震災直後に書いた記事と、趣旨的には何ら変わってない話を、またさせて頂くことになっちゃうんですけどね。
福井地裁の樋口裁判長が、高浜原発の再稼働差し止めを命じた件を取り上げたワイドショーで、武田鉄矢が、「原発を止めることが正しい答えなんだけど、経済的な事情があり簡単にはいかない。我々TVで食ってる者の例で言うと、放送を1日6時間止める覚悟を持って再稼働を認めない決心をすべき」と発言したことが、ネットで議論を呼んでいるらしい。
この件を痛烈に批判する記事が出て、これをFacebookでシェアし、そうだそうだと、単細胞とか、頭悪っとか、醜い馬鹿とか、人間のクズとか、それこそ醜悪なコメントの嵐になっているスレを、友人に見せてもらった。この記事、「原発推進派がヒステリー!」っていうサブタイトルがついてるんだけど、これらを見る限り、ヒステリーは明らかに原発反対派の方だ。
この記事の趣旨は要は、経済的事情って言うけど、原油価格が下がっていてこの4月には電気代下がったし、それは専門家もしばらく続くって言ってるよ、原子力発電は安いって言うけど、原発の建設コストとか核燃料の処理、廃炉の費用とか考えたら、全然そんなことはないと。
ぼくは決して原発推進派ではないし、いわゆる原発推進派が既得権益にしがみつこうとしている構造も、一部の方々については多分事実で、それは中世の悪代官と悪徳商人の癒着に似た構造が、ある意味今でも残っちゃってるんだなぁとも思うけども、一方でこのあまりにひどい我田引水論理には、やっぱり背筋が寒くなる。
だって、震災以降、震災前に比べて、家庭用で2割、電気代が上がったのは事実だし、原油価格は下がったって言うけども、今の原油価格の暴落状態は、確かにアメリカのシェールオイル(深層埋蔵石油)の採掘コストが一つの目安になるので、落ちる前の水準までは戻らないとしても、そのまま続くとしているエコノミストはいないみたいだよ。
さらに「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」のコストを賄うために家計が負担させられている賦課金が、5月からこれまでの倍以上の1.58円/kWh(標準的な家庭で474円/月)に値上がりすることは、どのくらいの人が理解してるんだろう?そして原発反対派の皆さんは、これはやむを得ない負担なんだと、誰もが納得して受け入れるんだろうか?
そもそも、化石燃料での発電比率を増やすことで、CO2排出量が増えてしまう問題に、全く触れないってのは、明らかに公平ではない。
大体、「TV放送を1日6時間止める覚悟」って、例が悪い、というか消費者感覚に立ってないってのは事実だとは思うけども、武田鉄矢だって、原発を推進しよう!って言ってるわけじゃない。それを、「TV6時間止めるくらいなんでもない、やればいいじゃん」って突っ込むのは、単なる揚げ足取りだ。なんだか集団ヒステリー、米騒動、魔女狩り感が漂ってるんですよね。
原発は建設コストとか廃棄・廃炉コストまで含めると高い、って言うんだけど、今現在既に原発は作っちゃってあるんだから、今後の費用対効果ってことで言うと、建設コストは計算に入ってこないし、廃棄・廃炉はどっちみちやらなきゃいけないんだから、だとしたら今の設備と燃料でなるべく多く発電してからにした方が、明らかに経済効果は高い。
何が何でも反対、って言うんじゃなくて、現在の状況から、どう持って行って、どういう状態にすべきなのか、そのためにどういう技術の進歩が必要で、だとしたら国家予算をもっとそっちに振り向けるべきだと言う議論こそ建設的で、近視眼的な原発推進vs反対の議論ってのは、100%無駄だとは言わないけども、ほぼ不毛だと思う。
昨日、経産省が、2030年のエネルギーのベストミックスってのを発表した記事が新聞に載った。原子力が20~22%、再生可能エネルギーが22~24%という、なんか各方面の顔色を窺って作りましたって感じの数字なんだけど、こういう指標を示すのは大事なことで、作らないよりは作る方がだいぶマシだ。
ただ、廃炉とか核廃棄物の処理にかかる時間を考えても、エネルギー政策って、たかだか15年後の話だけしててもダメで、100年単位でモノを考える必要がある。2030年のその先はどうするの?って方向性を示してくれないと納得感はない。難しいことはわかるけどね。そんな先の技術開発状況なんて、予測困難だもんね。
経済的問題、CO2問題を考えると、原発の短期的な再稼働は必要なんでしょう。だけどこのベストミックスの原子力発電水準を確保するためには、40年経った古い原子炉を廃炉にする前提だと足りないはずなんだよね。その分は十数基を延長利用する、ってことらしいんだけど、その際の安全性基準はどうなるの?
