ドイツ旅行4日目の朝、前日の胃痛はすっかり治っていたが、今度はなんだか鼻水が出る。この症状はカミさんも同様で、どうやらアレルギー性のようだ。ぼくは原因は前日に行った「ゲーテハウス」のハウスダストでは?と主張したが、カミさんは多分何かの植物だろうと言う。この症状は帰国まで--ぼくの方は帰国後もしばらく--続いた。
この日は朝8時にホテルまで迎えに来たおなじみのガイドY女史--今回はドライバーにドイツ人の夫君を連れてきていた--の車に乗り、ロマンティック街道からドイツ最南部へ旅をする泊りがけツアーに出発だ。
ロマンティックと聞くと、「恋愛物語的な」という意味を連想するが、そういうことではないというところは一致しているものの、そこから先はWikipediaとY女史の解釈が多少異なる。前者は、19世紀にヨーロッパで起きた、それまでの合理主義・古典主義に対し感受性や主観に重きを置いた「ロマン主義」的な、過去に戻ったかのような感覚と魅力を表現している、という意味だとする。ロマンティック街道公式サイトにもそのように説明されていると。
一方でY女史は、この辺りの街の多くはもともとは、ゲルマン民族大移動が起きる前にローマ帝国の影響下で形成され、それがゲルマン民族であるフランク人に引き継がれて、城郭都市として発展して行ったという、つまりロマンティックの本来の意味である「(古代)ローマの」、翻っては「ローマ人が作った」という意味と解釈すべきだと言う。
最初に向かったのはこれらの街々の中でも最も有名になった街、ローテンブルグだが、まず街の外を囲む城郭の一部が現存しその中を歩けるようになっている、そこを歩いた後、街の中心部へ。いやもうここはホントに、中世のおとぎ話の世界がそのまま残ったような街だ。 中には13,4世紀からそのまま残っているという建物もある(冒頭の写真ね)。カミさんは家々の窓の形がかわいいと気に入っていたが、これらの窓の下に多く飾られている花は、実は癖のある香りの品種で、窓からハエなどが入ってこないようにするためのものなのだそうだ。
街の中をぐるっと歩いてから、中央のマルクト広場のすぐ先にある「ケーテ・ウォルファルト」というクリスマスオーナメントの専門店で買い物。ここは奥まで細長い店内に、置いてないものはないと言うくらいあらゆる種類のクリスマス飾りが売られており、あれもこれもと、結局日本円で2万円以上散財してしまった。それから車でローテンブルグ駅前のショッピングセンターに行って、この中のタイ料理のファーストフード店で昼食を摂り、次の街ディスケンスビュールまで移動する。
ドイツは車窓から見える田園風景が美しい。ブドウ畑など特徴のある作物を作っているところや山間部の酪農業中心の場所以外は、広い起伏に富んだ畑や草原のところどころに、かわいい家や村が点在する。日本と何が違うんだろうとY女史に訊いてみたら、日本はほとんど水田ですからね、と。なるほど、水田って水平を取った場所に作るので、北海道以外の日本では平らな田んぼからたまに、小さな森山が直接立ち上がるような風景になる。
エネルギー先進国だけあって、その田園風景のあちこちに風力発電の風車が見え、家々の屋根にはそれほどは設置されていないが、ところどころに中小規模のソーラーパネルの発電所がある。まぁ石造りの古い家には、後からソーラーパネルなんて設置しにくいんだろうね。屋根にパネルがあるのは、ほとんどが工場とか新しい家だ。この移動でライン川流域からドナウ川流域へと分水界を越える。
ディスケンスビュールは、これも中世の街並みがきれいに残った街だ。だがローテンブルグだけがやたら有名になってしまい、ここはトイレ休憩に寄る街みたいになって、市長が怒りすったもんだした時期があるらしい。ロマンティック街道の街々では、高い屋根の上にコウノトリの巣があるのを多く見かけたが、ここでは巣に実際にコウノトリのつがいがいるのが見えた。
次に向かったのはネルトリンゲンという街で、ここも中世の街並み、環状の壁が残っていて美しいが、ここは太古に隕石が落ちたクレーターのほぼ中心地であることが証明されており、直径24kmにもなるクレーターの環状連丘が、「進撃の巨人」の発想の元になったんだそうだ。
この日は本来はここでツアーは終わりだったが、天気がよかったこともあって、翌日に行く予定だったヴィース教会に先に寄ることになった。ちなみにドイツの天気予報は、Y女史も言っていたが全然当たらないそうで、この日もずっと雨のようなことを言っていたのに、ほぼピーカンの晴天だった。この旅の間、ほとんどの日の予報は雨だったが、実際に降ったのはヴィースバーデンでの結婚式の日の午前中くらい、それもほんの小雨。まぁいい方に外れる分には結構なことなんですけどね。
18世紀に建てられたというヴィース教会は、これまで観た多くのゴシック様式の教会と違い、外装は質素だがロココ様式で造られた内部は、壁画や天井画ほか各種の凝った内装が、びっくりするほど美しい。さすが世界遺産。ここではぼくらが行った直後にクラシックのコンサートが行われるようで、バンドメンバーがバラバラと集まりつつあったが、まだ時間がかかりそうだったので、外の売店でY女史お薦めのさっぱりした揚げパンを食べて車に戻った。
