すんません。今日はたぶん結果的に、一般的にはかなりオタクな、ドラマー以外にはわからない話になるかも知れません。通常の日常ネタ枯渇のため、ご了承ください。
音楽番組を観ていても、商売(?)柄ドラマーに目が行くんだけど、観るたびにカッコいいなぁと思うのは、スカパラの茂木欣一さんだ。というのは彼は左利きで、ドラマーから見て--以下全てドラマーから見ての位置関係で書かせていただきますが--左側にあるハイハットを左手で叩き、スネアを右手で叩くという、右利きのぼくにとっては絶対に真似できない叩き方をするから、というのが大きい。
ドラムのシンバルの数や位置とか、タムの数やどこの場所に置いているかとか、一般の方はまったく気にしないのだろうと思うけども、実はかなり自由に変えられ、ドラマーによっても全然異なる。ただ、昔ながらの一般的なセッティングでは、バスドラの上に2つのタム--左側のほうがピッチが高い--と、右端に床に直接置くフロアタムの3つを置き、右にライドシンバル、左にクラッシュシンバル、というのが基本だ。
だけど例えば最近の流行りは、バスドラの上の右側のタムを省略し、左のタムとフロアタムのみ、もしくはそのセットの左タムの左に、さらにハイピッチのタムを置くセッティングだ。そして右のタムの位置に、ライドシンバルを持ってくる。このメリットは、通常の8ビートだと、拍子の頭を含む8分音符を、ハイハットかライドシンバルで刻むんだけど、そのよく叩くシンバルを低い位置に置くことで、右手が疲れにくと言うことだ。
だけどその代り、AメロからBメロ、Bメロからサビに行くときとかに、主としてタムをダカドコドコドコ、と叩くいわゆる「オカズ」の、その途中にライドシンバルがあることになるので、そういうセッティングにはしたことがないぼくのようなドラマーにとっては、フロアタムの場所を外さずに叩くのが難しいだろうなぁと思ってしまう。
左利きドラマーで最も有名なのは、往年のロックバンドの代表選手であるDeep Purpleの、イアン・ペイスだろう。彼の場合は、完全に普通のセッティングとは左右逆に、右側にハイハット、タムも右側のほうがピッチが高く、フロアタムは左側、ライドシンバルも左側という置き方をしていた。
ぼくが高1の時、無謀にもドラムを始めて2曲めにコピーさせられた「Burn」は、全編ドラムソロみたいな忙しい曲で、両手がタムの上をハイスピードで動いていく様はただでさえすごいのだけど、これを左利きでやられるとね、通常左から右へ行くところが逆になって、これがもうめちゃめちゃカッコよかったのよね。
だけど彼みたいに完全に左右逆にセッティングするドラマーは、最近ではあまり見ない。想像するに、フェス的な他のバンドもいっぱい出るイベントとかが増えてきて、その場合左右のセッティングを完全に逆にしようとすると、ものすごい時間がかかるので、通常は許されることではないし、そういったライブでなくても、練習スタジオのドラムは普通右利き用にセッティングされており、ドラム教室とかもそうだから、これをいちいち逆に変えていたら時間を食ってしょうがない、ってことだろう。
イアン・ペイスの場合は自前の練習スタジオを持っていてだろうし、昔はライブも、殊にDeep Purpleのような超ビッグネームでもあり、前座はいたとしても、他のバンドと対バンなんてことはなかっただろうからこそ、できたことなんだろうね。
スカパラの茂木欣一さんの場合、上記のようにハイハットの位置は左側だし、ライドシンバルも左に置いていて、その他シンバル類も、左手で叩くことが多いために、左側に多く集中させるという、かなり変則的なセッティングだ。
左手で左側にあるハイハットを叩くというのは、実はけっこう理にかなっていて、というのはドラムってのはスネアを強く叩くことでビートを生み出すんだけど、左側のハイハットを右手で叩くってことは、手がクロスした状態になり、スネアを叩く左手を大きく振ると右手にぶつかってしまうということが起こる。
なのでドラマーの基本として、スティックを肘から振るのではなく、手首のスナップを使って振り幅は小さく、かつ大きな音を出せるようにトレーニングを行う。そうすることで、叩こうとしてから実際に音が出るまでの時間も短縮されるから、リズムをオンタイムにしやすくなる。
でも右手でスティックを大きく振って、そんな一般的なドラマーの常識なんて関係ないやい!とばかりに叩く姿が、カッコいいんだよね。しかもスカパラの場合にはビートが超速いことが多く、この右手の振り上げが行われる機会が多いので、なおさらなんですよ。
だけど右利きセッティングで左利きの人がタムを使ったオカズを叩こうとすると、大変にややこしいことになる。通常のドラムのセッティングが、左右の手がクロスするようになっている、これが最大の理由だと思われるのだけど、スネアからハイタム、ロータム、フロアタムの順に2回ずつタカトコドコドコって叩こうとすると、右手からならスムーズな一方で、左手から入ると、ハイタムまではいいとして、その下は手がクロスするのでまず叩けない。
そもそもタカタカタカタカってリズミカルに机とかを叩いてみるとわかると思うけど、右利きの人は最初の拍以下の表拍を右手で、2番めの拍以下の裏拍を左手で叩かないと(左利きの人は逆ね)超叩きにくい。んでさらにこれを、左から右へ位置をずらしながらやってもらうと、右手から入ればやりやすいけど、左手から入る--のが難しければ右手から入って右から左へ位置をずらしながら叩いても同じなのでやってみてね--と手がぶつかってやりにくいでしょ?
