わが埼玉県で、国内初となる「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が10月から施行された。要はエスカレーター内では歩かずに立ち止まりなさい、ってことで、罰則規定はないそうだ。先週今週と、埼玉の大野知事がキャンペーンとかでTVにも露出して、安全な県民生活への貢献を訴えているが、う~ん、なんかちょっと芯を外してない?と感じてしまう。
ぼく自身もエスカレーターは右側--関西では左側だそうだが、これもフシギだよね--を歩いて登ってしまう方で、まぁ確かに肩から背負ったバッグがぶつかってしまったりとか、危険がないとは言わないし、通常の1階分の長さのエスカレーターで、歩いて登ったところでそんなに時間は違わないだろ、ってのもわかるんだけど、知事がそんなドヤ顔するくらい、この条例が安全性に貢献するのか?
我が家の最寄りのエスカレーターは朝霞駅の南口のものだが、施行初日となった昨日はリモートワークだったし台風だったのでまだ確かめていないけど、この条例でエスカレーター内の歩行はスパッとなくなり、2人幅のエスカレーターでも右側も普通に人が立ってるように、ガラッと変わるのだろうか?なにせ多くの人の通勤先の東京都内では、そんな条例はないからなぁ。埼玉県内だけそうなるとは、あまり思えないのだけど・・・
エスカレーターと言えば、東日本大震災の後、停電などで多くのエスカレーターが停まってしまった時に、ぼくは総務部長だったのだけど、エスカレーターを階段代わりにすることは、建築基準法かなんかに違反すると聞いてびっくりしたことがある。階段として認められる段差より高いので、ということのようだが、物理的に無理なく登れてしまう以上、ダメだと言ったところで止められるものではない。
そんなに危険だって言うなら、機械の構造が変わってしまうだろうから難しいのはわかるけど、簡単には登れないような段差にしたリ、そうでなくても登りにくくするように工夫すればいいのにね。投資をしてそういう技術開発をしようという企業が出てこないところをみると、それをやったところで、世間からはあまり安全貢献企業と言う評価を受けないだろうと思われてるってことで、つまりそれほど喫緊の課題だとは認識されてないってことだよね。
そんなことよりよっぽど喫緊なのは、歩きスマホの問題だ。2週間ほど前に「ミヤネ屋」で特集していたのをたまたま観たのだけど、研究によると歩きスマホをしている時の視界は、通常の20分の1に狭まってしまうと。さらに人間の脳は同時に2つのことに集中することはできず、「見えている」ことと「認識している」ことは別なので、視界の狭まり以上に危険度は増すと言う。
また、先頭に歩きスマホをしている人がいる集団がそうでない集団とすれ違うと、そうでない方の集団も含めて全体のスピードが落ちると言う実験により、日本人の研究者がイグノーベル賞を獲得した。人間は自分の行動を決める時に、他人の行動を予測して対応するが、相手側の先頭が歩きスマホをしていると、すれ違う側の先頭がその予測に迷って、集団全体にも影響が出るってことらしい(冒頭の写真から実験映像にリンクしてます)。
7月には我が家からはそう遠くない、東上線の東武練馬駅の踏切--イオンシネマ板橋に行くときにぼくらもよく渡る--で、歩きスマホをしながら歩いていて、降りてきた遮断機に停まった歩行者が、そこが踏切を渡った先の踏切内であることに気づかず、そのまま電車にはねられ死亡したと推定される事故が起こった。その遮断機の反対側で待っていた人もみんなスマホを観ていて、誰も注意しなかった--ホントかよ?--と言う。
カミさんが娘に、あんたもそんなことにならないように気をつけなさい、と言ったら、そんなことある?さすがにあり得ないでしょ、と言っていたが、実際にそんなことも起きてしまっているし、2015年からの5年間で歩きスマホが原因となった救急搬送が東京都で177件あり、そのうち7割が操作しているか画面を見ている状況だった、というデータもあるので、こちらの方がリスクは格段に高いと言えるだろう。
ぼくはパルコビルのオフィスに行くためセンター街を歩く機会が多いのだけど、基本的に他人に自分の歩きたいスピードを左右されるのが嫌いなので、歩きスマホしているヤツが前を歩いていたら、必ず躱して追い抜くようにしている。時々なかなか抜けない時など、歩きスマホしているヤツは蹴っ飛ばしていいって法律作れよ、とか思うこともあるけど、実際に歩きスマホをしている人を専門に狙って、ぶつかって自分のスマホが壊れたと主張し、修理代を要求する「スマホ当たり屋」も増えているらしい。
歩きスマホで何をしているかで言うと、SNSなどでタイムリーに返したいとか、ニュースサイトなんかを見ているってのが多く、そんなもん、スマホがなかった時代のことを考えれば--ってのは年寄りの発想かもしれないけど--、歩きながらじゃなくてもできるだろ、と思ってしまう。スマホを見るのが癖になっているという回答もあったようだ。