福井地裁の樋口裁判長は、「10年に5回、想定を超える地震が起きている。今の原子力委の安全性基準は緩すぎる」って判決理由を述べたようだけど、だったら10年に何回ならOKなの?そのためにはどのくらいの追加コストがかかるの?あるいは何らかの技術開発で、その危険性が低コストで収められるようになるの?っていう議論をしないと先に進まない。
一方で再生可能エネルギーの課題もいろいろとわかってきている。太陽光や風力は、天候に左右されるので、ベース電源としては使えそうもない。となったら、波力、地熱、バイオマスはどうなの?それらを安定的な電源とするための技術は今どこまで来ていて、今後どのくらいの時間とコストがかかるの?
化石燃料がCO2を出すのだって、もしかしたらなんらかの技術開発で、抑えるなり分離回収して別のものとして処理するなりって技術が開発できるのかもしれない。
さらに、別のベース電源候補はないの?って議論も必要だ。
核融合発電って知ってる?つまり太陽や恒星のエネルギー源を地上で作りだして発電に利用しようって話。これまた「核」がつくのでアレルギー反応を呼びそうだけど、低レベル放射性廃棄物は出るものの、原子力発電では核分裂がエネルギー源で、そのために核分裂の連鎖反応とか、放射性物質が燃料となるのでその運搬時とか、リスクはどうしても残るのだけど、核融合は重水素とリチウムが原料で、いずれも海水から取り出せ、そう言ったリスクはない。
核融合発電はこれまでもずっと、あと30年、あと30年と言ってきて、オオカミと少年みたいに言われつつあるみたいなんだけど、現在日本国内にある実験設備と、フランスに日本も含む各国の合同で実験施設を建設中らしく、ある日本の技術者は、現在7~8合目まで来ていて、これからの30年は「現実的な30年」だと言っている。
さらに他の電源候補もあるのかもしれないけど、それらの技術の中で、どれが一番現実的で費用対効果が高いのか、そこに集中的に予算を投下し、技術者を育てる、そのための議論の方が、目先の原発推進vs反対の議論よりは、よっぽど大事だし実際的だ。そしてそういう技術や安全性基準のような話を、一般市民にもわかるように時間を取って説明する努力を、政府もマスコミももっと行うべきだ。そうしないことで、重要な技術がスポイルされていく。
原発反対、何が何でも反対、っていう主張は、錐のように、「この場所に穴をあける」という目的がはっきりしてるからわかり易いし力強いけども、その場所に穴をあけることしかできない。錐と錐が議論したって、お互いにその場所しか見てないんだから、かみ合うわけがないし、妥当な結論を得られるとは思えない。
あの首相官邸のドローンも、出頭してきた自称"官邸サンタ"氏、政府の原子力政策に抗議して、福島の海岸の砂を届けた、ってことらしいじゃん?ほらほら、だんだんエキセントリックになってきたよ。みんなが支持してれば、犯罪に類することでもやっちゃっていい、っていう。魔女がホントは人間だってわかってても、火あぶりにしちゃってもOKっていう、人類が脈々と受け継ぐ迷信的体質、出てきてんじゃない?
ドローン規制かぁ。確かにまぁしょうがないけどねぇ。人混みの上で飛ばしたりするのは危険ではあるしね。
だけどあの超名作、OK GoのI Won't Let You Downを観て以来、ドローンいいなぁ、って思ってたのが、ある優秀な機種が4月末に発売ってので、老後の楽しみ?に、期待してたんだけどなぁ。いや、ちょっと機種選定に入ってみてたりしててですね、情報収集してたんだけどね。
ダメなのよ、1万円前後の、普通のラジコンに画素数の低い安いカメラを取り付けたようなものじゃ。熟練者でないと、飛ばしたり、制止させたりするだけで手いっぱいになっちゃう。
今回発売されるParrot Bebop Droneは、もう半分コンピューターそのものでね。トラブってもHomeボタン押すと決めた場所に戻ってくるとか、最初に飛ぶルートを入れといてGPSでその通り飛ばすとか、もうすごいんですよ。で、そうでなきゃラジコンもカメラもプロじゃない人には、うまいこと空撮なんて、しょせんできないんですよ。その優秀なドローンのコンシューマー向け機の、日本での待ってました!の発売開始だったのに。
そういう違いに関係なく、いっしょくたに規制されちゃうんだろうなぁ。これも技術の進歩のスポイルの一種だよね。困ったもんだよなぁ。迷信的な脱原発教にも腹立つし、二重の意味でバカヤローだよこの事件。
てことで長くなりましたが、いよいよ満開になった我が家の芝桜、今日エアコン屋さんが来たため珍しく午前中に起きて待ってる間に、写真撮ったので載せておきますね。このままGWもずっといい天気だといいんだけどなぁ。
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