この日の宿はドイツ最南部の国境の街フュッセンの「ルヒティ-ツァイト・フュール・ミンヒ」だ。ここまで来るとアルプスの一部が見え、標高は800mほどだが、かなり山岳リゾート感がある。とは言え他の街もみんなきれいだったので、街の佇まいはそれと大きく違うということはない。ホテルがあるのは、街の中心部から切通しを抜けて10分ほど歩いた場所だったが、夕食は中心部方向のクロアチア料理の「レストラン・クロアティカ」に行き、中心部をグルっと見物して帰って来た。
夜になるとさすがにかなり気温が下がり、タバコを吸いに半袖でテラスに出ると肌寒い。このホテルは今回の旅で唯一朝食がセットだったが、パンもチーズもヨーグルトもかなり美味かった。てか朝食を提供するホテルはあったのだけど、20ユーロとか高いので利用しなかったってことなんだけどね。まぁでも朝食付きで一人一泊13,000円ほどなら高くはないよね。他のホテルの宿代も、日本で言うビジネスホテルに近いクラスを取ったからってのもあるけども、6~9,000円程で、設備もしっかりしており、ユーロ相場の割に割安な感じがしたな。
5日目はY女史が朝8:30に迎えに来て、フュッセンの教会を外から見たり、渓谷美の「レヒ滝」を見て、その先へちょっと進むと、もうここはオーストリアですと。え?そうなんだ。国境にはオーストリアのチロル地方であることを表す「TIROL」と書いた人の背丈くらいの四角い石碑が建っているだけだ。オーストリアに"密入国"して100mほど遊歩道を歩いてから、この旅の最後、ノイシュヴァンシュタイン城に向かう。
直訳すると「新白鳥石城」になるここは、19世紀になってから、過去の貴族全盛期の栄光を取り戻したいルートヴィヒ2世という人が、古きドイツの騎士城を目指して建てたという、歴史的価値はほぼない城で、日本で言うと明治に入ってから、戦国時代の城を模して建てたようなものなのだそうだが、その美しい佇まいと、珍しい白亜の城というので、アナハイムのディズニーランドの城のモデルになったりして、世界中から観光客を集めるようになったようだ。
当時はこの他の城なども含めた建造費のための巨額の負債などで国にだいぶ迷惑をかけたようだが、今となってはドイツ国内ではほぼ唯一の黒字の城だそうで、長い目で見れば地元に貢献している。5分毎に決まった人数を内部に入れ、各言語の解説機で順番に見学コース内を解説してくれるとてもシステマティックな運営をしており、その5分毎の時間を指定した入場券の当日分を買うのに、販売所では長い列ができたりするらしい。
まず城の下の一般車駐車場のようなところに行き、ここからは歩きか、馬車か、バスで登って行くのだが、バスで行かないと城の絶景が見られる橋に連れて行ってくれないってことで、Y女史の勧めに従いこのバスに乗って行く。バスの終点からちょっと歩くとその橋に着くのだが、いやいや、確かにこれは、背景の湖や草原の景色の美しさも含めて、見ないで帰る手はないね。
そこから10分程歩くと城に着くのだが、用意してくれた11:15分のチケットを持って入城までちょっと待ち、入口のゲートバーを押して中に入る。まぁ内部は確かに立派だし、ワーグナーのオペラの物語に沿って造ったと言う造作は凝ってはいるが、そんなに大したこたぁないな。撮影禁止にする意味あるの?歴史的・芸術的価値がよほど高いヴィース教会は撮影自由だったのに。ただ、城のところどころから見える外の風景は素晴らしい。
城を出て、アイスを食べ、馬車に乗って駐車場まで降りる。ここからはまた車に乗り、途中サービスエリアのようなところで軽食を食べながら、フランクフルトまで400kmほどを4時間ちょっとで一気に帰る。前々日に泊まった「インターシティホテル」に戻り、ここでY女史夫妻とはお別れ。お疲れ様でした。
それから娘夫婦がお土産を買いたいと言うので、近所のスーパーやその他で買い物をし、夜8時ごろからまた歩いて出かけて、マイン川を渡る橋の手前にある「バーセラーエック」というドイツ料理レストランで食事をした。ドイツでは飲み物やサラダの他、2人前くらい頼んでみんなで食べれば4人で量的にちょうどいいと言うノウハウが、この日までのツアーでやっと確立した。
6日目はもう帰るだけ。朝8:40ごろにUberで車を呼んで、15分ほどで空港へ。11:20頃出発し台北経由で17日の14時前に成田に戻って来た。帰りは行きの経験を生かした時間配分で、映画を3本観た。まぁ中華航空は基本、日本語のアテレコや字幕はないので、たまたま1本だけ字幕があって行きに観た「スーパーマリオブラザーズ・ムービー」以外は、日本映画しか観れないんだけどね。
てことでドイツ旅行記はこれでおしまい。いやしかし日本は暑い!ドイツはよかったなぁ。長粒種以外の米の飯は食っていないので、日本米がどのくらい手に入れやすいか、美味いかは確認できていないのと、温水洗浄便座がないこと--以前に手動ハンディお尻洗い器を買ってあったのに、持って行くのを忘れた。痛恨だ!--を除けば、ドイツは本当に暮らしやすそうな国でした。帰った日の夕食は、冷しゃぶと冷奴と納豆を食べました。
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