まぁとは言えぼくも、唯一地図アプリを使う時は、見る時はなるべく道の脇に停まるように心がけてはいるものの、歩きスマホに近い状態になってしまうことはある。同情できるケースがあるとすると、地図アプリを使うのに、うちのカミさんのように俯瞰で自分の場所を把握する能力に乏しく、地図と道筋を示されても、この青い線が今自分の立っている場所のどっち方向に行っているのかわからない、なので歩き出してみないと地図アプリも使えない、と言う場合だ。
この歩きスマホについては、これも罰則規定はないものの、昨年7月に全国に先駆けて、神奈川の大和市が、「歩きスマホ禁止条例」を施行した。これによって歩きスマホをしている人の割合が12%から7%に下がったそうで、大和市に続いて足立区、荒川区、大坂の池田市などが同様の条例を制定し、米ハワイ州では道路横断の際に歩きスマホをしていたら、1回約1,600円の罰金と言う制度を施行したとのことだ。エスカレーター歩行なんかよりは、こっちの方がよほど時宜を得ているように思う。
近年作られる二宮金次郎像はみな、座って読書をするようになっているという。そうなると勤勉と勤労を時間を惜しんで行う、という趣旨からはズレてしまっていると思うが、この時代ではやむを得ないのだろう。大野知事にも、そういう時代の優先順位に、より敏感になって欲しいものだ。
一方でこのブログでも何度か書いているネット上の誹謗中傷に関連して、こちらも2週間ほど前に、法務大臣が法制審議会に、侮辱罪の厳罰化を諮問した。現行の法定刑は「拘留30日未満か科料1万円未満」だが、厳罰化案では「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」とし、公訴時効も1年から3年に延長するとのことだ。
また匿名投稿者の特定に必要な情報開示請求のプロセスも、来秋にも施行される改正法で簡素化される見通しだとのこと。上記はまだ諮問なので、これから議論を進めるのだが、そのポイントは、何を持って誹謗中傷と判断するかの基準になるだろう、ということだそうだ。
ちなみに名誉棄損罪については、以前から侮辱罪よりは罰則が厳しいのだが、こちらの場合客観的な証拠に基づき事実を確認できるものに適用されるということで、事実無根のデマや公開されたくなかった情報を明かした場合に限られる。侮辱罪が適用されるのは、「バカ」とか「生きる価値がない」とか、侮辱する側の主観によるものになるとのことで、貶められた側が事実との対比のエビデンスを提示する必要はない。
これが施行されて、ネット上の匿名の卑怯者たちが少しでも鳴りを潜めればよいとは思うが、前にも書いたけどこういうことをする人は一種の精神疾患なので、たぶん陰に籠って裏サイトとかでやられ続けるんだろうと思うけどね。まぁ表に出てこなくなるだけでも良しとするのかな。
てことで今日は最近続いたいくつかの規制強化絡みのお話でした。この手のものは緊急度と重要度に応じてきちっと優先順位をつけ、国も地方自治体もできるだけ早く対応して欲しいよね。法制化には慎重な検討審議が必要なのはわかるけど、一部の参加者のスケジュールが合わないとか、定例会に合わせて審議するとか、そういう運営上の都合とかで時間がかかるのだけは勘弁してほしい。
なお、上記の「ミヤネ屋」では、イヤフォンだけをして大声で電話している人の話題も出ていた。周りの音が聞こえていないのも危ないというのだが、まぁこれも確かにリスクはあるとは言え、それだったらウォークマンが普及した時期以降に明らかに事故が増えてないと理屈が合わないから、「歩きスマホ」とはちょっと違うと思う。
そのつながりで強引に書くけど、ぼくは週末ランニングの時いつもワイヤレスイヤフォンで音楽を聴いているが、先週の日曜、歩道のアスファルトが数センチ盛り上がっているのに気づかず、左足を引っ掛けて転んで、膝や肘や両方の手のひらに結構な負傷を負ってしまった。ランニングを初めて8年ちょっとで2度目のことだ。スマホの保護ガラスにもひびが入った。本体が無事でよかった~。
陽が短くなってきて、だいぶ暗かったってのはあるんだけど、あの盛り上がりは気づかんぜ。近くに街路樹とかが植わっているわけでもない場所だ。今日確認に行ってみたら、歩道を横切る形で何かの管を埋め直したらしく、横一線に再舗装してあった。歳とって足が上がりにくくなってるってのは認めるけど、これは周りの音が聞こえていなかったこととは関係ないよね。これからは気づきやすいようになるべく歩道でも真ん中を走るようにするけども、行政もこういうのもっと気をつけてくれよ。「ここ危険!直してよ~」とかって書いたミニ立て看板でも作って立てておこうかなぁ。
今週は風呂上がりのたびに数ヵ所に薬塗ったり絆創膏貼ったりで、結構時間を取られました。でももうほとんど治って来たのでご心配なく。
※冒頭の写真は、時事通信社のYoutubeチャンネルからお借りしました。問題ありましたらご連絡下さい。
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