会社の部下の奥さんが今週、自転車事故に遭ったそうだ。なんだと思ったら、相手はポケモンGOをやっていて、よく前を見ていなかったと。ケガ自体は大したことはなかったものの、彼女はかなりキレていたという。そりゃそうだろう。どうしてそこまで自制が効かない愚か者が世上に蔓延してしまうのか?
昨日の日経の社説には、『調査会社のMMD研究所によると、15~69歳の男女の9割がポケモンGOについて知っており、約4割が実際にプレーしていると答えた。配信開始から1週間足らずでポケモンGOの利用者が全国で3千万人を超えた計算になる』と。これはすごい。1つのゲームがここまでの社会現象になったことは、恐らくかつてなかったと思われる。
写真は金子恵美衆院議員が、議員会館にゼニガメがいたとTwitterに上げたものだが、官房長官がわざわざ会見で、首相官邸や公邸をポケスポットの除外対象にする要請はしないと発表までしたという。ちなみにこの金子議員、例の"ゲス不倫"で辞職した議員の、離婚を踏み留まった奥さんであり、このツイートには仕事の一環としてチェックしている旨の但書を入れていたが、2ちゃんあたりではいろいろと突っ込まれているらしい。
一方で、世間の評判につられてダウンロードしてみたものの、何が面白いのかよくわからないという声も、ぼくらの同世代のFB仲間なんかからは多く聞かれる。こちらもそりゃそうだろう。子供のころGameBoyでポケモンをやり尽くし、カードを集め、少なくとも第2世代までの250種くらいは全部憶えていて、TV放送していたポケモンも毎週見ていたような、今で言うと20代後半から30歳前後くらいまでの人でないと、わからんでしょうそりゃ。
うちの息子はまさにこの世代で、ぼくも子供たちが観ているTV番組を付き合って観たり、なんかいろんなグッズだのアイテムだのを入手するのにつき合わされたりした。
忘れもしない、昔、ぼくが前にいた会社リクルートと任天堂が作った合弁会社で開発中の新カードゲームかなんかのモニターをやってくれと頼まれて、今ぼくが通っている代官山の駅を挟んで反対側、今は門構えだけ残ってコインパーキングになっている古い日本邸宅をリフォームしたオフィスに、当時小学校3年くらいだった息子を連れて行ったら、次から次に画面に映るポケモンのシルエットを、シルエットだけで全部名前を言い当て、担当者に「すごいねぇ~」と言われたことがあった。
つまりはそういう世代が、AR(拡張現実)とやらで、かつてのゲームやTV画面内で行われていたことを、現実の街角でできてしまうという、そこに感動できるものなのであって、ポケモンの名前も知らず、 そういうかつての状況に浸かってもいなかった人には、そんなに響かないのは当たり前だ。
例えば画面を通して見た実際の街のビル群が、インベーダーの落とす爆弾--何十回かに1回はUFOも飛んできたりして--で上から崩れていくのを、ビル陰から狙撃して防御するとか--ちなみに、ビルが崩れたりまではしないけども、これに近いARゲームは既にいくつかあるらしい(写真=「Space InvadAR」)--、もっと古いところでは、画面を通して見た街中でゴジラとガメラが盛大に戦っているのを、自分はハヤタ隊員になって止めに行くとか、そんなんだったらちょっとやってみたいかな、って思わない?こっちは権利関係が難しそうだけども。
だけどそのポケモン世代ってのは、初婚平均年齢がだんだん上がってきて、東京では男女ともに30歳を越えている昨今、自由に遊びに使える金を最も多く持っている小金持ちであり、昔から「F1層を掴め」と言われている通り(ポケモンに関してはFでなくM中心かも知れないけど)、マーケティング的なターゲット設定としては極めて正しい。しかもスマホをもっとも使いこなしていると思われる世代だ。
