公園」に着く。公園自体はそれほど大規模なものではなく、 庭園と、寝殿造り様式の建物の一部を復元した釣殿、金色の紫式部像などを周って、併設された「紫ゆかりの館」の展示を観る。市が運営しているため無料なのだが、紫式部のここでの生活や当時の風俗、「源氏物語」を書くに至った経緯などの展示がなかなか充実している。朝早いのに結構人が多く驚いた。
10時過ぎにタクシーを呼んでここを後にし、11時頃に福井に戻って、今度は駅前の複合施設「ハピリン」にある「セーレンプラネット」に行く。ここはプラネタリウムを併設し、子供向けの宇宙に関する展示--これもなかなかよくできている--をしている施設なのだが、義父の母方の叔父、F博士という人が、低温度星について偉大な発見をした天文学者で、その功績の展示と共に、義父がF博士にインタビューしたビデオが観れるというのでね。
それからこの「ハピリン」の1Fのソースかつ丼屋さんでメシにし、この日は「ふくちゃり」というレンタサイクルを借りる。1日1,430円で乗り放題なのだが、この日は移動が多いため、タクシーよりは安いよね、ってことでね。朝、駅前のサイクルポートにたくさんあったチャリが、昼には1台もなくなっており焦ったが、案内所で訊いたら駅の北口寄りのポートには5台あるってことで、これをWebサイト上の手続きで鍵を解除し持ち出す。電動チャリってのは楽だし速いね。
1時ちょっと前におばあちゃんの家に着き、まずお坊さんに来てもらって仏壇の供養、それから「専照寺」までまたチャリで移動する。15分くらいかな?このくらいの距離だと、呼ぶ時間まで考えると、タクシーでもチャリでもほぼ変わらないか、むしろチャリの方が早い。
「専照寺」で13回忌の法要を行い、墓参りをして、それからまたおばあちゃんの家にいったん戻る。仏壇と、追加で出た花瓶や皿なんかを、柳楽優弥似の古道具屋のお兄さんに引き取ってもらうためだ。前々日の1万円に加え、さらに5千円を払ってくれた。
それから、駅とおばあちゃんの家の間にある、福井に行くといつもケータリングをお願いしていた「小松屋」さんに行き、魚介中心の刺身や煮物、揚げ物なんかをいただく。これも美味だし、なんだか懐かしい。ここで、翌日は行き先がバラバラになるため、いったん解散だ。
4日目は朝8:52分の、東海道新幹線の「こだま」に当たる北陸新幹線「つるぎ」に乗って金沢に向かう。手荷物預かり所に荷物を預け、北陸鉄道グループのバスの「金沢市内1日フリー乗車券」を買う。800円するが、4回以上バスに乗れば元が取れるのでね。
福井には何度も来ていながら、石川県は基本通り抜けるだけで、のとじま水族館とか手取渓谷とかには行ったものの、金沢市内というのはぼくら夫婦は一度も行ったことがなかったのよね。カミさんは子供の頃連れてこられたことがあるらしいけど、ほぼ記憶にないと言うし。
今回はそのカミさんが金沢で行きたいところとしてピックアップした場所を、市内周遊バスで順に巡ることにした。まず向かったのは「ひがし茶屋街」と「主計(かずえ)町茶屋街」だ。かつての茶屋(≒揚屋。芸者さんが雅な芸で客をもてなす社交場)街が伝統的建造物群保存地域になったここは、 昔ながらの格子戸の建物が並んだ美しい街で、今はその多くにカフェや工芸品のギャラリーなどが入っている。
こういう有名な観光地は多くの訪問客で賑わっており、しかも半分以上が外国人と思われる。今年はインバウンドの人数も経済効果も過去最大になる見通しとのことだが、金沢のような地方都市にもその恩恵が広がるってのは、ありがたいことだよね。
国の重要文化財になっている「志摩」という茶屋を見学--ここのお客さんもほとんどが外人さんだった--し、「宇多須神社」にお参りして、浅野川を挟んではす向かいの位置にある「主計町茶屋街」も観てから、ちょっと待ってバスに乗り、次の停留所「兼六園下・金沢城」に行く。
「兼六園」の入口付近にある「堤亭」というそば・うどん屋さんで昼食にしてから、有名な「兼六園」を観て回る。「霞が池」という広い池や、林や庭が美しい庭園だが、中にある重要文化財で、加賀藩13代藩主が母のために建てたという「成巽(せいそん)閣」は、なかなか重厚な佇まいで、今はその建物内で「王朝文化と前田家展」という展示をやっており、けっこう面白かった。
それから「兼六園」を出て橋を渡って向かいにある「金沢城公園」に行く。ここは度重なる火災や、戦時中軍に接収されたり、その後は金沢大学の敷地になったりして、重要文化財として残っているのは長屋や倉庫、入口の「石川門」だけなのだが、江戸時代後期に加賀藩の政治の中心であった二の丸近辺の建物が次々と復元されつつある。
二の丸の周りを囲む「五十間長屋」は復元が終わって中に入れるようになっており、木組みや防御のため菱形に造った櫓などが再建されて、当時の技術の高さが偲ばれる。この窓からのぞくと、二の丸の御殿復元作業の様子も眺めることができ、遺跡発掘調査のようで興味深い。
重要文化財の建物や、西側にある「玉泉院庭園」--能登地震で一部通路が通れなくなっており、庭園内には入れなかった--などを観てから、また「石川門」を出て、バスを待つ間ソフトクリームを食べる。金沢には金箔を被せたソフトクリームがあちこちで売っているのだが、インスタ映えのために500円余計に出す気にはなれなかったので、普通のやつにする。
カミさんがソフトクリームを食べ終える前に来た周遊バスに飛び乗り、ぐるっと回って、金沢の経済の中心街「香林坊」に行く。ここは少し裏に入ると「長町武家屋敷跡」と呼ばれる古い武家屋敷の街並みが残っている(冒頭の写真ね)。
ここでは全部の公開館を観ることはしなかったが、一部当時の「中間(ちゅうげん)」の生活が偲ばれる建物や、他藩に較べて裕福だった足軽の家などを観て歩いた。足軽屋敷は2棟あり、片方が清水家、もう一方が高西家というのだが、この高西家の方のトイレのドアに、『使用できません 清水家は使用できます』という札が貼ってあって、これは清水さんという人なら使っていいってこと?と笑ってしまった。
それからまたバスに乗り、金沢駅に戻って、お弁当やお土産を買って、夕方6時前の「かがやき」に乗って帰って来た。けっこう歩いたためか、弁当を食べビールを飲んだら眠くなって、起きたらもう熊谷辺りを走っていたので、感覚的にはあっという間に着いた。
ということで福井金沢かたづけ旅の記録はおしまい。ずっと天気がよかったのはありがたかった。来週は今度は東北新幹線に乗って個人的には約50年ぶりの平泉に行くので、またブログを書くのは遅れるかもしれません。
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