キャッシュレス推進政策として行われていたポイント還元制度--けっこうお世話になりました--が6月いっぱいで終了し、代わって総務省が、キャッシュレス推進とマイナンバーカードの利用促進の一石二鳥を狙って導入するマイナポイント事業が、7月から申込受付を開始した。
これに申し込んでおけば、今年9月から来年3月までの間、キャッシュレス利用額の25%、最大5,000円分の「マイナポイント」が還元される、ということだ。まぁくれるって言うなら申し込んどきましょうか、ってことでやってみたのだが、なんちゅう障壁だらけの制度なの?ってことでね。
そもそもこれは前提条件としてわかってたことなので、これ自体は別に腹は立たないのだけど、まずマイナンバーカードと紐づけると言うことなので、マイナンバーカードのICチップ情報の読み込みが必要となる。
そのためにはNFC(Near Field Communication)対応のスマホか、PCに接続したカードリーダーが必要なのだけど、過去何度か書いたように、日本ではNFCの規格の1つとしてSONYのFelicaってのを各社が搭載して、Suicaとかに使われるようになり、AppleもiPhone7の国内向けモデル以降これを搭載して、Apple Payが使えるようになった。
ところが世界標準に持って行こうとしたこの規格は、中国で一気に普及したQRコード決済によって出鼻をくじかれる。簡単な話で、Felica端末のデータを読むためには店側はリーダー装置の設置が必要になるが、QRコード決済なら、ストアスキャンの場合でも、大手チェーンの小売店のレジには既に大抵ついているバーコードリーダのみあればよく、ユーザースキャンの場合には、機械類を用意する必要はまったくなくて、小規模小売店でも導入に向けて障壁が低いからだ。
結果、いま世界で普及しているモバイル決済は圧倒的にQRコード決済となり、そもそもFelicaを搭載しているスマホが発売されているのはほとんど、日本製か、日本市場をターゲットにしたもののみとなった。今後どう展開するかはわからないが、少なくとも現状では、世界の中で完全にガラパゴス化している。Felica関連業界と日本政府が、「技術が優れていればデファクトは取れる」と、頭でっかちに先行きを見誤った、今世紀に入ってから多い失策の代表的な一例だ。
ぼくのスマホ、台湾ASUS製のZenphone3シリーズも、当然NFCなどは搭載しておらず、我が家ではカミさんが富士通製のスマホを使っているのでこれは対応しているが、いちいちカミさんのスマホを借りるのも面倒なので、マイナンバーカードを読もうとすると、PC接続のカードリーダー購入という選択肢となる。
e-TAXや今回の給付金の申請--我が家は郵送でやっちゃったけど--などにも使えるので、ある程度の種類の商品は販売されており、総務省のページにもこの手の申請に使える認定済みのリーダー機器が掲載されているが、少なくともこれまで、それほど多くは売れなかった模様で、ほとんどのメーカーは、けっこう昔に発売したリーダーをいまだに売っていたりする。
今回買ったのはSONYのPaSoRi RC-S380という非接触(カードを差し込む必要がなく置けばよい)のタイプだが、Amazonでは2012年から売られており、それ以降少なくともSONYは新製品を出していないようだ。ま、でも2,782円で買えるし、5,000円帰ってくるなら元が取れるかということでね。カミさんの分のマイナポイントもあるし、彼女は毎年確定申告をするので、e-TAXでも使うかもしれないし。もっとも本人は、印刷するかしないかでしょ?郵送と手間的に大差ないなら、面倒くさそうだしメリットを感じない--ホントその通り--と言っているが。
古い機械なので、USB接続端子が、今もっとも普及しているMicro USB--これもType-Cに移行しつつあるけど--ではなく、今やほとんど見かけなくなったMini USBというややデカいタイプだ。まぁウチはライブ録画とかで長いこと使っているSONYのビデオカメラHDR-CX370がMini USBなので、今でもケーブルとか常備してるんだけどね。
これを接続し、自動的にインストールは始まらなかったが、SONYのサイトから「NFCポートソフトウェア」をダウンロードしてインストール、マイナンバーカードを置いて「自己診断」をしたら、認識できているようだ。ここまではまぁまぁスムーズだったのだけどね。
次にマイナポイントのサイトの、「マイナポイント予約・申込」のページに行って、<マイナポイントの予約>ボタンを押すと、動作環境のチェックがあって、ブラウザが適合していないという。ChromeじゃなくMicrosoftのedgeでやってもダメ。Microsoftの旧ブラウザ、Internet Explorerのver11じゃないとダメらしい。