しょせんぼくらはもう年寄ですからね。仮にそんなぼくらの世代に合わせたARゲームがあったとしても、確かに子供がそろそろ手が離れ、金には少し余裕が出てきてるかもしれないけども、いかんせん、スマホを使いこなしているとは言い難いでしょ。平均的には。キーボード入力よりフリックの方が速いし楽だって世代には、しょせん敵わないじゃない?つまりぼくらのような世代をターゲットに、そんなゲームを苦労して作るだけの商業的見通しは立ちづらいよね。
そうなると、この時流に乗っかって株で儲けようってくらいが、せめてもの我々世代の「意趣返し」になるのかもしらんけども、これまたなんともあさましい値動きだ。任天堂株は、6月28日に年初来安値の13,280円だったのが、その3週間後の7月19日には、約2.5倍の32,700円に跳ね上がった。
そんで、もともとポケモンGOのライセンス料を受け取る権利のある子会社ポケモンは、持ち分法適用会社だから、業績が100%響くわけでもないし、今回のポケモンGOの好調も、秋に任天堂自身が発売予定のポケモンGO Plusという機器も、既に業績予想に織り込み済みだと発表されたとみるや、今度はストップ安になり、今は21,000円台だと。冷静なのは任天堂自身と、大手の投資会社だけ、一番儲けたのも投資会社、という、わかってた結果になった。
なんかさぁ、こういう狂騒って、なんで起こるんだろうね。いや、全然わからないとは言わないし、日本でDL解禁になった7月22日には、お、やってるやってる、ってぼく自身も周りを観察してみたりはしたけども、話題のもの、流行りのものにすぐに飛びつくのは、ひねくれものの私としては、どうにもみっともない感、あさましい感がぬぐえないんだよね。
任天堂の株価分析レポートにあった、『ローンチ前から大きな話題となったことで「遊ばないと周りから取り残される感覚」が早いタイミングで潜在利用者群へ広がる可能性はある』、ま、言ってしまえばこれに尽きるということなのだろうけども、別に取り残されたっていいじゃん。
いや、オレは、私はそうじゃない、今人口に膾炙しているものがどんなものかってのを、知っておくことに意味があるんだ、やってみてもいないのに批判できんじゃないか、ってのもね、わかんないじゃないけども、別にわざわざ自分でやってみなくたって、ネットとかで見れば大体想像つくじゃん?そんな難しいゲームじゃないんだし。
もともとぼくは、パズドラもグラブルも別に興味ないし、スマホゲームってものをほぼやらない--たまーに読む本とか、他のエンタメがすべてなくなって、電車の中で時間を持て余した時に、麻雀ゲームをやるくらい--ので、感度が低いのかもしれないけどね。こういうこと言うと今時バカにされるのかもしれないけども、麻雀とかオセロとかそういう一般化し定着したものは別として、他人の作ったロジックに乗っかって、そのロジック内のみで生かせるノウハウを身につけることって、人生最大の時間の無駄だと思ってしまう方なので。
てかさ、そもそも歩きスマホをしてるヤツを見ると、特にそういうヤツの後ろを歩かされて自分の進みたいスピードを制約されると、すっごい腹が立つんだけど、この、「周りから取り残される」感に端を発した楽しさ、面白さという、極めてパーソナルで身勝手なワガママで、他人さまの邪魔になるばかりか、入っちゃいけない場所に踏み入るとか、交通法規違反で事故を起こすとか、って話を聞くと、この国の--この国だけじゃないのかもしれないけど--民度はどうなってるの?って思うよね。
てかその前にぼくのスマホはAndoroid4.2で、そもそもポケモンGOがインストールできず、OSのアップデートも不可なのだけども、実はストライク世代である息子のスマホも同じ。ストライク世代としては、スマホを機種変してでもやってみたいって思うもの?って聞いてみたら、いや、タダで機種変できりゃ別だけど、金かけてまでやりたいとは思わない、だって。
うーむ、スマホもポケモンも知り尽くした奴が、一番醒めてるな。
※冒頭の写真はTwitterから、「SpaceInvadAR」の写真はTechCrunchからお借りしました。問題ありましたらご連絡ください。
コメント