てことは左利きの人が右利きセッティングでタムを上から流そうとすると、そこだけ右手から入らないとできないってことで、そういうハイブリッド型の叩き方が、普通に右利きの人だとまずできないわけね。以前に「健康」のドラムパターンを作る時に、シャッフル(3連)の曲の場合は、「運腕」を考えるのが大変だ、って趣旨の話を書いたと思うんだけど、つまりそういうことなんですよ。
茂木欣一さんは、観てるとあまりそういう単純なタム回しはやらない--というかタムのセッティング自体めちゃめちゃ個性的で、しかも毎回異なり、フロアタムを右に置いたり左に置いたり、前のタムが2つの場合は、右のほうがハイタムだったりする--ようだけど、その代り普通ではありえないようなパターンのオカズになるので、これがまた素晴らしい。しかもスカパラのあのハイスピードスカのノリを、時には走り気味におもいっきり突っ込んで引っ張ったり、そういうのもめっちゃカッコいいんですよね。
日本人だと茂木さんの他に、Fuzzy Controlというバンドの女性ドラマーで、ドリカム他多くの有名ミュージシャンのバックバンドもやっているSATOKOさんっていう人が、やっぱり右利きセッティングで左利きで叩くんだけど、先週の「関ジャム」にたまたま出ているのを観てたら、左手ハイハット、右手スネアで叩きながら、オカズでは右から入って回している。というか、右から入るのも左から入るのも自由自在にコントロールしている。それってすっげーことだ。
海外だと、Billy CobhamとかSimon Phillipsとかがやっぱり右利きセッティング左利きドラマーで、いずれも超テクニシャンとして有名だ。Billy Cobhamは1976年に出したGeorge Dukeと組んだバンドのライブ盤を持っているんだけど、学生当時にこれを聴いて、あ、ぼくはもうテクニックで秀でたドラマーになるのは無理なんだと思い知らされた人だ。
Simon PhillipsはJeff Porcaro(この人もスゲーんだけど)亡き後にTOTOのメンバーに加わった人だけど、最近では上原ひろみ、Anthony Jacksonとトリオバンドを組んでいるので、ぼくも聴く機会がよくある。この人の場合も、もうどうやっているのかもわからない、というかわかろうという気にもなれない、これをコピーしろと言われたらギブアップせざるを得ないドラムを叩く。
つまり自由自在に左からでも右からでも入れる、そういう鍛錬を極めた人が、通常パターンの時に、単に合理的だから左手でハイハットを、右手でスネアを叩いてる、ってことなんだろうね。うーん、ドラムって奥が深いなぁ。
てことで今日は左利きドラマー、っつーか左右自由に操れるすっげードラマーたちのお話でした。興味ない人--がほとんどだろうけど--には面白くもなんともなくてスミマセン。
さて、今週の買い物記録は、まず来月の四国、及び伊豆旅行用に、だいぶ年季が入ってきたトレッキングシューズを買い替えたのと、手の爪の周りがすぐにささくれちゃうので、「ハトムギ保湿ジェル」ってのを買ってみたくらいかな。いずれもAmazonでね。
だいぶ春めいてきて、今日は長袖Tシャツの上に薄いトレーニングウエアを羽織って走ったら、それでも暑いくらいだった。いい季節になってきましたなぁ。
※冒頭の茂木さんの写真は、ドラムメーカーTAMAさんのサイトから、2つめのドラムセットの写真は、Reflect Studioさんのサイトからお借りしました。問題ありましたらご連絡ください。
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