ヘルプを見ると、edgeのメニューからIEモードを選択すればedgeでも可能だというのだが、そんなメニューは見当たらない。Microsoftのサイトを見ると、edgeへの移行をスムーズに行うために一時そういうメニューを設けていたが、最新版では無くしたと言う。
ここからが大変だ。edgeでIEモードが使える方法を調べて、edgeのグループポリシーを変更すればできるというのだが、そのためにはポリシーエディター--Windows10 Homeにはバンドルされていないらしい--とか、ポリシーファイルを作成するユーティリティとかが必要らしく、一通りダウンロードしチャレンジしてみたが、どうにもうまくいかない。
さらに調べてみると、どうやらWindows10 Homeの場合には、このグループポリシーの変更は適用できないということのようだ。あとはレジストリを編集する手段しかないが、IEモードから元に戻すにはまたレジストリの編集が必要ってことで、レジストリをいじるのはリスクが高いとは言え、慎重にやれば失敗することはないだろうけども、どうにも行けていない。
最後の手段でIE11がまだダウンロードできるようだったので、これをダウンロード、インストールして、「edgeに上げろ」としつこく出るメッセージを後目にやってみたら、何とかこのチェックを通過。
それから今度はe-TAXとかと共通で、このPCでマイナンバーカードを正しく認識する目的らしい「マイキーID作成・登録準備ソフト」をインストールする。給付金の申請で、マイナンバーカードのPWDがわからなくて問い合わせが殺到、みたいなニュースがあったが、そこは我が家は抜かりなく、というかこの手のものはカミさんと共通で忘れない数字--結婚記念日--を使っているので、ってだけなんだけど、すんなり認識される。
そして還元対象のキャッシュレスサービスを1つだけ選べるってことなので、ぼくの場合はPayPayでの買い物を選び、PayPayのスマホアプリから「決済サービスID」と「セキュリティコード」を調べてそれを登録。ふぅ。やっと完了だ。IE11問題ですったもんだした影響で、所要時間は2時間強。
IE11しか使えないってバカじゃないの?って批判には、「最も多くの人が使っていると考えられるブラウザを」とかって何年前の話だよ、って回答を返していた総務省も、さすがにこれはヤバいと認識し、新しいブラウザへの対応を急いでいるようだけど、もうとにかく遅いのよ。その対応が。
IEで使えたActiveXという技術を使ってカードの読み取りを行うように設計してしまったというところが根本原因のようで、それ自体は優れた技術と言われていたので同情の余地はないではないが、edgeがwin10にバンドルされるようになってからもう1年以上経つし、そもそもトップシェアのブラウザは4年も前からChromeだっつーの。
ここまで来るともはや、キャッシュレス化の推進なんて実はしたくないんじゃないかと勘繰ってしまう。ものすごい導入障壁だ。そもそもマイナンバーカードの手配とかパスワード忘れ、リーダーの購入とか、ぼくの場合は割とすんなり通れた障壁も考えると、何人の人が申し込みまでたどり着けるんだろうか?Felica対応スマホでマイナンバーカードが読めればもっと楽にできるのか?
マイナポイントって、予算に限りがあるから、早めに申し込んどかないと枠が埋まっちゃうような話だったんで急いでみたけど、これだったら慌てる必要はなかったかな。
今回のコロナ禍で、日本の行政のデジタル化がいかに遅れているかが白日の下に晒されてしまったわけだけど、なんかそれを象徴するような一幕だ。この状態でマイナポイントの申し込みを開始するセンスもすごい。根本的にやり方変えないとヤバいよねこの国は。20年も前から「e-japan戦略」とか言ってたのにね。競争がない役人たちは、自分の仕事を変えてしまうかもしれないデジタル化へのモチベーションが、そもそも低いからね。
ちなみにカミさんの分も、今よく使っているクレジットカード--東武カードとか価格comのREXカードとか--で申し込みしてみようとしたら、それらのカードは現状マイナポイントに対応していないってことでNG。カミさんにもPayPayが使えるように設定してやろうかな。Yahoo Japanカード作らないと還元率下がるし、それも含めたサポートがめんどくさいんで今までやってなかったんだけどね。
てことで、この苦労を時給に換算したら、リーダー購入代も含めると、もはや5,000円分ポイント還元のメリットは使い果たしてると思われる、マイナポイント申し込みのすったもんだでありました。既に長くなってるので2つ目に書こうと思ってたネタはまたいずれってことで。ま、こっちは大したネタではないんですが。
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