高中正義と言えば、サディスティックミカバンドのギターで、その後ソロになり、「Blue Lagoon」という曲がCMで使われてブレイクし、フュージョン全盛の時代に、日本のソロギタリストとしては恐らく最も売れたミュージシャンだが、今の30代辺りから下の世代だと、誰それ?って感じなんだろうなぁ。
ぼくが高校から大学のころって、聴く音楽の多分半分以上はインストで、必然的にミュージシャン個人やバンドとしての演奏テクニックが、今よりずっと注目された時代だった。Wikipediaで「フュージョン」で検索すると当時憧れたミュージシャンたちの名前がずらっと並んでいて、とても懐かしいのだけど、「日本のミュージシャン」の項ではなく冒頭の「歴史」の項に、日本人で唯一名前が挙がっているのが高中なので、当時の日本のフュージョン界の代表的位置にいたことは間違いないだろう。
その中では高中は、渡辺香津美やカシオペアなんかに比べれば、テクニック的には大したことはないと言われ--いざコピーしてみるとそんなことはないんだけどね。高校生のヘタクソからしてみると--、ラテン系の明るくキャッチーな曲調を特徴としていた。
ぼくが高中を知ったのは何がきっかけだったんだろう?恐らく高校時代の先輩から、聴いてみな、と言われて借りたソロアルバムから入ったのかなぁ?ミカバンドを聴いた方が後だったことは確実なので、多分そうなんだろうなぁ。
その聴いてみな、と言われたアルバムがどれだったかは全く憶えていないのだけど、彼が東芝EMIに移籍する以前、Kitty Recordというレーベルから出した、特にその中でも「Blue Lagoon」が収録された「Jolly Jive」というアルバムより前に出た4枚のアルバム(「SEYCHELLES」「TAKANAKA」「An Insatiable high」「Brasilian Skies」)のどれかだったはずだ。コアな高中ファンの間では、実はこれらのアルバムの評価が大変高い。
当時の実家の自分の部屋では、もちろん誰しもそうだったろうけど、映像を観る環境がなかったから、勉強をしてる時も含めて、必ず何かしら音楽をかけてたよね。基本的に自分の好きな音楽を。そういう意味では、BGM、BGVひっくるめて言うと、今みたいについくだらないバラエティ番組とかをPC画面の横で流しちゃうのに比べれば、自分の五感に届かせるものに対して真摯だったと思う。
その中でも、BGMとして極めて高頻度に流していたのが、この4枚のアルバム、特にデビューアルバム「SEYCHELLES」を中心に最初期のものだったんじゃないかな。この頃の高中は、南国系・ラテン系であることは同じでも、後の音圧があってきらびやかなノリノリサウンドとは一線を画す、音数が少なく、ミドル~スローテンポも多く、ボーカルも一部入ってるんだけど楽器の1つのような使い方であり、ある意味環境音楽に近いような、聴いていてまことに心地よい音だった。
その後時代とともに、なのか、自分がバンドでやる音楽が、(「電気くらげ」というおバカバンドを除いて)歌モノ中心になっていったからなのかわからないけど、何となくインスト物からは遠ざかり、寝る前に心を落ち着けるアルバムも、何度か書いてきてるPaul Simonの「Still Crazy After All These Years」とかに集約されて、高中からは遠ざかっていたのだけども・・・
今回なんでいきなり長々と高中の話なんか書いているかと言うと、先週書いた春旅の企画を毎夜検討していて、宮古島の海やらビーチやら珊瑚礁やらの写真をいくつも眺めていたら--そんなことしながら新ドラマ見てるんで、始まったばかりなのに設定があまり頭に入ってこないのが困りものなのだが--、南の島つながりでこの「SEYCHELLES」が無性に聴きたくなりましてね。
過去にも何度かその衝動に駆られたことがあって、でもこの「SEYCHELLES」とかはカセットテープでしか持ってなかったんだけど、ぼくとしてはあまりないことに、そのテープが見つからなくてね。高中のアナログレコードは何枚か持ってるけど、この最初期の数枚はない。サブスクにも--少なくともGoogle Play Musicには--ない。
ってことで何年かに一度、フラストレーションをためる状況があったのだけど、今回調べてみて初めて、2013年にKitty Record時代のアルバムのリマスター盤が発売されていると言うことに気づき、初期の4枚を一挙に大人買いしました、って話で。大人買いったって、いろんな割引だなんだを使って、合わせても5千円台で買ったんだけどね。
昨日届いて、順番に聴いてみたんだけど、いやぁ、懐かしい。いいわぁ。あの時代の日本のフュージョンのノリと言うか雰囲気がぶわっと迫って来て、涙が出そうになる。どのアルバムもよーく憶えてるけど、あの頃いちばんよく聴いていたのは「SEYCHELLES」と「TAKANAKA」の最初の2枚だな。そういえば「さよなら・・・FUJIさん」という曲は、高校時代にブーランたちと組んでいたバンド「たこ八珍」でやったなぁ。
あと、思えばこの時代のレコードってA・B両面で40分くらいってのが普通だったよね。そしてある意味いい加減と言うか、特に初期ほど、近年のようにタイムコードだったり打ち込みだったりに則ったカッチリした音作りではなく、時々リズムが崩れたりずれたりするのも、少し高音に寄ったイコライジングも、そうだったそうだった、って感じ。
実は以前にも一度思い余って、「Sounds of Summer~The Very Best of 高中正義」というベスト盤を買ったことがあって、この中にも何曲か、懐かしい初期の曲も入ってはいたものの、記憶も曖昧になってるので、あれ?この曲ってどのアルバムに入ってたんだっけ?がわかんないし、少しずつ異なるアルバムごとの雰囲気みたいなのが、やっぱ感じられないんですよね。
このベスト盤も当時しばらくランニング時のお供になっていたから、この初期4枚も当面そうなるだろうな。今日はみぞれ交じりの雨で走れなかったけど、なんか明日から走るのも楽しみになってくる。宮古島に向けて気分を上がらせるのにも一役買ってくれそうだ。
ちなみに、この「SEYCHELLES」が発売された1976年と同じ時期、ミカバンド解散後に、並行して活動していた、高中が高橋幸宏、後藤次利、今井裕と組んだバンド「サディスティックス」の1stアルバム「サディスティックス」、これも大好きでしてね。ぼくの音楽人生でベスト10には必ず入ってくるような。
こっちはアナログレコードも持ちながら、ずいぶん前にCDも買ったんだけど、ゲストボーカル--なんと御大灰田勝彦さんも参加--以外、メンバーが歌ってる曲のボーカルが弱っちいとか、ミカバンドのロックサウンドからすると完全に期待外れだとか、ご批判もいろいろあれど、いろんな仕掛けが満載で楽しくて、ホント好きなのですよ。Amazonで中古が480円で売ってるみたいだけど、送料込みでも買って損はないと思うよ。
てことで、いきなりでしたが、そう言えばこれまで書いたことがなかった、高中正義周りのお話でした。考えてみればあの当時の日本(だけじゃないか)のフュージョン関係の話って、いろいろ聴いてたのにこのブログに書いたことなかったなぁ。追々、ネタが枯渇した時には書いていこうと思います。
今週はこの他、PCのBDドライブの書き込みが異常に遅くなる現象に見舞われ、リカバリに結局結構な手間がかかったのだけど、もう長くなってるので、この話は次週に回しましょう。
コメント